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塔の上(微ホラー)
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塔の上では愛する人に会えるという。
よそ者の孤児をていよく追い払うための詭弁に違いないが、試してみるくらいはいいだろう。
もしも本当に会えるなら。
どこまでも続く階段を、空腹をこらえて登っていく。
てっぺんで、風に煽られながらひっそりと囁いた。
お母さん。
ごう、とひときわ強い風が吹く。呼ばれた気がして、彼は振り返る。
その瞳が恐怖に見開かれた後、太陽を真っ黒な雲が覆い、あたりに暗闇が落ちた。
一瞬の後、彼の姿はもうどこにもなかった。
塔は再び静かさを取り戻し、街には今日も平和が続いている。
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2020/11/30(月) ジャンル:微ホラー
綺想編纂館(朧)@Fictionarys さんの企画「#novelber」
11月の間、各自で毎日1題の物語を作っていく企画です。
最終日Day30のお題は「塔」。




