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手のひらの一滴  作者: 狼子 由
#ふぁぼくれた方を主人公にして140字小説を書く
362/514

竜と幼女(鵜狩三善さん)

●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●


幼女は、くは、と欠伸を一つ。

村人の話を、肘突いて気怠げに聞いている。


わざわざ遠方から訪れ、頭を下げていると言うのに。

今や飢饉の原因となった古龍退治など、興味ないと一目で分かる。



お付きの少年は小声で忠告した。


「ちょっと。起きてください、よだれ垂れてますよ」

「……ん? んん、おう……」


口元を擦る幼女の傍に、村人の伴った幼い娘が、てとてとと軽い足音を立てて歩み寄った。

慌てる村人の腕をかいくぐり、ポケットから取り出したのはぐしゃぐしゃのハンカチ。


「こ、こら! お前――」

「おねーさん、ふく?」


差し出された布切れを受け取った幼女は、ためつすがめつ溜息一つ。


「……ちっ、こりゃ仕方ねぇな。同族のシマに殴り込むのは気が進まねぇが、恩を受けちゃあ返さざるを得ねぇ」


喉元を上げて、ごう、と吠えた。

あっという間に巨竜の姿に戻った幼女は、首をぐいと下げる。

鱗だらけの背に、村人と、きゃっきゃと喜ぶ娘を乗せ、大空へ飛び立った。


風の舞う、後に残るはお付きの少年ただ一人。

「晩ごはんには帰ってきてくださいね」と手を振る。


「まったく、人が好いんだから」


溜息と共に、少年の唇から炎が漏れた。


●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●


2019/04/26(金)

本当は、本作品の一話一話に、鵜狩さんの解説をつけたいくらいなのです。

「面白い人と言うのは、話す言葉が面白い人じゃなくて、あなたの話は面白いと思わせてくれる人なんだよ」という話を聞いたことがあります。鵜狩さんがくださるコメントや感想は、いつだって尖ってて、優しくて、「お前の話にはこんな面白いところがあるよ」と思わせてくれます。

一言では言い表せない斜めの視点と格好良さ、器の大きさを持った、そんな物語の主人公です。

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