第4話 踊れ!おねえサンバ!(挿し絵あり)
読み返すといろいろ間違ってるところがあって戻ってビミョウに修正しつつも、とにかく作者自身も先を急ぎたいので多少荒削りですがガンガン話を進めていくことにします。
とりあえずこのはじまりのダンジョンクリアまではマメに更新するつもりです。
第三層に転移した。
第二層は黄色がかっていたが、ここはほぼ橙色だ。
第二層よりも天井が高く、奥行きもある。入門モードから本格的なダンジョンにグレードアップしたようだ。
「そうにゃ、フミトどの。第二層まではモンスター1パーティ倒すとクリア扱いだったけど、このフロアはボスを倒さないとクリアにならないにゃ」
聞いてないよおい、ってこの層で終わりってことか?
「違うにゃ。いわゆる中ボスだにゃ。ダンジョンクリアはまだ先にゃ」
なるほど。たしかに最初はビビったけど、能力発動してデパガカードゲットした後は、歯ごたえがないままだもんな。
これでクリアだと訓練にはならんよな。
しかし、ということはこの層では必ず連戦になるな。
「アリューナ、ダンジョンから出るのはクリアした後だといったが、途中で上の層に戻るのはできるのか?」
「モンスターの気配がない状態なら戻れるにゃ。ロックオンされていると無理だにゃ」
戦闘時、転移魔法を利用した緊急脱出は出来ないというルールか。割と辛めの設定だな。
「アリューナ、今モンスターの気配はあるか?」
「まだないにゃ」
「よし」
フミトはふと思いついて、アリューナからキーボードを引き出した。
「ふみゃっ!」
突然PCモードにされてアリューナがエロい声を上げる。
「ちょっとフミトどの!キーボード使うなら使うと言ってにゃ!」
「時間ねーんだよ。検索:フミトの能力…っと」
検索窓に打ち込むと、『該当項目無し:類義→デパートガール・コレクション』と出た。
リンクをクリックする。
辞典ページに飛んだ。
『デパートガール・コレクション』
勇者『水島フミト』の対邪神固有能力。
デパートガール(通称デパガ)が描かれたカードを使ってバトルする。
カードは現在星4つ1種、星3つ2種、星2つ3種、星1つ11種が判明している。
星の数が多いほど希少性が高く、能力が高い。
…
カードは力や知性という基礎的な能力の他に、カード自体の特殊能力ともいえるスキルとアビリティを持つ。
スキルはバトルにおいて能動的に使用する力、たとえば武器を召喚する、敵を混乱させるなどの技のことであり、
アビリティは常時発現している力、たとえばステルス性能やパーティーの鼓舞などの特性のことである。
これらの能力は、カードを育成することにより値を増やしたり、効果を拡大することができる。
ただし育成には上限があり、レアリティが高いほどこの上限も高い。
また限界突破を行うことによって、上限値自体も少し伸ばすことができる。
…
カードを最大5枚選抜し組み合わせたものをデッキと呼ぶ。
デッキにセットされたカードは、同じデパートどうし、食品売場どうし、同じエリアどうしなどの関連性により相互に能力が高まる。
カードにはコストがあり、デッキは決められたコスト内でしか組めない。
レアリティの高いカードはコストも高いため、強力なカードだけでデッキを組むことは難しい。
基礎能力やスキル、アビリティの特性と、カード相互の関連性、また敵の特徴などを考慮した戦略的なデッキ作成が勝利の鍵だ。
会敵時はデッキからデパートガールが実体化しフミトの包括的指示のもとで自律的にバトルを行う。
…
(このページは現在執筆中のβ版につき今後の新情報により更新される可能性があります)
カードのパラメーターについて(未作成のページ)
カードの育成について(未作成のページ)
ガチャについて(未作成のページ)
スキルについて(未作成のページ)
アビリティについて(未作成のページ)
…
ううむ、神のネットワークもつかえんぞ!ほぼ今までに判明したことしか書いてないじゃないか!
ってそりゃそうか、固有能力なんだからまだ神様にも知られていないわけだ。
わかったのは能力の名前だけだな。
『デパートガール・コレクション』の能力か。
でも名前がつくとそれはそれでなんかちょっとわくわくするな。
コレクションというが、カードは一体何種類くらいあるんだろうな。
たしか全国百貨店の店舗数が220店舗くらいだから、それぞれに10種くらいあるとしても2000種から2500種ぐらいか…。
すげーな!全部集めたら一大ハーレムじゃん!
ちょっとポイントがずれてるぞフミト。
フミトはキーボードをアリューナの中にさっと引っ込めた。
「あんっ」
アリューナがまた嬌声を上げたが、すぐ警告に切り替える。
「き、来たにゃ」
「ああ、俺も気配感じた!デッキ召喚!」
SR、R、Rのカードが拡大し、デパートガール3人が実体化する。
大丸梅田店テナント担当『松坂さくら』SR。
ソバージュヘアに赤いセルフレームメガネ。黒のタイトミニにジャケット、白ワイシャツという出で立ちで、できるオフィスレディという印象の美人さんだ。
これまでむしろ競合していた専門店と百貨店を現場レベルで融合させ一体として運営するのは一筋縄ではいかなかっただろう。
文化の違う業態をまとめあげ成功させた経験と自信が、風格となって醸しだされていた。
阪急百貨店うめだ本店祝祭広場担当『中山みね』R。
こちらは黒のパンツスーツスタイルだ。褐色に灼けた肌とかなり明るい茶髪というデパガには珍しいスタイルだが、ギャルっぽい印象ではなくスポーティな大人の女性というところだ。
服装はシンプルなスーツスタイルだが、胸のあたりはバッツンバッツンにタイトで、アリューナ並のボッキュンボディがその下に隠されているようだ。
エロかっこいいぞ中山みね!
阪神百貨店地下食品売場『福島ミカゲ』R。
第ニ層での戦闘時と同じく白いシャツに紺色のエプロンスカート、三角巾という食品売場の制服姿のツリ目美女だ。
さくらやみねに比べると小柄な分フィジカル高そうである。というか実際高いし。
第二層での8体瞬殺・解体ワザはモンスターが可哀想になるほど一方的だった。その後の焼肉は旨かったけど。
さすがは食の阪神百貨店である。
敵はかたまって飛んできた。
飛行タイプのモンスター、ハルピュイアの群れだ。女の上半身を持つ人間サイズの鳥の怪物だ。
5、10、いや20匹ぐらいいるか。ダンジョンの天井スレスレを集団でこちらに向かってくる。
「げ~~~っ」
ハルピュイアたちが奇声を上げると、旋風が舞った。ががががっと地面に次々亀裂が入り急速に近づく。かまいたちのように物理的な攻撃力を持つ嵐だ。
松坂さくらがパーティの先頭に立ち、片手を振る。空間に巨大なテントが出現した。
4本足に布の屋根が貼られたよくあるタープタイプではなく、弓状のフレームを組み合わせ流線型のドームを形成する曲面テントだ。
フミトら含め全員をカバーするようにふわりと着地させ、すばやくペグを打ち固定する。
次の瞬間ハルピュイアの旋風がパーティを襲うが、テントが受け流す。パーティの周囲はまるでそよ風にゆれる花園のようにおだやかだ。
テントの曲面がレースマシンのスタビライザーのように風をコントロールしているのだ。
風によって下向きの力が加わり、テントは地面に押し付けられさらに強固になる。
おお、これが絶対飛ばないテントというやつか!なんかネットで見たことあるぞハンズで売ってたのかすげー!
旋風では無理と悟ったハルピュイアが急降下してくる。直接攻撃をかけてくる気だ。
テントは半透明なので敵の動きがよくわかるが、本体攻撃は風のようには受け流せないぞどうする?
さくらが再び片手を振る。テントの周囲を取り囲むようにバーベキューコンロが出現した。ざっと10器。
コンロ内では自動的に備長炭と高性能燃料がセットされ、チャッカマンで点火する。
あっという間に火が回り、備長炭が赤熱、そして某宇宙戦艦アニメの煙突ミサイルのようにコンロから垂直に連射された。
ばしゅばしゅばしゅばしゅー!
これこそ今週のビックリドッキリメカじゃん!あのセリフゆーなら今だよアリューナ。
降下してきたハルピュイアどもに次々着弾、ハルピュイアは一瞬で炎に包まれる。迎撃ミサイルもとい迎撃備長炭の高熱恐るべし。
焼かれたハルピュイアはコンロに落下、そのままこんがりローストされていく。
ピタ○ラスイッチなみのあれよあれよ感である。
今度は焼き鳥か。焼肉喰ったばっかなんだけどな。
とかフミトはのんきに観戦しているが、まだハルピュイアは半数近く残っているぞ。油断するな!
松坂さくらが中山みねとハイタッチして前後入れ替わる。選手交代。
みねはニッと微笑むと、スーツをばっと脱いだ。
痴女?
フミトは思わず赤面したがもちろんそうではない。スーツの下はサンバの衣装だった。
まあたしかにビキニの日焼けあとのさらに内側のわずかな部分しか隠していないタンガスタイルはかなり際どい。
しかも予想どおりのナイスバディである。本場ブラジル美女ともタメを張れそうだ。
みねがホイッスルを吹くと、陽気なサンバのリズムがどこからか流れだし、華麗にステップを踏む。
ピピピッピッピ ピピピッピッピ。
「アミーゴ!レッツ・ダンス!」
フミトもついつい音楽に合わせてからだを動かしてしまう。ダンスなんて幼稚園でしかしたことないのに。
横にいるアリューナはもうノリノリだ。ケモ娘モードがそもそも陽性キャラなんだろうが、みねと競うレベルでサンバを踊っている。
おっぱいバインバインさせながら。
生き残っていたハルピュイアたちもいつの間にかみねのバックダンサーのようになって踊っていた。
めっちゃ笑顔で。
うーむ、サンバ恐るべし。
ってフミトの感想こればっかだが、なにせヒッキー、世間をよく知らないのではじめて見聞きすることが多いのだ。
本質的に素直なやつなんだとお許し頂きたい。
それに、サンバの力というより中山みねのスキル『混乱』が発動してるせいなんだけどね。全員トランス状態になってるのは。
テントいつの間にか消えているな。選手交代した時にさくらが片付けたんだろう。
それにしてもなんでサンバなんだ?
あそうか、もうすぐリオデジャネイロ五輪か。
体はったイベント屋魂だな中山みね!
揺れるおっぱい、飛び散る汗。すける薄衣。エロいタンガスタイル。
揺れるおっぱい。揺れるおっぱい。揺れるおっぱい。めっちゃ笑顔のハルピュイア。揺れるおっぱい。
フミトはクラクラしてきた。
福島ミカゲがハルピュイアの背後に立っていた。例のマグロ包丁を持って。
踊るハルピュイアたちの首あたりに光が一瞬、端から端まで走った。
ハルピュイアの首が胴から離れた。
めっちゃ笑顔のままで。
完・全・勝・利。
福島ミカゲは屠殺したハルピュイアの羽毛をむしると、内臓を取り出し胸肉もも肉手羽先手羽元手羽中と部位ごとに分け例のHOSHIZAKI冷凍ボックスに収納した。
コンロで焼かれていた分は、羽毛ついたまま焼いたら臭くて食べられないと廃棄処分を宣言した。
松坂さくらがちょっとシュンとしていたので、しかたないよ食品担当じゃないんだからとフミトがフォローしたら「フミトさま~」とかいいながら半泣きでギュッて抱きつかれたので心臓バクバクになった。
見た目は子ども頭脳はおっさんのくせにチョロすぎるぞフミト。
おまけに中山みねも福島ミカゲもなんか羨ましそうかつ妬ましそうに見てるぞ。
大丈夫か、フミト?
女性の扱いは気をつけろよ。チームワーク乱したら大変だ。
って無理か経験皆無接触禁止のドーテー王だからな。
戦闘結果を確認したが、カードはレベルアップしていなかった。
20匹強を倒してもこの結果ということは、戦闘でのカード強化はおそらくできない。やはりカードどうしの掛け合わせじゃないとダメなんだろう。
ドロップアイテムも今回は大量の鶏肉のほかは目立ったものはなかった。
ガチャ券も出なかった。
階層クリアじゃないからだろうとフミトは思った。
UMEDAデッキの三人の現在ステータスは、HPはノーダメだったので初期値のままだが、MPが大きく減っていた。
MPは何かしらの行動を起こすときに消費されるポイントである。
魔法ポイントとよく混同されるが、魔法ではない行動に対しても消費されるのがMPである。
高レアカードは高能力だがコストが高く燃費も悪い。
この先雑魚と何回か戦うことになるなら、中ボスまでUMEDAデッキは温存すべきだ。MP切れでの戦闘不能は最も避けたい。
フミトは少し考えて、デッキを入れ替えた。
駅前デパートの生活雑貨売場のおねえさん:UC。
駅前デパートのインフォメーションのおねえさん:UC。
駅前デパートの外資系化粧品売場のおねえさん:UC。
駅前デパートのアクセサリー売場のおねえさん:N。
駅前デパートのスポーツ用品売場のおねえさん:N。
コスト52の『駅前デパートデッキ』である。
飛行モンスターのハルピュイアには飛び道具が必要だ。
転ばし技の野菜売場や体術系の私服警備員では対応が難しそうだ。催事場の仮囲いも風には弱そうだし。
だが、生活雑貨のおねえさんの6客カトラリー攻撃はそこそこの射程があった。
あとはレアリティで選んで、インフォと化粧品は百貨店のグランドフロアにあるものだし、さらに化粧品とアクセサリーの買いまわり性の高さ、そしていかにも飛び道具が豊富そうなスポーツ用品売場をチョイスした。
もちろんすべて駅前デパートカードだから、全体も関連性が高い。
デッキにセットすると予想どおり5枚全体とインフォ、化粧品、アクセサリーの3枚、そしてなぜかアクセサリーと生活雑貨の2枚も輝く囲みが現れた。
そういえば、アクセサリーと生活雑貨って同じブランドが多かったな。コムサ・デ・モードとかジバンシーとかマタノアツコとか…
フミトはこのとき意識していなかったが、高レアカードを温存するということは裏を返せば低レアカードを捨て駒に使うということに等しい。
そして残酷な時間は、間近に迫っていた。