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魔石使いのS.Q.L.~Javaで学ぶ魔法入門外伝~  作者: つむらてんほ
血路の章
35/37

第三十五話

 ポートが使用できる魔石はあと十数個であった。

 そのうち、()の魔石は二個。

 これでコカトリスの石化を防げるのは恐らく三分程度であろう。

 厄介なことに、このダンジョンに来てからというもの、魔石が補充できていない。

 利用できない赤い魔石だけは百を超える数、持っているのだが使えないのでは意味がない。

 コカトリスは石化を使うが、その属性は火属性である。

 よって、攻撃には水属性の魔石を使いたいが、それは一つしか残っていなかった。

 残りの魔石は警報に使用してしまったのだ。

 同様に火属性は料理に使用し、残っているのは風属性の魔石だけである。

 もし戦うのであれば、風属性は自らの速度上昇に使用し、土属性で石化を防ぎ、水属性の魔槍で切り倒すという手になるだろう。

 さすがに厄災級の魔物であるコカトリスがやたら居るはずもなく、コカトリスは階層ボスであり、イスカーダンジョン最下層のように、この階層全体がボス部屋扱いなのだろうと、ポートは予想していた。

 コカトリスを倒せば、転移門が出現するかもしれない。

 そうすればこのダンジョンから脱出して、イスカーへと戻れるかもしれない。

 最下層という特殊な状況で起こったボス部屋階層全体化が、このダンジョンでも起こる可能性は低く、またジャイアントシルバーキラーアントがどこから魔石を得ていたのか――――すなわち他の魔物を倒して得ていた――――を考えれば、そんなことはありえないだろう。

 だが、ポートはそんなありえない希望に縋ってしまった。

 限界まで精神が追いつめられていたポートは縋らざるを得なかった。


「倒す」


 ポートの目は暗い何かに覆われていた。


「あれを倒してイスカーに戻るんだ」


 それを人は狂気という。


 こうして、ポートは妄想の果てにコカトリスへ戦いを挑んだ。








 ポートとコカトリスの戦いは石化を防ぐ三分では決着がつかなかった。


 最後の魔石は先ほど使い切ってしまった。

 失われている右腕のせいで崩れるバランス。

 疲労により石化を避けられなかった左つま先。

 この状態で、よりにもよってコカトリスと戦わなければならない。

 それはポートにとって絶望とも言える状況だった。


 必死に石化の視線を躱しても、それはただ無駄に死ぬまでの時間を延ばすだけとわかっている。

 それでも。

 それでもポートは避ける、躱す。


「え」


 戦っているコカトリスの向こうから飛んでくる、もう一羽のコカトリス。

 それを見た瞬間、ポートの心は折れた。


 コカトリスの視線から放たれる、石化が直撃し、下半身から徐々に石化していくポートが最後に見たのは更なる絶望。

 二匹のコカトリスが、巨大な何かに踏みつぶされる瞬間であった。


 そして、ポートは石になった。


やっと、最初のシーンに辿り着きましたので、そろそろこの物語もおしまいになります。


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