オタンコナッシー(1)
今日もアホのような快晴である。そんな青空の下、コチラもアホの優子が肩を震わせ早足で歩いていた。そこは広い一本道。その真ん中を優子が一人で、脇目もふらず、ひたすら歩いているのだ。
その広い一本道はオタンコナッシーという町の中央を真っ直ぐに貫いていた。
周りにはいろいろなお店が並び、人々が賑やかに行きかっている。
女子高生の優子好みの可愛いお店も並んでいる。色とりどりのチョコレートが並んだお店。かわいいクマのぬいぐるみを並べた店など色々だ。
いつもなら、キャァ! 何コレ! かわいい! とか言いながら、いろいろな店をのぞき見し、気づいたら夜だってことも。
しかし、今日の優子は違っていた。
むすっとした顔でひたすら早足で歩いているのである。
その優子の影をヤドンが、ガシャガシャとプレートメイルを鳴らしながら追いかける。
その音が気になったのか、人々がヤドンを見つめると、急に動かなくなっていく。
それもそのはず、勇者のプレートメイルを身にまとった男の下半身は、純白のブリーフ一丁で広場を闊歩しているのである。
変態勇者!?
人々はその勇者らしき男の姿を沈黙をもって出迎えた。
「優子! ちょっと待てよ!」
その声を無視するかのように優子の足が早まった。
「聞こえているのか! 優子! ちょっと待てって!」
ヤドンの手が優子の肩を掴んだ。
優子は咄嗟にその手を振り払う。
「はなしてよ!」
「さっき、俺たちはパーティだって言ったよな」
「それは、冒険での話! 街中では声かけないで」
「どうしてだよ?」
「あんたと一緒にいると、私も変態にみられるのよ!」
「変態? いいではないか」
「いやよ! 私は女子高生! キラキラの女子高生よ!」
「なんだ、お前、不変態かよ……俺なんか見てみろドラゴンから人間への不完全変態だぜ」
「どこが不完全変態よ! 完全変態じゃない!」
「そうかぁ? おれって不完全変態だと思ってたんだけどな。だってさ、臓器とか特に変わってないし……見た目もそんなに変わってないだろ?」
「アンタね……自分の姿を鏡で見てからモノ言いなさいよ! そのどこが変わってないのよ!」
「え⁉ ドラゴンと人間ってそんなに見た目変わらないだろ? だって、目だって二つだし、口だって一つだしさ」
「目とか口の話じゃないわよ! パンツよ! パンツ! パンツ一丁で外、出歩いていたら変態でしょうが! どこからどう見ても完全変態よ!」
「いまいちよく分からないなぁ……なぁ、ところで、今日のブリーフを寄こせよ」
「何言っているのよ! なんでこんな道の真ん中で! しかも、みんなが見ている前でパンツをあげなきゃいけないのよ!」
「約束だろ……お前、約束破るのかよ、ならスマホ寄こせ」
「何言っているのよ、約束は報酬の分け方でしょ!」
「馬鹿だな! ブリーフの約束はパーティを組む上での前提条件だ。それが守られなければ、報酬の約束も守られない。したがって前提条件を破るということは、報酬の約束を破るという事にもなる! ドゥー・ユー・アンダスタァン?」
「あんた何人よ? 本当に!……いいわよ分かったわよ。渡せばいいんでしょ! 渡せば!」
「分かればいいんだ」
ヤドンは嬉しそうに何度もうなづく。
優子は肩にかけるスクールバックに手を突っ込むと、おもむろに一枚のブリーフを取り出した。
そして、ヤドンに渡した。本当に適当にポイって。
ヤドンは嬉しそうに受け取る。
次の瞬間、感極まったヤドンは叫んだ
「ブリーーーーーーフ!!」




