じいちゃんの贅沢(ヒューマンドラマ)
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じいちゃんが死んだと、知らせが入った。
田舎で葬儀を終えた後、田んぼの中にぽつんと建つ一軒家へ向かう。
昔は何度も来ていたはずだけど、就職してからしばらくご無沙汰になっていた。
久しぶりに来てみたら、こんなにもひと気がない。じいちゃんはこんな寂しいところに一人暮らししてたのか。
静けさに耳を刺されながら遺品を整理した。
妻であるばあちゃんは早くに亡くなり、一人娘の僕の母さんは離れて暮らしてる。
家の中にもう家族との生活の跡は見当たらなくて、出てくるのはじいちゃんが生きてくのに最小限のものばかり。どんな侘しい思いで毎日を過ごしていたのかと胸が苦しくなった。
だけど、ついさっき、ようやく見付けた。
――隠し扉の内側、ぎっしりと本が詰まっていた。
どれもこれも表紙までボロボロで今にも頁が落ちそうな程、読み込まれている。
そう言えば、小さい頃、寝付けない僕のために色んな話をしてくれたっけ。
幼い頃に聞いた昔話が、煙草の香と共に脳裡に蘇る。
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2018/12/20(木) ジャンル:ヒューマンドラマ