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誰かの足跡(微SF)
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古びた鉄塔をのぼると、てっぺんからは見渡す限りの砂漠が見えた。
滅びた世界にたった1人。歩いてきた僕の足跡だけが点々と続いている。
ふと足下の鉄柵のそばに、本が1冊置かれていた。
風雨にさらされた頁はたわみ文字は掠れ、手に取れば表紙がぼろぼろと剥がれ落ちる。
それでも、本だ。きちんと製本され、何事かの書き付けられた。
本を元通りおきなおして、鉄塔をおりた。
破れた本が希望に見える。
誰かの生きた痕跡が、ここにあるということが。
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2019/04/12(金) ジャンル:微SF




