宮廷詩人の歌声(深海さん)
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王様と王妃様が喧嘩をした。
至近距離の言い争いから無理矢理引き離された後は、そこらにあるものを投げ合っての肉弾戦。
宝冠が宙を飛び、銀の皿が舞う。
王子は慌て、姫は泣く。
大臣は頭を抱え、将軍は王妃に引っぱたかれた。
宮廷詩人は澄ました顔。
ほろほろと竪琴を爪弾いて、顛末を高らかに歌い上げる。
玉座を持ち上げていた王様が、竪琴の音を聞きつけた。
首飾りを振り回していた王妃様が、歌声を耳にして動きを止めた。
さあ聞き給え、王国を守護する神々よ。
我が竪琴奏でるは、真実の歌なり。
王様と王妃様は手を取って、くるりと回って踊り出す。
吟遊詩人の真実に、いつの間にやら世界が巻き込まれていく。
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2019/05/24(金)
可愛らしい文体と切ない物語、麗しいイラストで皆に愛される深海さん。
どんなおおごとがあっても、喧嘩中で頭に血が上ってても、深海さんの言葉は聞かなきゃいけないような、自然に耳に入ってくるような、そんな気持ちになります。
自然体で自由にしているのに、何故かそこだけ焦点が当たる、そんな物語の主人公です。