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1話 異動と聞いてきたのですが……

毎月1日と21日の11時ごろに更新予定。


たまに、早いペースで更新されることもあるかもしれません。

カタカタカタ……


パソコンのキーボードの音だけが俺の頭のなかに響く。


「おい、おい!宇崎!」


同僚の声が響き、我に返った。


「ああ…… 何かあったのか?」


「アイツが呼んでる。ところで最近大丈夫か?隈もできてるし、目死んでるぞ。」


浜村が心配そうにいう。


「そうか?このところ、大きな仕事が多かったからかもな。」


俺は今つくれる笑顔で笑った。


「あんまり、無理しすぎないようにな?」


「そうするよ。」


浜村が去っていく間、俺はにこやかに手を振った。そして、そのあと俺は大きなため息をついた。


「アイツのところに行くのか……」


アイツというのは上司のことだ。行くたびに叱られる。今回もどうせそうだろう。考えるたびに足取りが重くなっていく。


ちょうどいい機会だ。自己紹介でもしよう。


俺の名前は宇崎 慎也。公務員、25歳。まあ、簡単にいえば普通の社会人ってことだ。あと、独身だ。生まれてこのほか、彼女なんて出来たことはない……


んで、さっきのは同僚の浜村 隆介だ。同期で、人当たりもよく、周りから信頼されているやつだ。あと、モテる。顔もそこそこだし、素直でかわいいやつだから年上にも気に入られるし、年下にも尊敬される。まさに最強だ。

まあ、俺は小競り合いをしたりする気はない。だって次元が違うし、俺自身、あいつを気に入っているからだ。


***


ついに来てしまった。アイツの部屋に。でも、来てしまったからには、覚悟しよう。俺は大きく深呼吸をした。


コンコンコン。


「失礼します。」

このあと、バーコード頭が見えて、また怒鳴られるんだろうと思っていたが……

部屋に居たのは、スーツにサングラスといったSPみたいな格好をしているいかつい男だけだった。


「こんにちは。」


俺は驚きを必死に隠しつつ、挨拶をした。

サングラス男が口を開いた。


「キミが宇崎慎也か?」


「はい……」


俺に用があるのか?そりゃあ、そうだろうな。ここまでよびつけてるんだから。


「あー。知らせがあるのだが、キミは異動になった。」


異動か。まあ、四月だし、あっても不思議ではないだろう。


「キミが異動するのはちょっと特殊な部署だから、場所が違うんだ。あと、諸々の事情があって、スマホを貸すことになった。あとでテクノロジー課から受け取っておいてくれ。」


それをいうとサングラス男は去って行った。

俺は3秒ほどフリーズしていた。頭の中が?でいっぱいだったからだ。やっぱりよくわからない。まあ、公務員であることに変わりはないんだから、とりあえずあのサングラス男が言う通りにしてみよう。まず、テクノロジー課にいけばいいんだよな……確か、テクノロジー課は3階くらい上だったはず……


***


『テクノロジー課』


ドアの横にしっかりとかいてある。よし、ここだな。

軽くノックをしてから、そ〜っとドアを開けた。


「はい。なんでしょうか。」


メガネにショートの女性が言った。どうやら、受付のようだ。


「宇崎慎也といいますが。」


その女性はパソコンを開き、何かを打ち込んだ。すこしすると、


「宇宙の宇と崎⚫軒の崎で宇崎、ですよね?」


と訊いてきた。


「はい。そうです。」


と返事をすると、立ち上がって奥の方へ行ってしまった。そして、しばらくすると、白い箱をもって戻ってきた。


「こちらが、宇崎さんの端末です。」


箱を開けると、黒いスマホが入っていた。俺はガラケー派だったので、今まで自分のスマホを持ったことがなかった。まあ、これは正確に言えば自分のスマホではないけどな。しかし、公務員でもスマホが配布されるとはな。時代も結構変わったな。


そんなことを考えていると、彼女の冷たい視線に気がついた。


「詳しい説明や利用規約などはあちらです。」


彼女はそう言って隣を指差した。そこには俺と同い年ぐらいの男性が待っていた。


そのあと俺は簡単な手続きをして、正式にスマホを受け取った。


どうやら、仕事専用のメールアドレスも作ってもらえたみたいだ。そこに色々な情報が送られていたので、異動の詳細がなんとなくわかった。


まず、異動は月曜日からって、いくらなんでもはやすぎでは?普通は何ヶ月か前に知らせられると思っていたんだけどな。

あと、部署の位置はC県。そこはいいんだけど、住所を地図アプリで調べてもそんなに情報が出てこないし、よく見るとその周りには山と森しかない。


つまり、不安要素だらけってことだ。


唯一安心できるのは、寮があることだな。どうやって通勤しようか迷ってたところだし。俺はそんなに荷物もないし、出勤当日に一緒に持って行こう。


***


さてと、早起きして新しい職場の最寄駅まできた。


そして、来てみてここがド田舎だということがよくわかった。


なぜなら、なにもないからだ。商店はおろか、家すらみつからない。少し先にぼんやり見えるくらいだ。

それに電車は5、6時間に一本。さっきの電車を逃していたら大変なことになっていた。

ここに毎朝出勤するということはほぼ不可能だな。


しかし、どうやって行けばいいのか全くわからない。どうやら、山の中にあるぽっいし。おや、ちょうどおばあさんがいる。訊いてみよう。


「すいません。この場所にはどうやって行けばいいでしょうか。」


「あら、こんにちは。この場所?ここは山に囲まれてるからねー。山の中はよくわからないけどね。山まではあそこの道をまっすぐ行ったら、分かれ道があるから、そこを右に曲がって行けば、着くはずよ。」


やっぱり、住民はよくわかってるなあ。まっすぐ行って右か。よし!

お礼を言って去ろうとしたら、おばあさんに引き止められた。


「ちょっと待って。実はね、あなたが向かおうしている場所らへんから、変な光を見たとか叫び声がするとか色々な噂があるのよ。気をつけてね。」


おばあさんは心配そうに言って、去って行った。

叫び声、変な光……嫌な予感しかしない。だが、ここまで来てしまったんだからしょうがない。

そして、俺は、今まで時間を確認してこなかったことに気づいた。時間は7時5分……早くね?8時に着く予定だったのだが。どうしたらいいんだ……


とりあえず、向かおう。俺は考えるのをやめた。


おばあさんが指してたのはこの道だな。しっかし、まあ何もない。田んぼ、田んぼ、田んぼ。田んぼの嵐だ。

おっと、これが分かれ道か?確かここを右だったな。ここはだいぶ険しいがもう山の中なのか?と思った矢先に高い山が目の前にそびえたっていた。さっきの道は山の麓へ行く道だったようだ。地図アプリで職場の位置を確認すると、山の中というか山に囲まれた中にあるって感じなんだよな。


つまり、俺はこの山を登って下らなければいけない、ということだ。


「勘弁してくれよ……」


思わず声が出てしまった。だが、初出勤日。遅れるわけにはいかない。


もはや、ここまで来ると8時に出勤するということが使命のようになってきた。



「うおおーーー」



そこから先は何があったか覚えていない。おそらく俺はものすごいスピードで山を登って下ったのだろう。ここが職場か。それほど高くはない建物を見つめながら、思った。さっき、上から見た建物を思い出すと寮っぽい建物が奥の方にあった気がする。それに前の建物と繋がっているようだったな。

寮に行くにはあの建物を通らなければいけないわけか。まあ、パッと荷物をすぐ置いてくればいいだけの話だ。


さて、建物は塀の中にある。警備もいるみたいだし、どうやって突破したらいいか。



って、俺はそこで働くんだからそんなことをしなくても、普通に入ればいいじゃないか。


「あの……宇崎慎也と言いますが。」


門の警備にそういうと、案外すんなり通れた。


寮に行こうと、中に入った時、俺は気づいた。中にはなんとあのサングラス男がいたのだ。



よろしくお願いします。

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