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冒険の結末(微ホラー)
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読んでる超大作は丁度クライマックス。
ベッドの上に寝転がったまま、手に汗握りながら主人公の行く末を見守る。
階下から声が響いた。
「晩ご飯、できたわよ」
「今行く」
と答えはしても、なかなか本は手放せない。
朝から十巻も読み続けてきて、今が大冒険のラストへ向かうところ。心が盛り上がってエンディングへ向かう、このタイミングを逃せるものか。続きが気になってご飯どころじゃないはずだ。
「ご飯だってば!」
「今行くよ!」
面倒だけど返事だけしておいて、本に視線を戻し――そこでふと、気が付いた。
あれ、今日はお母さん、残業で遅くなるって言ってなかったっけ?
自室を出てみても、廊下から向こうは電気もついてない。
もちろん階下は静まり返っている。
ぞくり、と背筋が冷えた。
手にしたままの本を机に放り投げ、急いでベッドに潜り込む。
遠くの大冒険よりも、身近な恐怖の方が強いのだ。
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2018/02/11(月)(初出) ジャンル:微ホラー




