第10話 激闘!リヴァイアサン!(水着回その3)
ガンガン更新するといいつつペースが上がらなくて申し訳ないです。こちょこちょ前の話の間違いとかを直しながら進めてます。
クラゲを撃退してしばらく。
少しずつ、流れが速くなっているのにフミトは気づいた。
左右に岩場も現れ始めた。
岩はやがて増え、背が高くなる。
同時に湖の幅も狭まる。
前方に見えるのは天井までの絶壁だ。
今までは地底湖の彼方にあったこの層の構造がようやく近くに見えてきた。
大きなドーム状の空洞だ。
天井や崖は、赤色に染まっている。
フミトたちが進む一帯は、もはや地底湖とはいえず、川となった。
空洞の下にある地下渓谷だ。
川幅が狭まるにつれ、流れが早く、波しぶきが荒くなっていく。
フミトとアリューナの乗る球状の力場は波の影響をほとんど受けず穏やかに流れていくが、前方のスイメンジャーのボートはロディオのように飛び跳ねている。
が、さすがはひみつ船体。器用に岩場を避けながら、波に乗って危なげなく進んでいく。
さくらが召喚したインフレータブルボートの性能もあるのだろう。
だが、流れは大きく蛇行しはじめ、切り立った崖が右、左と次々ワイプインしてくる。
先が見通せず、崖の向こう側がどうなっているのか全くわからない。
水流は勢いをさらに増し、ボートは波に翻弄され常時スプラッシュマウ○テン状態だ。
マップなしでこのまま進むのは無謀にすぎる。
角を曲がったとたんに敵と鉢合わせする恐れもある。
岸辺を見つけていったん陸に上がろう。
フミトはそう考えた。
だが、岩と崖が続くのみでなかなかボートを着けられるような場所がない。
うーん、ロケットア○カーでもありゃなー。さすがにアニメの世界のアイテムは召喚のしようがないな…
お。
フミトは閃いた。
「さくら!パラグライダー召喚!」
「ラジャー!」
松坂さくらはパラグライダーを召喚、スイメンジャー各々のボートのテイルに固定した。
もちろん5色展開である。
勢いに乗ったボートの風圧でバッとパラグライダーが展開し、そのまま引っ張りあげた。
ボートが離水し並んで渓谷を飛ぶ。
フミトとアリューナも力場を制御して宙に浮かび、スイメンジャーを追う。
空中なので何も見えないが、球状のフィールドに覆われたままだ。
座っているフミトからはまるい底の感覚はそのままだった。
先頭はミカゲに代わってみねだ。
隊列を率いて、曲がりくねった渓谷を危なげなく飛んで行く。
サンバカーニバルといい、こういうリズミカルでバランス感覚の必要なアクション系には強いなみね!
それにしても…
みねは胸元ギャザーの白いワンピース水着だったが、今はおなかの部分がクラゲの攻撃で破れモノキニのようになっている。
うむ、みねの褐色ボッキュンボディにはセパレーツのほうが似合うな!
さくらはクロスデザインの赤いビキニだったが、ストラップが片方ちぎれてワンショルダーになっている。
さらに背中側はおしりの上部に穴が開いてOバック状態だ。キワドイな。
つつ美はビキニのカップ部が破れてしまい、バストの真ん中を黄色い紐で結んだだけになっている。
上乳・下乳がむにゅっと絞り出されてちょっと痛々しいぞ。
時計売場のおねえさんは破れ制服に破れパンストだ。フェチだな。
ミカゲだけ服はノーダメージだった。ゴム長の耐久力半端ないな。
ボートであぐらかいて二本目のマグロ包丁の手入れに勤しんでいる。サムライか!
うーむ、眼福眼福(ミカゲ除く)。
さすが頭脳はおっさんなフミトである。
眼下の渓谷が唐突に終わった。
そして地底湖も終わっていた。
「なんじゃこりゃ?」
それは異様な光景だった。
渓谷の途切れた先には、比較的大きな湖が丸く広がっていた。
これが地底湖の果てだった。
ちょうど渓谷がダムよろしく水を堰き止めて出来た湖のように見えるが、そうすると流れが逆だ。
渓谷側から湖側に水が流れている理由。
それは、明らかだった。
湖の真ん中に巨大な穴が開いているのである。
そこに水が落ち込んでいるのだ。
大きな渦を描きながら。
洗面台に水を張って、栓を抜いた時のように。
フミトは知らないが、穴を持つ湖はいくつかある。
それこそダム穴とよばれるダムの水位調整用の人工の穴であったり、鍾乳洞等による天然の穴がある湖もいくつか発見されている。
だがこれは、穴に落ちていく水の量が桁外れだった。
でなければ、そもそも広大な地底湖全体に流れを生み出すほどにならない。
絶景といえば絶景だが、穴が一体どこまで深いのか、穴の先がどうなっているのか全くわからない。
落ち込んでいく莫大な水はどこにいくのだろう。
あのまま水上を進んでいたら、渦流に巻き込まれて一巻の終わりだったかもしれない。
「敵が来るにゃ!上から!ハルピュイアだにゃ!」
アリューナが警告した。
「迎撃戦だ!」
ハルピュイアの一団が上空から降下してきた。
さくらが備長炭ミサイルを召喚・射出する。
たちまち5,6匹を火だるまにするが、今回は数が多い。40匹以上はいるぞ。
総力をあげてかかってきた感じだ。
地底湖もこれで最後だし、この層ラストバトルかな?
ハルピュイアはパラグライダーに狙いを絞ってきていた。かまいたちで切り裂いて墜落させる気だ。
ミカゲが飛んだ!
両手に長大なマグロ包丁を握っている。体の前でクロスさせた格好でハルピュイアの先陣部隊に飛び込んだ。そして両手を広げて回転する。
ざん、ざん、ざん!
3回転半。左右で6匹のハルピュイアを屠ると、1匹を踏み台にしてさらにジャンプする。
今度は上下に腕を伸ばし、縦回転する。
トリッキーな動きでハルピュイアを翻弄し、4匹を唐竹割りにする。
が、その時には別のハルピュイアが左右からミカゲに迫っていた。
正面の先陣部隊はオトリか!
仲間を犠牲にしての必殺。そんな連携がハルピュイアに出来たとは。
ミカゲの反応速度も早かったが、ワンチャンスを狙ったハルピュイアの方が早かった。
左から迫るハルピュイアの首を飛ばすが、右からのハルピュイアがミカゲの左腋を鉤爪で深くえぐった。
鮮血が飛ぶ。
「なんの!」
その右のハルピュイアの脳天に右手のマグロ包丁を叩きこむが、その時はミカゲの背中側から別の1匹が急降下してきていた。
ミカゲの両肩を脚爪で掴み、そのままの勢いで湖の濁流に向けダイブしていく。
自分ごとミカゲを水面に叩き付ける気だ。
「クロックアップ」
時計売場のおねえさんが降下するミカゲにボートを寄せた。
ハルピュイアの脚爪を外してミカゲをボートに回収すると、ハルピュイアを蹴飛ばした。
そこで時間がふたたび正常に流れはじめた。
ハルピュイアは単独で濁流に突っ込み、そのまま湖の穴へと流されていった。
「修理」
ミカゲの肩と腋の傷が塞がる。
だが、回復は完全ではない。ミカゲは腕を振ってみるが、筋肉繊維や神経のダメージが抜けきっていないようだ。
動かすと痛みがあるし、ビミョウなレベルでタイミングがずれる。
Nカードの治癒レベルは応急処置というところか。
突然、湖上から何本ものトライデントが投擲された。
マーマンの群れだ。
この濁流の中で、正確にスイメンジャーのボートを襲ってくる。
こっちも数が多い。しかもグループに分かれて交代で槍を投げてくる。
統制された連続攻撃だ。
しかし、水棲人とはいえこの巨大な渦の中に潜むのは相当に危険なはずだ。
ハルピュイアも命を捨てて襲ってきた。
なぜ奴らはそうまでするのか?
おそらく…。
フミトは思う。
命令している奴がいる。モンスターに命を捨てさせるくらいの力を持つ奴が。
そいつがこの層のボスだ。
近くにいるはずだ。
どこだ?
残存ハルピュイアが上空からかまいたちを繰り出す。
上からハルピュイア、下からマーマンに挟撃されてスイメンジャーは防戦一方になりつつある。
パラグライダーやボートはすでに穴だらけだ。
さくらがダクトテープで穴をふさぎ続けるも、墜落は時間の問題のように思われた。
今までとは明らかに敵のレベルが違う。
組織だって行動しているうえに、捨て身で攻めてくる。
どちらか一方でも陣形を崩せればいいのだが…。
「出し惜しみなしだ!MP全開!」
フミトは叫んだ。
つつ美が不思議な呪文を使った。
「じぶん、新発見」
濁流の中に、巨大な影が現れた。
影は二重、三重に透けて重なっている。古いアナログテレビのゴーストのようだ。影全体に走査線も見える。
実体ではなく、水中に映し出された像のようだが、この姿は…
大きな赤ちゃんだ。
赤ちゃんのゴーストが無垢な笑みを浮かべながらマーマンたちに迫る。ちょっと怖いぞ。
虚像ゆえ渦の影響を受けずすいすいと近づいていく。
マーマンたちは巨大な赤ちゃんから本能的に逃げようとするが、渦の中で自由には動けない。
赤ちゃん像の中にマーマンの一群が取り込まれた。
その瞬間、マーマンたちははじかれたようにトライデントを捨て、渦から逃げ出し始めた。
まるで洗脳から解かれたように。
自分を取り戻したのか?
そういう技なのかこれ?
おお、つつ美やべーよ。
クールだよ。
マーマン陣営が崩れたのに乗じ、ハルピュイアにスイメンジャーが一斉攻撃をかける。
さくらの備長炭ミサイル、ミカゲの二刀流に、みねが『混乱』をかけ16倍に分身させる。
どれが本物かわからず迎撃できないまま、残存ハルピュイアたちがたちまち倒されていく。
その時。
マーマンを追い立てていた巨大赤ちゃんゴーストが、渦の穴に飲み込まれて消えた。
渦の中心が生き物のように赤ちゃんに寄っていた。
生き物のように?
湖の渦全体が盛り上がる。
そして渦の穴が屹立した。
穴じゃない、これは口だ。長い胴体の先に丸い大きな口がついていた。まるでホースの化け物だ。
その巨大な口が水を飲みこんでいたのだ。
渦を巻いていた正体が水上に現れる。
ホースは胴の半ばで太く、筋肉質となり、全身が金属の鱗でおおわれている。
それはとぐろを巻く超巨大なウミヘビだった。
長い胴体を空中に伸ばし、スイメンジャーのボートを襲う。
「これは海の竜、鋼鉄の鱗を持ちいかなる武器も通用しないといわれる無敵の怪物『リヴァイアサン』にゃ!この層のボスだにゃ!」
解説的にアリューナが叫ぶ。
おいおい、大概のゲームでラスボス級じゃないか?
なんではじまりのダンジョンごときでリヴァイアサンなんだよ!
『混乱』効果が持続しているミカゲ×16人が反転してリヴァイアサンの頭部を攻撃する。
リヴァイアサンは飲み込んだ莫大な水を口から放射した。
ミカゲの幻影の大半が水でかき消された。
だが、本物のミカゲはリヴァイアサンの喉元を狙って下から迫っていた。
そして二刀流でそぎ切りにする。
いや、するはずだった。
両手のマグロ包丁が粉々に砕けた。
喉元は最もやわらかい部位のはずだが、リヴァイアサンはそこすら硬い。ミカゲも本調子ではなかったが…。
リヴァイアサンは水流を細く絞り首を振った。
ミカゲは間一髪で避けたが、その後方にいた時計売場のおねえさんとつつ美のボートを細い水流が薙いだ。
すかっとボートが上下に切断された。
これはウォータージェットだ!
超高圧の水を用いてレーザーカッターのように物体を切るテクノロジーだが、リヴァイアサンって神話的怪物のくせにえらくハイテクだなあ。
とか感心している場合じゃない。
ウォータージェットはゴムはもちろん、人間だってすっぱりだ。
時計売場のおねえさんとつつ美はボートからパラグライダーを切り離し、それにつかまって飛んでいた。
だがこのままだと狙い撃ちだぞ。
さくらがノーチラスを召喚した。
リヴァイアサンの口めがけてロケットのように宙を飛ぶ。
リヴァイアサンがウォータージェットをノーチラスに向けた。円錐の殻を下から上に薙ぐ。
ノーチラスが左右に真っぷたつになった。
だが、勢いは止まらない。
避けられないとみたリヴァイアサンは口を大きく開けて半分ずつになったノーチラスを飲み込んだ。
口の中には無数の歯がびっしり何重にも生えていた。
裏返しになったトンネル掘削機みたいだ。
ノーチラスの硬い殻もひとたまりもあるまい。
リヴァイアサンの背中に隠れていたミカゲがその口に飛び込んだ。
両手にノーチラス戦で使えなかったカニの甲羅割り用の鉈を持って。
外からの攻撃は通らない。
だが、内からなら!
歯と歯の間をミカゲは走る。リヴァイアサンの口腔はデカすぎて、人間サイズからしたら隙間だらけだ。
ちょっと自分が虫歯菌になったみたいで、ヤだけどな。
余計なものを飲み込んだことを察したリヴァイアサンは、ふたたび莫大な水流を吐き、ミカゲを押し出そうとした。
しかし、その時にはミカゲは喉から鼻の穴に侵入していた。
さらに鼻奥の骨に鉈で穴をあけ頭蓋骨の内側に潜る。
骨も相当に固いが、金属の鱗でおおわれた表皮ほどではなかった。
硬膜に覆われたリヴァイアサンの脳がすぐ上にあった。
脳幹の位置を確認し、背骨に続く延髄部分を鉈で削ぐ。
太い神経の束がむき出しになった。
さらに束をより分け、何本かをぐいと引っ張る。
ミカゲの解剖学的知識はリヴァイアサンにも通用するのか?
外では。
莫大な水を吐き出した後、しばらくでたらめに悶えていたリヴァイアサンが突如動きを止め、ぎこちなく上半身を持ち上げ直上に向けウォータージェットを吐いた。
天井の岩盤がえぐられ、バラバラと岩塊がリヴァイアサンめがけて降ってくる。
この機を逃さず、つつ美が不思議な呪文を唱えた。
「不思議大好き」
落下する岩塊が加速した。重力定数を変化させたようだ。
岩塊は直下のリヴァイアサンの胴体に弾丸のように高速で打ち込まれる。
ぼこっ!ぼこっ!ぼこっ!
重い音が響く。
それでもリヴァイアサンの超硬質の鱗は貫けなかったが、内臓にはかなりのダメージが加わったように思われた。
さらにリヴァイアサンは壊れかけたおもちゃのような不自然な動きで、首を自身の胴体に向けた。
ウォータージェット!
しばらくはウォータージェットすら鱗にはじかれていたが、同じ場所を十数秒噴射しているうちに、とうとう表面が裂けた。
いったん穴ができると裂け目が大きく広がり、筋肉や骨も削がれて内臓がぼたぼたと溢れ出してきた。
だが、リヴァイアサンはデカい。このくらいでは致命傷とはいえない。
さくらが裂け目に備長炭ミサイルを叩き込む。
内臓が焼け、ちょっと香ばしい匂いが広がるが、それも一部にしか過ぎない。
みねはこの間につつ美と時計売場のおねえさんを誘導して自分のボートに回収した。
支援系の3人は直接攻撃力が低い。とりあえず後退だ。
リヴァイアサンはさらに首を深く曲げ、自分の喉にウォータージェットを当てた。
胴体よりはかなり細い場所だ。
ここも最初は鱗にはじかれたが、やがて貫通した。左右に傷をえぐる。
ごばあっと切り口から水があふれ出し、かわりにウォータージェットが止んだ。
ホースの途中をカッターで切った感じだ。蛇口機能を失ったので腹に貯めた湖の水が喉の裂け目から噴き出していく。
あたり一面、大雨のように降り注ぐ。スコールだな。リヴァイアサンの周りにどんどん水が溜まっていく。
切り口から人影がのぞいた。ミカゲだ。
大放水の傍らでにまっと笑ってピースサイン。
さくらとみねがボートから飛んだ。
いつの間にか黄色と青のパラグライダーを装備している。さっき回収したつつ美と時計売場のおねえさんがつけていたヤツだ。
器用に放水を避けながらリヴァイアサンに近づき、ミカゲに手を伸ばす。
ミカゲも両手を伸ばす。
三人の腕が相互に組まれた。
「UMEDA CONNECT!」
赤い光がリヴァイアサン内部で光った。
続いて、リヴァイアサンの胴体が膨張する。
胴の裂け目が猛烈な勢いで全身に広がり、赤い光が漏れ、そして爆散した。
巨大な雪だるまがリヴァイアサンがいた場所にいた。
第三層のドラゴン戦の時の10倍以上の大きさだ。
リヴァイアサンの呑み込んだ水を氷に変えて巨大化し、内部から破壊したのだ。
リヴァイアサンは、切れた首先だけを残して木端微塵になっていた。
胴を失って落ちる首先をスノーマンが受け止めた。
さくら、みねがミカゲの手を引き、空中へと飛ぶ。
それを見届けるとスノーマンはリヴァイアサンの首先を握り潰し、そして消えた。
あとにはおだやかな湖が残った。
勝利!
ステータスを見ると、みね、つつ美、時計売場のおねえさんのMPがほぼ0になっていた。
さくらもかなり減っていたが、そこは限界突破したSR+1。絶対値が大きかった。
ミカゲは比較的残MPには余裕があった。やはり物理攻撃はMP消費が少なくてすむ。
フミトは残った三体のボートを着水させ、並べてひもで縛った。
それを土台にして、さくらにコテージを召喚させた。
水上小屋だ。
おお、なんか東南アジアにこういうのあるな。家船って言ったっけ?
「おやすみなさーい」
スイメンジャーたちをコテージで休ませる一方、アリューナにリザルトを照会させた。
レアアイテムドロップ:リヴァイアサンの卵 売却不可
アイテムドロップ:リヴァイアサンのデッキ 売却不可
宝箱ドロップ:強化の書LV3 4枚 売却不可
討伐クレジット:15600
ガチャPT:210
ガチャチケット:SR確定チケット 1枚
おっSR確定チケットとはいいな。
レアアイテムの『リヴァイアサンの卵』ってなんだ?
食べられるのか?




