あぁ…我が本社…
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気がつくと床に転がっていた。後から頰がヒリヒリと熱をもっていることに気づく。
仕事なめとったらあかんぞ。お前は明日人事と俺と三者面談や。
主任はそう吐き捨てると床に散乱した缶を蹴った。
部屋くらい片付けろや。私生活が狂ってるやつが仕事ができるわけないやろ。
私はただ、黙ってそれを聞いていた。
主任はこれは迷惑料やと言い、積んであったビール缶を一つかっぱらってドアを踏み越えて帰っていった。
後には壊れかけた社畜と壊されたドアだけが残った。
さて、まずは…そばにあったビール缶を手に取り、シュカッ。飲んで落ち着く。どうしたものか。地区原の頭の中にあるのは明日会社に行きたくないという強い意志だった。ビールの泡が弾ける。浮かんでは弾ける。長い夜になりそうだ。その日の酒は苦かった。
翌日。起きると窓の外から陽が差し込んでいた。まさか…と思いカーテンを開けると、陽が高くに君臨していた。呆然とした顔でカーテンを閉め、朝6時に起きることができなかった原因を考える。そうだ、先日、早朝から鳴る非常識な目覚ましにブチ切れ窓に向け投じたのだ。その証拠と言ってはなんだが、窓が割れている。この家の防犯レベルは最低レベルに転落していたが、同時に自宅警備員(物理的にも)なる転職先が見つかってしまったことは幸運だろう。使命感を感じてしまう。もはやこれは運命ではないかー
プシュッ。
トクトクトクトク…黄金の液体を金魚鉢に注ぎ、自らの就職を祝う。1か月で転職先が見つかるなんて本当についている。もう二度とリクルートスーツを着て、偽りの志望動機を書きたくなかったのだ。いや〜たまらない。今宵の酒盛りは最高じゃ…!幸せな気分に浸りかけたその時…!
ビー!ビー!
車のクラクションが鳴った。ドアの形にポッカリと空いた壁を見ると黒塗りの高級車がハザードを出して止まっている。そこには見慣れたヤク…主任が立っていた。
おぅおぅ地区原ァ!ほんまにええ度胸しとんなぁ⁉︎クビにするぞ⁉︎おい!
…⁉︎後で冗談のつもりだったと会見で話してしまうフラグだ…。ヨシ◯トは社長が言ったがこいつはただの主任だ。どうしても言葉の重みが感じられず滑稽に見えてしまう。
…!…!(笑)
気がつくと地面に転がっていた。そのまま、主任に担がれ、黒塗りの高級車の後部座席に放り込まれた。主任は冷たい口調で吐き捨てた。
埒があかんで本社連れてくわ。お前みたいなのを採用した人事はほんま揃いも揃って節穴やわ。
ー新宿ー
コンクリートジャングルの中、我が就職先である総合スーパーマルクスヴァローレ本社ビル(18階建て)が異彩のオーラを放ち、建っていた。真っ赤なロゴマークに黄色い星が50個描かれている。確かビジョンステートでは、マルクスの精神を云々と謳っていたっけ。ここが私の就職先なのである。窓の外をぼんやり眺めていると車は地下へ向かっているらしく、徐々に景色は暗黒に塗りつぶされてゆく。
そして、完全に光は車の照らすライトのみとなった…
更新遅れてすみませんでした。楽しんでいただけたら幸いです。