はじめての友だち(ヒトエビトさん)
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ずっと一緒だった。
鉄棒、雲梯、滑り台。いつだって君は公園にいた。
影オニ、花摘み、おままごと。君と一緒なら楽しかった。
小学校で新しい友達が出来た。
少しずつ、君と会う時間は減っていった。
公園に行くことも少なくなった。
一ヶ月ぶりに顔を見せた時には、そこにはもう君はいなかった。
二度と会うことはなかった。
そして今、幼い息子が鉄棒の影、誰もいない場所に話しかけている。
僕は君のことを思い出す。
頬にかかる黒髪、赤いリボン。
白いレースの襟付きワンピース。
笑い声、引き上げた唇の赤さ。
息子の小さな手が、咲いたばかりのつつじを握っている。
あの日君と咥えた花蜜の甘さがこみあげて、僕は目元を押さえる。
もしかして、そこにいるのは君じゃないか。
そうだったらどんなに良いかと、僕には祈ることしかできない。
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2019/05/15(水)
温かくて、少し寂しい。柔らかくて、どこか悲しい。
そんな優しいキツネのイラストを描かれるヒトエビトさん。
幻の淡さと現実の苦さ、そしてちょっとした親切心の心地よさ。ヒトエビトさんの物語には、そんな割り切れない切なさが含まれます。
郷愁と後悔を抱えて未来を紡ぐ、そんな物語の主人公です。