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水は低きに流れ(恋愛)
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春雷が遠くで鳴っている。
男の涙は、いつしか柔らかな雨と一体であった。
雑草のような自分に、温室の薔薇は似合わない。
女を思い、濡れた地面を睨み付ける。
明日、別の男へ嫁いでいく女のことを。
今宵、女は男の訪れを待っているだろう。
だが、どうしてその手をとって逃げることなどできようか。男との未来は、どの道も今より不幸になるより他はないのに。
地面に集まった水は、決まったとおり低い方へ流れていく。
同じ道を辿って、結局は下っていくばかりだ。
男は知らない。
今このとき、絶望を抱えた女が、増水した川のほとりでじっと水面を見つめていることを。
今ならばまだ、間に合うことを。
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2020/10/27(火) ジャンル:恋愛
『三題噺のお題メーカー』https://shindanmaker.com/58531 からのお題です。
名無しのXは「雷」「雑草」「ぬれた時の流れ」を使って創作するんだ!ジャンルは「悲恋」だよ!頑張ってね!




