ボクとキミとおしゃべりな指
そもそも、ボクとキミは他人です。
心の中も、思考も、予想は出来ても完璧に分かる筈がないのです。
そもそも、ボクとキミは他人です。
好き嫌いを覚えられても、その日の気分で変わる好みまで察知するのは難しいのです。
そもそも、ボクとキミは他人です。
喧嘩する度に言われる「私の気持ち」なんて、お互いに言わなくても分かるなんて奇跡はほぼ無いのです。
そもそも、ボクとキミは他人です。
ボクはボクとして生きてきて、キミはキミとして生きてきたから、お互いの常識が違うのは当たり前です。
分かり合えた時の喜びより、分かり合えなかった時の方が悲しいし、辛いからよく覚えています。
分かり合えた気になっていただけって気づいた時、どうしようもなく寂しくなって、泣きたくなります。
怒って、泣いて、悲しくなって……それでも、笑い合える時、ただ傍にいられる時が幸せです。
でも、ずっとそのままだと「幸せ」が薄く、平べったくなってしまったような気がしてしまうのです。
「大切」なのも、「かけがえのないもの」だというのも分かっているのに、壊れそうになってからじゃないと、ボクはそんな事も忘れてしまうのです。
キミみたいに広い世界を知らなくて
キミみたいに笑っている事ができなくて
キミみたいに優しくなれる事ができなくて
キミみたいに何かを成し遂げる事もできなくて
ボクはどうしようもなくダメダメで
ボクはどうしようもなく泣き虫で
ボクはどうしようもなく子供で
悪いところを挙げればキリがなくて
それでも、ボクはキミに恋をして「家族」になりたいと思ったのです。
なんて、口下手なボクはありきたりな言葉をおしゃべりな指に託すのです。
キミに気づかれることを心の何処かで願って
キミに気づかれない事を心の何処かで願って
いつか、おしゃべりが指から口へうつることをちょっとだけ期待して
今日もただ目と指でおしゃべりをするのです。