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魔法の外套(微ファンタジー)
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男は、外套の下から次々に玩具を取り出した。
年の割に少しこまっしゃくれた少年は、目を輝かせながらも、そんな自分の期待を素直に認めることはしない。
「魔法だなんて、嘘だ。内ポケットがあるはずさ」
「なくはないがね。こんなにしまえるほどじゃない。嘘だと思うなら見てみるかい?」
頷いた少年が外套の内側に頭を突っ込んだ途端、男はきゅっとボタンを閉じ、少年の身体を丸ごと中に封じ込めてしまった。
立ち去った後には、ちり一つ残らない。
さて、その魔法の外套である私には、私の中の少年の様子も手に取るように分かる。
今は、山のように積まれた玩具で、友人たちと自由に遊んでいるところだ。
きっと、戻るべき場所があることなんてすっかり忘れていることだろう。継母から、ひどく虐められていたことさえも。
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2020/11/27(金) ジャンル:微ファンタジー




