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エピローグ

 僕たちは順調に、僕だけは順調に旅路を重ねていった。


「ひぅぅ……ついに二十六本目……これも失敗ですぅ……!」


「いやしかし、最後の一本までもつれ込むとは」


「……お嬢様、お気を確かに。つまり、次の聖剣こそは間違いなくお嬢様のものだということです。希望を捨てないでください」


 北大陸の聖剣を一本を除いてぜんぶ抜いて、南大陸を順々に巡り、ぜんぶ抜いた。

 僕の封印は、ほとんど解けかかっている。残る一本の封印は、僕の首だけだ。ちなみに、呪いが解除されると共に腕の刺青も消えてしまったため、実は夜な夜な自分で書いていたりする僕だ。今のところ、看過されている様子はない。


「では、次に行きましょう。最後は、ブリスペル共和国のクロア島にある聖剣です」


「えっ! またブリスペル共和国に戻るんですか!? 何故!?」


「かなり難易度が高いので、後回しにしていたんですよ。海上ダンジョンですから」


「ふむ……難易度が高いか。どういうダンジョンなのだ?」


「まず、ダンジョンそのものが海上にあります。そのため、本来なら生息しない海中の魔物が多く出現するんですよ。それなのに、船でしかダンジョンに入ることができません」


 二十六本目の聖剣を抜いて、砂になった帰り道。

 現在、僕たちは南大陸――ユクト皇国の東端にいる。この先にある港から、一応ブリスペル共和国に向けて船が出ているのだ。

 そして、僕たちはそれに乗って、これからブリスペル共和国に戻る。


「ほへー。船でダンジョンに入るけど、海中に魔物……あれ? 船、転覆させられません?」


「珍しく鋭いですね、チェリルさん」


「えへへ! 褒められました!」


 別に褒めていないけれど、嬉しそうな様子のチェリル。

 だが、チェリルの言うことがまさしく正鵠を射ているのだ。船でダンジョンに入るのはいいが、その船を海中の魔物によって転覆させられるため、ダンジョンの入り口にすら辿り着けないという難易度の高い場所なのである。

 だが、僕は既に首以外の全ての封印が解除されている状態であるため、旅を始めた当初と比べると、魔力量が桁違いに上がっている。そのため、船全体に強力な結界を張ることはできるだろう。

 そして幸い、二人は魔術については疎く、不可視の魔術などの場合は発動していることにすら気付かないため、結界で船を守りながらダンジョンの入り口に向かい、到着したところで「運良く襲われませんでしたね」を貫く予定である。


「船は近くの漁船を借りるとして……水中の警戒は、ひとまず僕が担当します。もしも魔物が船に上がってきたら、マリカさんの方で対処してください」


「貴様が私に命令するな」


「そろそろ慣れてくれませんか?」


 割と長い付き合いになるのに。

 ブリスペル共和国で、チェリルが初めて聖剣を抜いたあの日から、もう二年が経っている。チェリルは相変わらず発育の悪い体型をしているし、僕は魔王だからそもそも年をとらないし、マリカは二年前から現在まで年齢不詳のままである。そのため、見る人が見れば「あいつら年取ってなくね?」と思われる可能性が高い。

 まぁ、そもそもそう思われる相手もいないけど。


「まぁ、とにかく次の聖剣で終わりです。次の聖剣を抜いた後は、好きにしてください。僕は、聖剣がぜんぶ抜けたことに満足して去ります」


「では、お嬢様。聖剣を抜いた暁にはどうされますか?」


「はい! とりあえずベルグラードを捨てます!」


「俺様やっぱり捨てられんの!?」


 最後の聖剣――それを抜いたら、僕の封印は全て解除される。


 本来僕が持ち得る権能、その全てを再び手に入れることができるのだ。まぁ、戻ったからといって何をするつもりでもないけれど。


 ただ、本物の聖剣を持っている勇者と、正体を隠した魔王が、よくもこれだけ一緒に旅をしてきたものだと思う。

 チェリルは今の今まで、僕が魔王だということに気付いていない。まぁ僕も尻尾を出さなかったし、マリカには何度か猜疑的な視線で見られたけれど、今のところ尻尾は掴まれていないはずだ。

 僕の魔力にも、多分気付いていないし。


「その後は、魔王の討伐をするんですか?」


「魔王の討伐……うーん。これだけ全国を巡って、魔王さんどこにもいませんでしたよね?」


「ですね」


「じゃあ、もういないんじゃないですか? いや、でもいなかったらいなかったで、わたしが勇者になる意味がない!?」


「お嬢様が勇者と認められた暁には、この侍従が全力をもって探しますのでご安心ください」


「わぁい!」


 相変わらずのずれた主従関係に、僕は軽く笑みを浮かべる。

 鬱陶しいとばかり思っていた二人ではあるけれど、さすがに二年も共にいれば、なんとなく情も沸いてくるというものだ。

 だけれど、ようやく最後の一本。

 この最後の一本さえ抜いてくれれば、僕は自由の身になれる。


「さ、港に着きました。ブリスペル行きの船に乗りましょうか」


「はーい!」


 これからチェリルは、最後の聖剣を抜きに行く。

 魔王が勇者を導き、魔王の封印を全て解除させる――そんな奇妙な旅路は、これで終わるのだ。

 だから、最後まで油断せず。


 勇者の聖剣、ぜんぶ抜く。

これにて完結。

短い間でしたが、ありがとうございました。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 魔王としての力は、いっさい使うことなく、他人(チェルリ)を利用し、知略で絡めて、ふりかかる厄介事を回避するなど知的さを見せる魔王さんでした。 [気になる点] 余りにも、知略ですましてしまう…
[一言] ………え、オチ無し? 封印解いて貰った事に感謝しながら高笑いあげてるところに瞬殺されるのかと思ったがwww
[良い点] エピローグ  僕たちは順調に、僕だけは順調に旅路を重ねていった。 「ひぅぅ……ついに二十六本目……これも失敗ですぅ……!」 「いやしかし、最後の一本までもつれ込むとは」 …
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