270/514
混雑天国(ファンタジー)
●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●
口吻は血の味がした。
かわす視線には死の匂いが漂う。
彼の横に座り込んだ軍装の女が、体重をかけ腹を押さえて止血しているというのに。
「だめだ、まだ連れて行くな、ヴァルキュリア!」
大声で私に呼びかける。
ああ……でも無理よ。そのお願いは聞けないわ。
だってほら、彼の視線はもう私に釘付け。
さあ、行きましょうか、エインヘリャル。
増えるばかりで最近のヴァルハラはえらく混み合ってきたけれど、それでも地上よりはマシだわ。
●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●
2018/12/04(火) ジャンル:ファンタジー