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手のひらの一滴  作者: 狼子 由
2018年下半期に作ったもの
202/514

花びらが一つ(ヒューマンドラマ)

●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●


病床で、妹はいつだって指先を動かしていた。

細い刺繍針に通された七色の糸が、白い布の上に世界を描いていく。

真夏の海、凍てつく雪山、紅燃ゆる森。


「いつか行きたい場所なの」

妹の言葉に皆笑って頷いたけど、彼女が見ることは出来ないだろうと知っていた。


今、主を失った寝台に縫いかけの花畑。

拾い上げるとひらり薄桃色の花びらが一つ、シーツの上に舞った。


●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●


2018/08/28(火) ジャンル:ヒューマンドラマ

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