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一話 誘拐

スポーツと縁がなかったことは認めよう。だけども決してスポーツが嫌いという事ではないのだ。ただただ避けてきただけなんだ。私自身底まで運動神経がいいほうではないしそんなにスポーツが楽しいと心の底から思ったことなんて生まれてきてから一回もない。だからこそ高校に入ってから考えたんだろう。このままじゃだめだと。

だけどもメジャーなスポーツ。サッカー、野球、バスケットボールにバレーボールなんてやったって上には上がいる。その中でだったら僕は無能な役割として上位に行ったって補欠どまりだろう。だけどももしあまり有名でないスポーツがあるんだったらもしかしたらこの私が全国を狙えるのではないかと思ったんだ。そんな甘えなのか欲望なのかわからない考えのもと高校入学したんだ。

入学直後に配られる部活動勧誘のチラシはどの運動部も有名なものばかり。はっきり言ってこんなチラシなんか配らなくとも行くやつは大勢いるだろう。どこかにあまり有名じゃない部活動はあるだろうか。入学説明会では部活動の紹介はされていないので部活動についてはチラシや自分で探すしかなかった。ちょっとした冒険者のような気持になり校舎内を徘徊しているととてつもなく暗い廊下を見つけた。恐る恐る入ってみるとそこは旧校舎、今は部活動等となっている場所だった。とりあえず言っておこうと思うが今の時間は放課後。そこらへんの節度はしっかりと守っているつもりだ。

廊下を進んでいくと空気が澱んでいる空間を見つけた。ただ臭いなどはなく、厳密にいうと澱んでいるというより重い空気だった。私はその空間に足を止め恐る恐る部室の名前を見た。

「・・・セパタクロー部?」

セパタクロー?なんだそれは。スポーツっぽい名前だけどなんだろうか。そう思った好奇心が私の頭によぎった、その時だった。

「ようこそわが部室へ」

少し低い声が後ろで響いた。そして次の瞬間頭に強烈な痛みを覚え気を失ったんだ。

・・・・・・・

・・・・

・・・

・・

目が覚めると薄暗い空間にいた。床にはそこらじゅうに不思議な形のボールが転がっていた。

「大丈夫かい?」

さっきの低い声がまた聞こえた。しかしさっきとは違って少し明るかった。

「いや、さっきは本当にごめんね」

「いえ、別に大丈夫ですけど何であんなことしたんですか?」

簡単に言おう。普通なら逃げ出す状況だと思うが私はすでに正気を忘れてしまっていて普通の対応ができなくなってしまっていたのだ。

「いやー、ね。さっきさ、セパタクロー部?って言ってたじゃん」

「はい」

「だからさ入部希望者かなぁって思ってちょっと強引だけど連れてきたんだけど・・・・。君セパタクローに興味ない?」

すごいにやけている。

「・・・・ごめんなさい」

「そうか・・・・。いやいいんだよ僕が悪いんだ。ただ、さっきのこと誰にも言わないでくれるかな?」

「いやそういう事じゃなくて、セパタクローっていうものを知らないので興味とか枠以前の問題なんですよ」

「あっ!そういう意味のごめんなさいね。あっOK、OK。えーでもなぁ・・・」

「でもな?」

「うち、部員俺だけなんだよね」

「えっ」

「部員俺だけなんだよ。だからさ、ビデオでもいいかい?」

「あっ、はい」

「そういえば名前聞いてないし教えてもなかったね。俺の名前は寺野竜也、2年生。君の名前は?」

「名前は川又雅典です。一年です」

「そうか!そうかそうか・・・・。よし」

「?」

「まぁいいやとりあえずビデオを見ようか」

「・・・はい」

寺野先輩はなんだかテンションが高いな。なんかすごくウキウキしている声のトーンだ。

「川田君。今から君に見せるのビデオは2011年に初めて開催されたワールドカップの決勝戦さ」

「はぁ」

「どこの国が決勝に行ったと思う?」

「アメリカとかですか?」

「ふふっ。ありがとう、期待どおりの回答だよ」

「?」

寺野先輩は不敵な笑顔を浮かべている。そして深呼吸してから言ったんだ。

「セパタクローはマイナースポーツだ。サッカー、野球、バスケ、ゴルフやバレーボールと違って競技人口が少ない」

「はい」

「セパタクローが生まれた国がどこか知ってるかい?」

「知りません」

「東南アジアのタイと言われている」

「はぁ・・・」

「だから決勝戦に出場したのは東南アジアのタイとマレーシア。まだまだ人口も少ないしもしかしたら僕たちが世界を狙えるかもしれないんだよ!さぁ共に目指そうまずは全国制覇を!!」

すごい笑顔で言っている行っていることはむちゃくちゃだ。何なんだ。

「寺野先輩・・・・とりあえずビデオ見ましょうよ」

「・・・・そうだね」

ようやく寺野先輩が落ち着いた。興奮すると止められない人だな。


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