豚の家族
ある森の中に、豚の親子が住んでいました。
ある日の夜、ドアをこんこんとたたく音がしました。誰かと思ってドアをあけるとそこには(心優しい無知で純粋な)人間の青年が立っていました。
「すいません・・・私は道に迷ってしまってもう何日も歩きっぱなしで疲れています。今夜一晩だけでもかまいませんので、泊めていただけませんか?」
豚の両親は迷いましたが、一晩だけならという約束で泊めてあげることにしました。
人間は恐ろしい生き物です。断ると、何をされるか分からないと思ったからです。
人間は驚くほどよく眠りました。一晩という約束だったのに二晩も眠り続け、翌朝目が覚めると爽やかな笑顔でいいました。
「本当によく眠れました。泊めてくださってありがとうございます。それにしてもお腹が空いたな」
豚たちは慌てました。人間にとって豚は最もポピュラーな捕食対象です。
豚たちは今朝焼いたばかりパンと、摘んできたばかりのリンゴを差し出しました。
「こんなに良くしてくれてありがとう」人間は笑顔でそう言いました。
しかし、豚たちは知っていました。人間は表面的な態度とは全く逆の事を考えている生き物だと教えられてきたからです。人間はとてもずる賢く、いつでも、世界で偉いのは人間だと思っていると。
仲間達が殺されるのを何度もみてきましたから、信用してはいけないのです。
朝食を済ました(心優しい無知で純粋な)人間は、豚の一家に何かお礼をしたいと思いました。
そういうば、ここから少し行った先にドングリが落ちていたな。豚というのはドングリが好きらしいから集めてプレゼントしようと思いました。
ドングリを拾うことに夢中になりすぎてすっかりあたりは暗くなってしまいました。
「あなた達にお礼がしたくて、ドングリを集めました。どうぞ食べてください。しかし、あまりに夢中になりすぎて、あたりはすっかり暗くなってしまいました。もう一泊だけ泊めていただけませんか?」
豚の一家は了承しました。
「こんなに美味しそうなドングリをいただいたのですから、今から、腕によりをかけて料理します。是非食べていってください。」
と母豚は言いましたが、心の中で何て恐ろしい人間だと思いました。
私たちがイベリコ豚の血統だと知っていてドングリを食べさせようとするなんて・・・・
それにしても無知な人間ね。私たちはドングリ以外のものを食べて育ったから最高級のイベリコ豚にはなれないのに・・・・。
豚たちは気づいていませんでしたが、(心優しい無知で純粋な)青年はイベリコ豚などという種類などのことは知りませんでした。親切心でドングリを拾ってプレゼントしたのです。
母豚は料理に毒を入れ、人間に差し出しました。
人間は嬉しそうに「美味しいです」と食べました。
実際のところ変な味がすると思ったのですが、せっかく腕によりをかけて作ってくれたのだからと、(心優しい無知で純粋な)青年は全部平らげました。
それから数分後、(心優しい無知で純粋な)青年は息を引き取りました。
それから1年がたちました。
豚の夫婦にはまた子供が生まれ家族はますます賑やかになりました。
豚の一家の家の周りには、なぜか大きなドングリの木が生え、沢山の実を落としました。
家族はそれを拾って食べました。
生まれたばかりの子供達はドングリばかり食べていたので最高級のイベリコ豚となりました。
そして、(心優しい無知で純粋な)青年の兄にたまたま、狩られ、食用として人間に美味しく食べられました。
おしまい。
※イベリコ豚についての見解が間違っていたらすいません・・・。