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無意識なのですとも(微ファンタジー)
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前を歩く人のコートの裾からひらひら毛皮がのぞいてる。マフラーが中でほどけたかな。声をかけながら近付いた。
「毛皮、見えてますよ」
「えっ!?」
伸ばした手の寸前でさっと毛皮が内側に引かれた。
うん……? 今の動き明らかに、ただの毛皮じゃなくて、中身が……
おずおずと振り向いた男性は餌を取られた犬のような悲しい顔。
犬好きの私はとっさに叫んでしまった。
「あの……結婚を前提に私とお付き合いしてくれませんか?」
図らずも脅迫のようなタイミングになったのは、何の意図もない純然たる不幸である。少なくとも口に出した私にそのつもりはなかった。
その後も何度も同じように説明したけれど、彼は苦笑いで「どうだかね」なんて言う。
私の性格をよく知る、彼らしい答えだなぁ、と感心しきり。
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2018/12/11(火) ジャンル:微ファンタジー