きざまれる気持ち(ヒューマンドラマ)
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こんなもの、子供の玩具のようなものだ。
形も見えずひねくり回して、何ともつかない物になっていく。
そうと知っていながら、僕は書く手を止められない。
世界への恨み辛み怒り嫉みを叩き付けるが如く。
原稿用紙に深い刻印を彫り込むが如く。
「あ、今日は燃える山田くん(レア)だ」
サークルの扉を開けて森本が入ってきた。
とぼけた言葉で、立ち上がりの遅い僕を嘲るように笑っている。
部誌の締め切りまであと二時間。
走る鉛筆よ、いっそ火を吹け。
ああ、そうだ。この想いも書き足さなければ。
彼女のあの意地の悪さと、流麗で柔らかく、なのに心に刺さる筆致に、僕が抱くこの途方もない嫉妬を。
ダクトスペースに背を預け文庫本に目を落とす彼女を、僕はそっと睨む。
背表紙の上からちらり見上げる視線から、逃げるように慌てて目をそらした。
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2020/09/08(火) ジャンル:ヒューマンドラマ
『三題噺のお題メーカー』https://shindanmaker.com/58531 からのお題です。
名無しのXは「おもちゃ」「DS」「燃える山田くん(レア)」を使って創作するんだ!ジャンルは「ラブコメ」だよ!頑張ってね!




