29話:異世界ツアー二泊三日 一日目と二日目
屋台を中心に見回りながら食べながら、買い物もしたら宿屋に戻ってくることにした。
「はー……、歩いた」
今すぐ畳の上でゴロゴロしたい。大の字で寝転がりたい。
ソファに沈む勢いで座るわたしの前で、お兄さんは仕事を片付けている。真面目かと突っ込みたくなったけど、ここには仕事で来ているんだもんね。
「そういえば、この宿の部屋がこの世界の普通ですか?」
「この部屋が、普通とは?」
区切りの良さそうなところで声を掛けたら、怪訝な顔を向けられてしまった。……ちょっと、言葉が足りなかったか。
「ええと、靴のまま外も中も関係なく移動するというか、板張りの部屋が当たり前なのかということです」
さすがに畳のある部屋は無理だろうと思って、新しく記入し直したアンケートにも追加で書かなかったんだよね。それでもわたしの家を思い出したのか、お兄さんが一つ頷いた。
「そうですね、基本的に家の中でも靴を脱ぐことはありません。すべて板張りで、畳はありません。しかし与えられた部屋の中は自由ですからね、スリッパで過ごすことは可能でしょう」
「わかりました」
これは言ってみただけだから、やっぱり畳マットを買わないといけないか。買い物リストに付け加えようとノートを開いたわたしに、お兄さんが首を傾げる。
「畳も譲れないことでしたか?」
「あれば助かりましたけど。今は持ち運べる、こういう小さいマットタイプの畳もあるんですよ。そっちを敷けばいいだけですから問題ありません」
「そうですか?……わかりました」
これは代替え品で十分だし、わたしが妥協できる部分だからお兄さんが気にすることではないんだよ。それでも何だか気にしているから、一番大切なことを伝えたほうがいいかも。
「今のところの食事は全部、屋台でしたけど。わたしが暮らすことになる場所と、味は変わりませんか?」
そう、食。それが最優先事項で、わたしの絶対に譲れないことだ。
米や調味料はあっちから持ち込めばいいだけだから、これも問題ないとしても。普通に売られている総菜関係の味がアウトだと、絶対にここには住めない。
とても真剣な顔で尋ねたからか、お兄さんがシャキッと背筋を伸ばしていく。
「先ほどの屋台は季節ごとに移動するお店ですが、味はこの世界の定番です。そこはご安心ください」
「それなら大丈夫そうです」
食が違うだけで死ぬ確率が上がってしまうからね。
そもそも食べ物が合わないと、調理している匂いもアウトだったりする。その点は最初からクリアしていることも伝えたら、ようやくホッとしてくれた。
……すみません、面倒で。
そんな話をしていたら、ドアがノックされてお風呂が沸いたと言われた。
おお、お風呂か。これも大事だよね。
ちょっと腰を浮かせてしまったからか、先にどうぞと促された。
「先に行きますか?部屋の鍵は一つしかありませんので、同時に行くと待たないといけませんからね」
「わかりました。お先にいただきます」
お兄さんはまだ片付ける仕事があるみたいで、終わらせてから行きたいと話していく。それなら先に行ってくるとしようか。
着替えを分けておいた袋ごとリュックから出したら、洗面道具も持って行かないとね。フフフ、洗面器もバッチリ持ってきてあるのだ。
「用意がいいですね」
「一個あると、便利なんですよ」
持ち運ぶ時には洗面道具を中に入れればコンパクトだし、ちょっとした洗濯にも使えるから、洗面器は旅の必須アイテムなのだ。
「では私は中にいますので、戻ったら声を掛けてください」
「わかりました」
出入り口とは反対側の廊下を進んで階段を下りたら、同じようにふんふんと歌いながら歩いている人を見掛けた。
やっぱりお風呂は嬉しいよね、歌うよね。うんうん。
ん?男の人もいるな。もしかして、共同浴場なの?
「あ、違った」
途中で男女に分かれて、女性用の廊下へ進んでいったら、突き当たりには一人用のドアが現れた。
先に行く人を見ていたら、どうやら空いているところに入って鍵を閉める、個室として使うらしい。
男女混合じゃなくて助かったけど、数が決まっているから長居はできないのか。何人泊まっているかはわからないけど、絶対に足りない気がする。
「わざわざノックして伝えてくれたってことは、お店側で人数の調整をしているのかな?」
それでもすぐに入らなかったら、やっぱり混みそうだよね。声が掛けられた順に素早く入るとか、暗黙の了解になっているのかな。
「……お邪魔します」
そうっと扉を開いたら、手前には物が置ける板が壁についていて、奥のシャワーがある場所とは、仕切り板で簡単に区切られていた。
この手前で着替えて、奥に行けばいいのかな?
内側から鍵を掛けたら、手早く着替えてシャワーがある場所へと移動してみる。
「ええと、お湯ってこっち?押しっぱなし?」
赤と青で色分けされてるわけでも、『水・お湯』と書いてあるわけでもない。……しまった。使い方を聞いておけば良かったかも。
銭湯で見るような一回だけ押すボタンが二つあって、恐る恐る左を押してみたらお湯が出てきた。
「良かった、正解。あったかーい……」
ザアアァァァ……
「……」
よし、ちょっと待とう。
「止まらない?何で?も、もう一回押せばいいの?」
一定の量が出たら止まるかと思ったら、ずっと流れ続けるお湯に焦ってくる。
慌ててもう一度ボタンを押したら、何事もなかったように止まってくれた。……セーフ。
「でも、これで使い方はわかったね」
屋台の煙に燻された、全身を清めることにしよう。
「あー、さっぱりした」
パジャマはさすがにダメだろうと思って、高校の紺色ジャージを引っ張り出してきましたよ。
普段は着ないけど、何だか修学旅行に来ている気分になってくるから不思議だ。
足元はかかとのあるルームシューズに履き替えて、スニーカーをプラプラ持ってのんびり部屋に戻って行く。
携帯スリッパにしようと思ったけど、いざという時に走れないと困るからね。
階段を上がって部屋に着いたら、外からノックをして開けてもらおうっと。
「沢村です、上がりました」
「いま開けます」
ガチャリと鍵の音がしたら、お兄さんが顔を出した。ん?何で固まっている?
「……ああ、ええと。学生の頃のものですか?」
「そうです。中学はあずき色だったので、高校のものにしました」
ジャージの良いところは乾きやすくて動きやすくて、汚しても平気なところだ。どんな宿かわからなかったからと言ったら、ようやく納得してくれた。
もしかして、パジャマの方が良かったんだろうか。
ジャージをつまんだわたしに、そういう意味ではないと首を振っていく。
「寝間着とわかる格好のほうが問題ですので、助かりました」
一応、宿泊する人と食事のみの人とは入る場所が違う宿屋なんだけど。それでも男女混合の宿なら、何かあってもおかしくないか。
「わたしを襲おうと考える、奇特な人はいませんよ」
ないない、あり得ない。
だってお付き合いをしたこともなければ、何にもないままこの歳まできちゃったわたしですよ。後輩ちゃんのように、別部署の子にまで惚れられる色気とか女子力とかは皆無ですから。
ないないと手を振ったわたしだけど、ちょっと待てと立ち止まった。
「あの、わたしから襲うことはありませんので!」
「は?」
同じ部屋に荷物を置いたり、そもそも二段ベッドの時点で言うべきだった。
今日っていうか明日も、お兄さんと同じ部屋で寝泊まりすることは防犯と予算の都合で了承したことを思い出した。
わたしが襲われる心配はなくとも、お兄さんは気にしていたかもしれない。
一生懸命に手を振って、絶対に襲うことはないと断言する。
「知っての通り、わたしの食にかける情熱は人並み以上なんです。つまり三大欲求の一つ、性欲分も食欲にいっていますので安心してください!」
「はあ……」
あんまり必死に言うと、怪しさしかないかもしれないけれども。気にしていると困るし、それで眠れないとかもっと困る。
拳を握って言い切ったわたしに、お兄さんはポカンとしてしまった。……それもそうか。
「すみません。変なことを言いました」
「いえ」
「ええと、とにかくお風呂へどうぞ」
「はい、行ってきます」
ああ、これも最初に伝えておくことだったね。そしてやっぱり、最初の土地には旅行のしおりが必須だ。
そもそも屋台のおじさんに子供サイズを勧められたわたしなんだから、そういう意味で襲う人はいないっていうのに。
「ん?逆に子供だと思われて、攫われたりするのかな?」
それは困る、非常に。
お風呂に行く途中は問題なくても、それはあくまで建物の中だからだ。これから一人、外に買い物とか行けるんだろうか。
「うーん……、上。やっぱり下?」
二段ベッドの上か下か、これも決めていなかった。
そういうわけで、ソファに座ってのんびりしているわたし。
「上のほうが安心かな?でも下だと、いざという時に逃げやすいよね」
わたしがソファに荷物を置いたままだからなのか、お兄さんもテーブルに置いている。
……何だろう。お互い、無防備すぎない?大丈夫?ここ、異世界なんですけど。
人のことは言えないけどね。寛ぎすぎだろう、わたし。
「夕飯も屋台で食べたから、歯はさっき磨いてきたし。明日の予定を確認したら、早めに寝ることになるかな?」
小さくてもいいから、コンロがある宿だと良かったな。火の加減とか食材とか、慣れるには調理するのが一番だもんね。
そんな風に考えていたら、お兄さんも戻ってきたらしい。……って、お兄さんもジャージですか。
「似てますね」
「そうなんです」
違う学校出身のはずなのに、紺色ジャージが同じすぎる。
辛うじて、肩にラインが入っているところが違うかな?うん、微妙。
「もう寝ますか?それなら上をどうぞ。下では危険でしょう」
リュックに荷物が仕舞われていることがわかったのか、ベッドを指差してお先にどうぞと促していった。
もう少し仕事をするので、灯りが気にならない上がいいだろうとも言ってくる。そこまで言われたら、上を使ったほうがいいのか。うーん、気を使われているね。
それなら明日の予定を確認してさっさと寝よう、そうしよう。
「明日の宿には、キッチンかコンロはありますか?」
「ありますよ。自炊ができる宿です」
「わかりました。今日はありがとうございました、明日もよろしくお願いします。おやすみなさい」
一気にまくしたてたらぺこりとお辞儀をして、すぐに上の段へと駆け上がる。
「……はい。おやすみなさい」
ちょっと驚いた顔のお兄さんが、とっても小さく返事をしていった。
明日はどこに行くのかな?ちょっと楽しみ。
目覚まし時計を忘れてきたことに、朝になったら思い出した。いま何時だろう?
日当たり良好な宿みたいで、窓から気持ちのいい光が入ってきていた。
「おっと、家じゃなかった」
ベッドでさらに上段なのに、すっかり忘れて落ちそうになってしまった。慌ててベッドの柵にしがみついてセーフ、と。
「ふう」
ピチチチと、聞き慣れた鳥の声が聴こえる良い朝ですね。
リュックを担いで降りたら、さて、ここはどこでしょうか?
答え、異世界です。はい、正解。
ギャオッ ガァァ……
「……」
ん?そんな声で鳴く鳥はいたっけ?
「まあ、いいや。先に支度をしようっと」
お風呂は別だったけど、ちゃんとトイレと洗面台がある部屋なのだ。助かる。
そうっと静かに移動をしたら、そのまま着替えも済ませよう。さすがに部屋の中で着替えない、人並みの羞恥心は持っているよ。
うーん。でもトイレが水洗じゃなくて、和式なところがちょっと気になる。臭いはしないけど、これ、底はどこに繋がっているんだろう?
落ちないように、落とさないように気を付けながら支度をしないと危険だ。
「おはようございます、沢村さん」
「おはようございます」
扉を開けたら、すぐに声が掛けられた。お兄さんも起きたらしい。
あ、後ろが微妙にはねてる。いつもキッチリスーツの人でも、寝起きは違うんだなあ。……なるほど。
妙なところに感心していたら、荷物を持って宿屋の食堂に行くことになった。
「このまま出掛けるんですか?」
「そうです。徒歩以外の移動手段も経験しておいた方がいいと思いまして、今日はそのまま別な街に向かいます」
「わかりました」
普通の旅行と違って、観光が目的じゃないもんね。
移動手段は馬車とか船かなと思いながら食堂に行ったら、結構な人でにぎわっていた。
へー、こんなにたくさんの人が泊まっていたんだ。
「食事だけの人もいるんですよ」
「ああ、そっか。なるほど」
そのようなことを言っていたね。確かに夜勤明けっぽい人とかも、ちらほらいるみたいだ。
ん?
「あの、あの人っていうか……人?は、何ですか?」
人と呼んでいいのだろうか。それでも「何だ」は失礼だろうけど、なんと呼べばいいのかわからなくて小さな声で尋ねてみる。
お兄さんがチラッと視線を向けたら、気付いたようで小さく頷いた。
「あの方たちは『オーガ』と呼ばれている種族です。力があるので、土木作業員として働いているんですよ」
「はあ、そうなんですか」
パッと見はゴツイだけの人なんだけど、明らかに人ではない体格と顔つきが気になったら、別な種族だとアッサリ言われてしまった。
そうか、だってここ異世界だもんね。そういう人?……人っていうか、別な種族だって、もちろんいるよね。
無理矢理に納得をしたわたしを見て、お兄さんが満足そうに微笑んだ。
「次の移動手段が問題なかったら、この世界でも大丈夫ですよ」
「え?」
移動って、馬車とか船とかじゃないってこと?
顔を引きつらせるわたしに、お店の人が持ってきた食事を並べていくお兄さん。
「しっかり食べて行きましょうか」
「はい……」
急に不安が襲ってきた。そうだ、だってここは異世界なんだった。
「……」
バサリと大きな翼を広げる謎の鳥が目の前にいる。……鳥っていうか、竜??
ギャオと鳴いたことで、今朝の声の主がわかったことは良かったけれど。そんな鳥っていうか竜が並んでいる広場に、なんでわたしはいるんでしょうか?
手綱のようなものが首に繋がれていて、飼い主らしきオジサンがしっかり持っていることはありがたい。それでも意味がわからなくて固まっているわたしに、交渉が済んだお兄さんが晴れやかな笑顔で振り返った。
「じゃあ、行きましょうか」
「うおっ!?」
乗るの?これ、この、鳥っていうよりも竜みたいなわけのわからないものに!?
「こちらは『ワイバーン』、俗に言う飛竜です。飛ぶ竜と書いて、飛竜」
「ひりゅう……」
飛ぶ鳥と書いてワイバーンと読む生き物は、もしかしなくても今日これから乗る移動手段ってことですか?
「その通りです。あ、絶叫マシーンは得意でしたっけ?」
「落ちる瞬間が苦手なだけで大丈夫って嫌だああぁぁぁ!!」
「ほら嬢ちゃん、早く乗りな」
わたしを片手で抱えた飼い主っぽいオジサンが、ひょいっと背中らしきところに乗せていった。
他の飼い主っぽい人や通行人は、叫ぶわたしを微笑ましそうに見ているだけで、小さい子は羨ましい目で見つめている。いや、代わってあげるよ、いくらでも!
鱗が硬くて、手綱以外につかむところがないと混乱するわたしには、前に座ったオジサンが自分の腰紐を渡してくれるけど。
待って、だってこれから空を飛ぶんでしょ?命綱とかないんですかね!?
一番後ろに軽々と飛び乗ったお兄さんは、わたしのリュックを指差した。
「リュックは前に抱え直したほうが落ちにくいですよ」
「そんなワンポイントアドバイスはいりませんよっ」
いつものようにサクサク進めるお兄さんと、飛竜の飼い主兼運転手のオジサンに挟まれて、わたしは初めて空を飛ぶことになった。
バサリと青い、大きな翼を広げたら、首を上に向けて空へと飛び立った。
「うひっ!?」
一気にかなり高いところまで連れていかれて、さっきまでいた街がとても小さくなってしまって戦慄する。
ここから落ちたら死ぬ、確実に。
……それもとっても気になるけれど、それよりも。
「さささ、寒い……」
建物にぶつからない上空までいったら、翼を一振りする。それだけで風に乗れたらしく、すいっと優雅に飛ぶ青い竜は楽しそうに空を泳いでいる。
揺れがないことは助かるけれど、腰紐をつかむ指がかじかんできた。
「やっぱり空は速いですねえ」
「さむい……」
「沢村さん、次の街はすぐ下ですよ」
「下?」
……待って。下っていうことは、今は上空ってことは、つまり……?
ガクンと飛竜の首が下がったら、一直線で真下に急下降していった。
「ふぎゃあああぁぁぁ!!!!」
「口閉じてろ!舌噛むぞ、嬢ちゃん!」
そんなことを言われても、ビルより高いところから落ちてるんだよ!?
「死ぬ死ぬ死ぬぅぅぅっ!」
「ちょっと失礼しますよ」
「ふごっ!?むぐぐぅ」
竜に乗って空に上がったら、今度は海に向かって降りていくとか。
口を後ろから塞がれても、叫ぶことは止められない。
「むぐーっ!」
助けてえぇっ!
地面につく前に大きな青い翼をバサリと広げたら、静かに着地をしてしゃがんでくれた。それでも寒さと恐怖心で固まっているわたしは、自分の足で降りることができない。
「ゆっくり飛んだんだがな」
「ゆ、ゆっくり……」
最初と同じく、運転手兼飼い主のオジサンがわたしを抱えて降ろしてくれた。
あれでゆっくりとか、普段はどんな速さなんだ。
「無事に到着しましたね、沢村さん」
「ぶじ!?」
これが、無事!?
「え?だって落ちていませんし」
「……」
地面にへたり込んだまま、睨むように見上げたら、お兄さんがオジサンと飛竜に別れを告げているところだった。
え、お兄さんは平気なの?乗ったことでもあるんだろうか。
「ありがとうございました」
「おう」
何度乗ってもわたしは慣れないだろうと呆然としていたら、オジサンが帰り支度をしている。
「お、お世話になりました」
座ったまま姿勢を何とか正して、オジサンと飛竜にぺこりとお辞儀をする。
「またよろしくな」
「……はい」
ニカッと微笑みながら飛竜に乗り込んだオジサンは、颯爽と背中に乗り込んだ。手を振り返しながら見送っていたら、わたしに顔を向けた飛竜が小さく鳴いた。
キュウ
「バイバイ」
見た目は三メートルくらいあるけど、もしかして子供なのかな。
青い翼の竜なんて、見ただけなら異世界ってすごいなあっていう感想で終わったと思う。
しかし現実は違う。移動中は寒かったし、乗り心地は鱗が硬くて微妙だ。
確かに速いし飛竜は可愛いと思えたけれど、これに乗らなくても他の移動手段もあったよね!?
「ええ、もちろん。しかし船は時間が掛かりすぎるんです」
「……ですよね」
まだ震える腰と足を叩いて何とか立ち上がったら、ゆっくりと深呼吸をして落ち着くことにしよう。
海の香りをいっぱいに吸いこんだら、同時に焼き魚の匂いが漂ってきた。
ぐー……
「……」
「……」
良かった。わたし、まだ生きてる。
「では、何か食べましょうか」
「はい……」
二日目は港町。どんな魚があるか、それを楽しみに頭を切り替えるとしよう。




