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手のひらの一滴  作者: 狼子 由
2019年上半期に作ったもの
306/514

その本の(恋愛)

●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●


がたんごとん、電車が揺れる。

斜め前に座る君が、はらりと頁をめくった。


一昨日、運よく正面に座れた時に背表紙は確認済み。

タイトルも作者名も分かった。

昨日、図書館で全部読んだから、どんな話なのかは分かってる。

横から見る頁の厚さで、どの辺りをを読んでるかも。


伏せた瞼の端に、きらり水滴が光る。

ああ、そうそう、そこ悲しいよね。僕も泣いたから、よく分かる。


本当はいつか語り合いたい。

誰の登場シーンが格好良くて、どの国が最後まで踏ん張って、どんなに胸が熱くなったか。

いつか。いや、今か?

今ならそっとハンカチを取り出して、さり気なく……


……とか考えてる間に、気付けば扉が閉まって見慣れた駅名の看板が後ろに遠ざかる。

正面にいたはずの君もいつの間にかいないし。


ああ、もうちょい早く決心できれば良いのに。

あのお話の英雄のような勇気が欲しい。

英雄なんかとは程遠い僕は、ため息をつきつつ電車を降り、とぼとぼ折り返しのホームに向かうのだった。


●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●


2018/02/06(水)(初出) ジャンル:恋愛

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