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手のひらの一滴  作者: 狼子 由
2018年下半期に作ったもの
271/514

無意識なのですとも(微ファンタジー)

●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●


前を歩く人のコートの裾からひらひら毛皮がのぞいてる。マフラーが中でほどけたかな。声をかけながら近付いた。


「毛皮、見えてますよ」

「えっ!?」


伸ばした手の寸前でさっと毛皮が内側に引かれた。

うん……? 今の動き明らかに、ただの毛皮じゃなくて、中身が……


おずおずと振り向いた男性は餌を取られた犬のような悲しい顔。

犬好きの私はとっさに叫んでしまった。


「あの……結婚を前提に私とお付き合いしてくれませんか?」


図らずも脅迫のようなタイミングになったのは、何の意図もない純然たる不幸である。少なくとも口に出した私にそのつもりはなかった。

その後も何度も同じように説明したけれど、彼は苦笑いで「どうだかね」なんて言う。

私の性格をよく知る、彼らしい答えだなぁ、と感心しきり。


●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●


2018/12/11(火) ジャンル:微ファンタジー

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