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倉干し(微ファンタジー)
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古い倉の中、先祖伝来の巻物を解く。
崩れかけた紙を戦場に、鎧武者達が剣を合わせていた。
舞い散る埃の中に、ふわり、浮かび上がった武者が僕の前に膝を突く。
主よ、此度こそ天下を平らげましょうぞ。
僕は頷き、傍らに置かれた刀の柄を握った。
寸の間で抜き放ち、振り上げた軌跡が武者を両断する。
再び戻った静寂に息を吐いた。
手の中の柄には刃がない。先祖伝来の柄――柄だけだ。
だけど、そこにいないモノに対峙するには、そこにない刃で十分だから。
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2018/12/16(日) ジャンル:微ファンタジー