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西瓜と私(百里芳さん)
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僕がこの手で割りさえすれば、魔王は封印されるのだという。
ここまで共に旅してきた西瓜を。
だけどどうしてそんなことが出来るだろう。
朝も夜も、雨の日も風の日も、苦難と喜びを共にしてきた西瓜。
割れ。割れない。
割るんだ。割りたくない。
その手を離せ。割るもんか。
僕は西瓜を抱え、仲間達を置いて魔王城を飛び出した。
西瓜と共に明日を生きるため。西瓜の大切さを世に知らしめるため。
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2019/05/13(月)
日々努力を重ねることを、きっと誰よりも知っている方、ももさとさん。
その真面目で誠実な立ち居振る舞いとは裏腹に、頭は西瓜です。いえ、比喩ではなく。
本掌編集の13「怪盗と探偵」はそんなももさとさんに捧げたお話です。既に一作書いてあるという強みもあって、何とか「ただ西瓜が出て来ただけじゃないお話」に仕立てようとしたところ、脳内で煮詰まった結果、「西瓜しか出てこないお話」となりました。
真面目くさった顔で飄々と躍る、心優しい道化ものな物語の主人公です。