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きゅう(微ファンタジー)
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水に舞う青い髪、黄金に輝く瞳。
腹から下を覆う輝く鱗も、柔らかな波にはためく優雅なひれも、人にはあり得ない。
意思疎通もままならない。
こうして語りかけても聞こえているかも分からない。
なのに君が僕の目を見て、きゅうきゅう、と音を立てて笑う表情に心引かれる。
何とか君と言葉を交わしたい。
繰り返し語りかけても君は知らん顔。
ならば。
「きゅ、きゅう……」
意を決して君の声をまねた僕の、辿々しい言葉が、水槽のガラス越しに水面を揺らす。
波に触れて振り向いた君の、紅い唇が微笑みの形に歪んだ。
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2018/01/31(木) ジャンル:微ファンタジー