Page2 探求の仲間の探求~1
──スキル。それは探求者にとって魔書同様に必要不可欠なもの。スキルの威力、精度はスキルの熟練度に依存し、熟練度はスキルの使用回数によって増加する。
『っと、こんなとこかな?』
おれはスキルについて得た情報を自分の魔書に書き留めた。
アンナと今後なにをしていくべきか、という議題で話をしたところ、やはりこの世界のことについて詳しく知るべきだろうといういうことになった。
──ここは辺境の街アンダス。探求者の養成所があり、探求者初心者に対しても親切なことから《始まりの街》と呼ばれているらしい。
おれはその街で魔書の販売を行っているおっさん、ジーグンに魔書の扱い方を教わった。
初心者に優しいというだけあってかなり色んな事を教わった。最初は髭の手入れもしないでだらしねえおっさんだなぁ、とおもっていたが今はその髭すらおれの尊敬の対象である。
『うっし、それじゃあ確認といくか!』
ジーグンから所持スキルの効果を確認する方法も教わったので、さっそく自分のスキルを見ることにした。
『えっとステータスのとこの所持スキルのとこから、見たいスキルを選択、っと。』
制御に軽く指で触れるとページが5,6ほどめくれた。
──制御
対象に宿る運動エネルギーの向きを操作する
──導き
光の束によって他者を導く
スキルの説明を見たおれは特になにもなかった。だって、すっごい攻撃魔法とかならそりゃ興奮もしたよ?でもなんかぱっとしなさそうなスキルだったしさ。なんか正直ショックだ。
おれの様子を見てジーグンが声をかけてくれた
『その様子だとあんまりいいスキルじゃなかったな?まあ心配するなよ。金さえあればおれんとこで魔書も買えるし、スキルポイントを貯めれば新しいスキルを覚えることもできるさ。』
『サンキューおっさん。そうだよな。それに使ってもないのに落ち込むなんてアホだよな。金が貯まったらまた来るよ。』
『おう!そん時はガッツリ貢いでいけよな!探求者見習い』
やはり商人だけあって金には貪欲なようだ。
探求者見習い、それはまだ探求者証明書を持っていない者をさす言葉だ。
探求者証明書を取得するためにはこの街より遥か北に位置するこの世界最大の街であり、もっとも魔書の流通が盛んな《オルディア》で年に1度行われる探求者承認試験に合格しなければならない。なお、この試験と同時期に行われる探求者昇級試験で合格すれば証明書のグレードアップができるという。
探求者にはグレードが存在し、銅級、銀級、金級、白金級の順で高くなり全ての探求者の最終目標である金剛級がある。
無論おれの最終目標も金剛級の探求者になることだが、その前に探求者証明書の取得。そして魔王の討伐という中間目標を達成しなければならない。
『まずは仲間探しですね。あなたは1人では無能同然。ですので盾役、回復役、攻撃役を揃えてパーティーを編成しなければならないでしょう。』
無能、か。確かにそうだ。能力は村人程度。スキルもぱっとしない。現状では無能と言われても当然かもしれない。だがこれからおれは強くなる。レベルを上げ、スキルを身につける。そう、これからだ。
『そうだな。そんじゃあジーグンのおっさんに教えてもらった集いの酒場に行ってみるか!』
集いの酒場。ここでは主に仲間を求めて来る人がいる。戦士、魔法使い、騎士など様々な職業の探求者が集まる。
おれが狙うのはやはり盾役の専門職である騎士、そして後方から強力な魔法で支援する魔法使い、そしてこれが最重要、仲間の傷を癒す専門職、神官だ。
おれは酒場に
──仲間急募!騎士、魔法使い、神官の者はカウンターまで!また、仲間を探している者、所属するパーティーが見つからないものも歓迎!
という張り紙を出した。そして今カウンターで初めての酒を味わっている。この世界では酒に年齢制限はなく子供であっても許可されているらしい。おれが飲んでいるのは男らしくビールといきたいところであったが、見ればビールを飲んでいるのはおっさんばっかりだったので人気があるぶどう酒を飲むことにした。金はジーグンから申し訳程度の量を頂いている。やっぱりおっさん親切。まじ尊敬
そんなこんなでちびちびと酒を飲んでいるおれのもとに1人の男が声をかけてきた。
『おい!お前か?神官急募の張り紙を出した野郎は』
ふりむくとそこには短い青髪のメガネをかけた男が立っていた。手にもっているのは、なんだあれ?ロッドとも違う錫杖でもない。メイスだ。後衛職である神官が持つはずのないメイスを彼はもっている。メイスとは基本、聖騎士、もしくは戦士が持つ鈍器だったはずだ。
『君は神官なのか?それとも戦士か聖騎士なのか?』
『はあ?この身なりからしておれが神官だってなぜわからない!』
確かに彼は十字をモチーフとした白衣をまとっている。鎧はつけていない。
『じゃあなんで君はメイスを?』
『おれが戦士の魔書を持ってるからだよ。まあ、あくまで副業だ。本職は神官だ。それでおれはお前のパーティーに入れるのか?』
あれ?案外あっさりしてるな。確か神官はパーティーに1人はいなければいけない職業だったはずなのだが。まあ神官が仲間になってくれるなら細かいことはいっか。
『ああ。もちろんだ。おれは井上カズヒサ、こいつはアンナだ。これからよろしく頼むよ。』
おれは親指でアンナをさして男に紹介した。
『なぜわたしに許可も取らずに名前を口にしてるんですか?その口、縫い付けますよ?』
おれははいはいという感じにアンナをあしらって男に名前を聞いた。
『おれはファゴットってんだ。まあこれから頼むぜ。せいぜいおれの足引っ張んなよ。』
これまたどきついのが仲間になったなと思った。今後が心配だ。こんな性格でほんとに傷治してくれんのかな?
──その予感は見事に的中する。
これが3度目の投稿になりますっ‼今回も説明が多くなってしまいました。ほんとに世界観を伝えようとすると説明が長くなってしまうのが考えものですね。
次回の投稿は15日の0時です‼今後も異世界生活ガイドブックをよろしくお願いします‼