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釣りあげる(微SF)
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重い手ごたえに喜んだのもつかの間、つりばりにかかっていたのはニット帽だった。
独特の模様には見覚えがある。
半年前になくしたはずの、自分自身の帽子だった。
それからは、釣りの度に失せ物がかかった。
片方の靴下、ハンカチ、手袋……失くしたとばかり思っていたものが返ってくる。
最初は嬉しかったが、そのうちふと怖くなった。
僕の前から失くなったのは、今こうして奪ってるからじゃないかって気がして。
そうして、僕は釣りを止めた。
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2019/04/04(木) ジャンル:微SF




