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第8話 ひみつ船体スイメンジャー(水着回)

 アリューナは泡を制御して地底湖の水面に浮かび上がらせた。

 水面に出た天井部分の泡はエアコンとともになくなったが、水中部分はまるく水が押しのけられている。

 見えない球状の船に乗ってるようで不思議な光景である。


 どんぶらこ。どんぶらこ。


 地底湖の流れに沿ってゆっくりと進む。

 フミトはだんだん眠くなってきた。あれだ、電車で揺られてるとやたら眠くなるあの謎の効果だな…。


「フミトどの!来るにゃ!」


 はっと我に返ると、水面を鋭角的な三角がいくつか迫ってきていた。

 サメのヒレ?

 ちゅーか、水中戦か!?


「デッキ召喚! 水中モード用意!」


 UMEDA CONNECT + アルファデッキが実体化する。

 と、同時に松坂さくら、中山みね、水野つつ美がシンクロしてアイテム召喚した。


「今年の新作水着コレクション!」


 大丸梅田店では毎年夏に『三愛水着楽園』を期間限定で展開している。日本一の売上を誇る全国展開の水着セレクトショップだ。

 松坂さくらは今年のイチオシ、シンプルなクロスデザインの赤いビキニを着用して登場した。

 赤いセルフレームメガネとの同色コーディネートもバッチリだ!


 阪急は日本一早い水着ファッションショーと銘打ち今年の新作水着の紹介を1月に行っていたほど、水着販売に力を入れている。

 かつては阪急イングスというスポーツ専門館を運営していたが、現在は増床した本店のクラブシーショアがメインの水着売場だ。

 海外リゾートホテルの水着ショップを思わせるハイグレードな品揃えが特徴だ。

 中山みねはトレンドカラーの白の、胸元のギャザーがエレガントなワンピースで登場した。


 西武は水着センターというド直球な名前の売場での展開で、浴衣とのコラボレーション売場が最近の傾向だったが、八尾西武は専門店街アリオ八尾と接続していることもあって、八尾西武で浴衣、アリオ八尾で水着と役割分担している。

 今回はシンクロパワーでアリオ八尾スイムウェアコレクションから黄色いギャル系ビキニを召喚して登場だ!このエロ可愛さは多分エメ○ィールのだな!

 ピチピチだぞ水野つつ美!


 福島ミカゲはもともと生鮮制服のため耐水仕様だ。今回はさらに鮮魚厨房用のゴム長スタイルである。

 時計売場のおねえさんはノーマルのままでなぜか水中OKである。

 あれか?時計の防水修理するからか?スキルの対応幅広いな!


 松坂さくらが一人乗りゴムボートを5人分召喚する。

 ゴムボートといって侮るなかれ。

 船体自体が浮力を有するゴムボート(インフレータブルボート)はFRPやアルミなどの小型ボートよりも遥かに安定性が高く取り回しが楽だ。

 空気室が細かく分割されており、少々穴が空いても沈まない構造だ。ラフな水域では最強のボートである。

 ついでに船外機(モーター)も召喚し機動性を高める。浮力安定性のため、サイズに見合わぬ高馬力の船外機(モーター)を取り付けられるのもゴムボートの長所だ。

 羊の皮を被った狼である。

 ボートは赤、白、黄、黒、青の5色。

 水着が松坂さくらが赤、中山みねが白、水野つつ美が黄、福島ミカゲが黒いゴム長、時計売場が青い制服ね。

 あー、これからの展開わかったわー。

 デパガたちはそれぞれのウェアと同じ色のボートに乗り込んで、ポーズを取る。


「スイムレッド!松坂さくら」

「スイムホワイト!中山みね」

「スイムイエロー!水野つつ美」

「スイムブラック!福島ミカゲ」

「スイムブルー!時計売場のおねえさん」


 名前ないのツラいな。


「5人揃って!ひみつ船体スイメンジャー!!」


 ドッカーンと背後で5色の花火が上がった。

 いや、俺期待してたけどね。そのまんまじゃん、とはフミトの感想であったが、これも君のイマジネーションからなんだよ。

 そこんとこわかってる?


 サメのヒレが空中に躍り上がった。

 その瞬間、単なる魚ではないことが人型のシルエットでわかった。

 水棲人(マーマン)

 胴体はほぼサメだが、筋肉質の手足を持つ半魚人の一族だ。背中にサメと同様一本の背びれを持っている。

 目の前にいるのは8体だ。ハルピュイアの時より数が少ないが、それだけ手強いということか。

 それとも水中に増援がいるのか。

 スイメンジャーもボートを巧みに操りながらマーマンに迫る。

 マーマンは三叉の槍(トライデント)で攻撃してきた。ポセイドンかよ。

 知能が高いらしく陣形を組んで攻めてくる。

 空中と水中を交互に入れ替わりながら槍を繰り出してくる。

 うむ、やはり手強い。


 福島ミカゲ(スイムブラック)が先行してマグロ包丁で応戦する。

 レベルが上がっている分だけ動きが早いぞ!

 水面から出たところを狙って槍ごと薙ぎ払い真っ二つにする。

 1匹!

 2匹!

 あまりに鮮やかな手並みのため上下にわかれた二匹はしばらくそのまま泳いでいた。

 はっと自分が両断されていることに気づいて慌てて下半身をくっつけようとするが、間違えて違う下半身をつけようとしてそのまま昇天していった。


 松坂さくら(スイムレッド)はスタンガンを召喚して水中に投げ入れた。

 バッシーン!と稲妻が走って3匹のマーマンがぷかっと浮かび上がってきた。

 トライデントに導雷したらしく、腕が黒焦げだ。

 こっちはゴムボート。絶縁ばっちりである。


 水野つつ美(スイムイエロー)は謎の呪文を唱えた。


「不思議大好き」


 天地が逆転し、水中に潜んでいたはずのマーマン3匹がなぜか空中を『上に向かって』落下していき、天井に『落ちて』潰れた。


 完・全・勝・利!


「まだにゃ!このパーティーの主力は水中にいるにゃ!」


 アリューナが警告を言い終わる前に巨大な影がスイメンジャーを襲った。

 ゴムボートが翻弄される。

 先陣のミカゲがマグロ包丁を振るうが、ボキッと折れた。

 さくらがスタンガンをレベルマックスで放電するが、影の勢いは止まらない。


 原色で彩られた鋭角な円錐が見えた。差し渡し10メートルはあろうか。

 スイメンジャーと高速ですれ違うと、反転、ふたたびゴムボートへ突進する。

 フミトにも影の全貌が見えた。

 円錐の殻からイカのような触手と目が見える。

 直角貝だ!

 古生代のオウムガイの先祖、巻かない真っ直ぐな貝殻を持つ直角貝。

 そのなかでも最大種のカメロケラスか!?

 いや、ゲーム的にはノーチラスと呼ぶのが一般的か?

 しかしあのミカゲの包丁がとおらないって、どんだけ硬いんだよこいつの貝殻!

 さくらの電気も通さないし!


 ノーチラスがゴムボートに迫る。

 最後尾は回復専任で後方支援特化の時計売場のおねえさん(スイムブルー)だ。防御(VIT)値最低だ。まずいぞ!


「クロックアップ」


 時計売場のおねえさん視点で世界の速度がゆっくりになった。

 スローで迫ってくるノーチラスを余裕で避ける。

 時計の修理スキル、なかなかに奥深い。N(ノーマル)カードといえどポテンシャル侮れないな!


 先頭のミカゲ(ブラック)はブツブツ言いながら得物を蟹の甲羅割り用のナタに持ち替えていた。

 なんかめちゃ怖いぞミカゲ!

 包丁折られてマジギレしてるのか!

 あかん。ノーチラス。おまえはもう死んでいる。


 中山みね(スイムホワイト)ミカゲ(ブラック)を制した。


「夏休みスペシャル、ようこそ古代の海へ!」


 突如オルドビス紀の海洋世界が広がり、ウミサソリが、三葉虫が、オウムガイの大群が現れた。

 ノーチラスが大喜びで捕食をはじめる。

 もちろんみね(ホワイト)の幻覚だ。

 動きが止まったところをミカゲ(ブラック)がナタで叩き割ろうとする。

 が、今度はさくら(レッド)が制した。

 ぶーたれるミカゲ(ブラック)。ちょっとかわいいぞ。

 さくら(レッド)はセカンドスキル『懐柔』を使った。


「ワタシと契約して召喚獣になってよ。ウィンウィンでしょ。よろしくね」


 餌を大量にもらえる(と騙されている)ノーチラスはあっさり寝返り、さくら(レッド)の下僕となった。

 さくら(レッド)は小さなカプセルを取り出すと、ノーチラスはその中に吸い込まれて消えた。

 カプ○ル怪獣かよ!


 こんどこそ勝利だ。

 しかし、今のは中ボスではないのか?


「ちがうにゃ。中ボスは別にいるにゃ」


 なかなか敵が強くなってきたな。

 こちらも強化しているので、それほど苦戦はしないが、物理攻撃だけでは勝てない。

 残MPに注意しながら戦う必要があるな。

 まあ、いざとなったらコテージで回復できるし。

 …って、あれ?そうか水中でコテージは広げられないぞ。まずいかも。


 階層クリアまで後何戦!?

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