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不屈の心は神に宿らず(風羽洸海せんせ)
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長い旅路より戻った神官は、街の入口、言葉もなくくずおれる。
慣れ親しんだ何もかもが、火山灰に埋もれ、姿を消していた。
神官の耳元で悪魔が囁く。神様は何にもしちゃくれない、と。
天使が囁く。これこそが神の威光、汝も等しく神の刃になれ、と。
揺れるロザリオが止まるのを待たず、彼は涙を拭い立ち上がった。
私は人の道を行く。私と同じ絶望に満ちた人々に、平穏を説くために。
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2019/06/03(月)
歴史と信仰に造詣が深い風羽せんせの紡がれる物語では、宗教と政治、神と王が、人々を治めていきます。
高みを見るその眼差しは、しかし、地を這う人々の視点もけして失いはしません。
必ずしも良き未来へつながるとは信じられない日でも、朝日は昇り風はまた旅人を先へ導きます。
時に迷い、時に悩みながらも、ただひたむきに今日をゆく、物語の主人公です。




