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幸運貯蓄(微ファンタジー)
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大事にしていた懐中時計を、うっかりどこかで落としたらしい。
ポケットを探り、心当たりに尋ね回ったけれどやっぱりない。
ため息をついて顔を上げると、道端に立っている少年が、僕を見て可愛らしい笑顔を浮かべている。
「ねぇ、今の不運の分だけ幸運を貯めておこうか? 好きなときに使えるよ」
少し考えて、僕は黙って首を振った。
昔から、雑誌の付録のシールとか大切に取っといて、ずっと使えないタイプの人間なんだよね。
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2018/12/18(火) ジャンル:微ファンタジー