殺人鬼とアップルパイ(ミステリー)
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「殺人鬼って、アップルパイとか作るじゃない?」
作るかなぁ?と思ったけど言葉にはしなかった。
エプロン姿の背中は僕の様子に構わず言葉を続ける。
「パイとかハンバーグとか餃子とか、チョコクッキーとか? 簡単だけどちょっと手の込んでるもの作るじゃない?」
そうかなあと思ったけど、僕は言わなかった。
彼女がそう言うなら、彼女の中ではそれが真実なんだろう。
殺人鬼は手料理を作るもの。
もちろん、僕は既に気付いてる。
今、名前の上がった料理……ぜんぶ、僕が彼女に作って貰ったことがあるものばかりだって。
包丁を握った彼女がくるりと振り向く。
口枷をつけられた僕は首を振って必死に意図を示そうとするけど……明確な言葉にはならない。
「お待たせ。アップルパイが完成したよ」
微笑みを浮かべた彼女が、ああ、近づいてくる。
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2021/01/19(火) ジャンル:ミステリー
『三題噺ったー!』https://shindanmaker.com/264399 からのお題です。
名無しのVさんは「殺人鬼」「アップルパイ」「明確な言葉」を使ってなにかお話を作ってください。




