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手のひらの一滴  作者: 狼子 由
2020年に作ったもの
461/514

ドラゴンと幼女(童話)

今回はだいぶ長いです。

●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●


オアシスにはドラゴンがいて、宝物を差し出さない限り水を汲ませてはくれません。

その年は雨どころか曇りの気配すらないひどい乾期だったので、村の人たちの宝物はみるみるなくなっていきました。


ある日、これ以上は瓶をひっくり返しても銅貨一枚水一滴出てこないとなったとき、一人の幼女がオアシスを訪れました。


「ドラゴンさんに私の宝物をあげましょう。それがあれば、あなたの宝物はたちまちに二倍になりますから」

「それはなんだ」

「それは友だちです」


こうしてドラゴンの友だちになった幼女は、村人の宝物について老人たちから聞いた昔話を一つ一つ教えました。


この金の櫛はマーサおばさんの結婚衣装。こちらはダグじいさんが息子から初めてプレゼントされた腕輪。先祖伝来の黄金の鞘、誰かの思い出の首飾りに、約束の指環、大事な金縁の眼鏡まで!

ドラゴンは一つ一つの宝物の持つ物語に泣いたり笑ったりハラハラしたりしながら、幼女の話を聞いていました。


最後の宝物のお話が終わったとき、ドラゴンは言いました。


「私の宝物は確かに二倍になった。すべて友だちのおかげなのだとしたら、私たちは宝物を山分けするべきだ。さあ、半分の宝物と共にお前を村まで送ろう」


ドラゴンは手持ちの宝物のすべてと幼女を背に乗せ、村まで飛んでいきました。

幼女を村に降ろしたドラゴンは、そのままオアシスには戻らず、どこか遠くへと飛び去っていってしまったのでした。


村人たちは、オアシスの水を汲み放題になりました。


ところで、幼女は譲られた宝物をすべて、元の村人の手へと返してしまいました。

そうすると、ドラゴンの持っていったもう半分の宝物とは一体なんのことなのでしょう。村人たちにはとんと分かりません。


ですが、今でも毎夜ドラゴンと仲良くお話をしている幼女だけは知っているのです。

その宝物は、二人でいると倍にも三倍にも、はたまた百倍にもなるような幸福であることを。


●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●


2020/09/15(火) ジャンル:童話

『三題噺のお題メーカー』https://shindanmaker.com/58531 からのお題です。

名無しのXは「曇り」「オアシス」「先例のない幼女」を使って創作するんだ!ジャンルは「童話」だよ!頑張ってね!

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