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手のひらの一滴  作者: 狼子 由
2020年に作ったもの
473/514

この手が(ファンタジー)

●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●


 虫型のモンスターが鋭い鎌を振り上げた。

 掠めて当たった父さんの眼鏡が、雑草の隙間に転がる。


「父さん!」


 慌てて叫んだ。

 穏やかな顔に走る傷から、血が溢れている。


「いいか、時間を稼ぐからまっすぐ逃げろ。後ろを振り向くなよ」

「と、父さんは!? 父さんが戦うなら俺だって……」

「馬鹿。お前は長男だぞ? 二人とも戻らなきゃ誰が家族を守るんだ」


 俺は泣きながら頷いて、そして震える足で逃げ出した。


 あの日のことは忘れようもない。

 だから俺は勇者になった。

 二度と誰かを置いて逃げなくて済むように。みんなを守るために。


●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●


2020/10/13(火) ジャンル:ファンタジー

『三題噺のお題メーカー』https://shindanmaker.com/58531 からのお題です。

名無しのXは「虫」「雑草」「壊れたメガネ」を使って創作するんだ!ジャンルは「王道ファンタジー」だよ!頑張ってね!

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