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闘うカメさん  作者: 宮月
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5.策士黒ウサギの勝利?

この一ヶ月、ウサギさんは事ある毎に、いや、何もなくても、私を引っ張り回し、連れ回し、愛を囁き…。

とにかく色々な手を使い、私との距離を縮めていった。


 朝、会社に行こうと家を出ると、見慣れない車が止まっている。

『一緒に会社に行こうね。今日から毎日。なるべく二人の時間が欲しいから。』とか言いながら、控えめに(?)遠慮する私を車に連れ込んで、一緒に出社。

から始まり、

就業時間終了のチャイムが鳴ると同時に、私の部署にウサギさんが出没。残業有無を確認後、一緒に帰宅。

多分、この出社と帰宅を一緒にする行為は、会社に『特別な』いや『仲の良い恋人』だと勘違いを広めるために行われていたのだろうと、冷静になると理解出来る。

その後、家まで送ってくれ、たまには夕食を共にして、私の両親も陥落させた。

この手も実に鮮やかだ。計算しつくされている。

手土産を持参。それも両親や兄達の好物だ。

母の料理や外見の細かい変化、とにかく小さな事も褒め称え、気分を良くさせる。

私至上主義の父には、私の素晴らしさを(何処にあるのかわからないが、勘違いかと思うモノも多々あったが)褒めちぎり、自分がどれだけ愛しているかなどを熱く語っていた。

聞いている私が、何度穴に埋まって、そのまま一生の眠りに付きたいと思った事か…。


 休日には、私の好きそうな場所に連れて行ってくれ、それはそれは紳士的に、エスコートしてくれた。

車のドアの開閉はもちろん、道路を歩く時は車道側を陣取り、人混みでは迷子や人とぶつからないようにと細かい気を遣いながら手を繋ぎ誘導してくれた。他にももろもろあるが、ここに記するには多過ぎるのでやめておこう。

これが計算の上の行為だとしても、絆されてしまうのは仕方がないだろう。…多分。

だって、私の好きなゲームの愛され主人公にも負けない経験だったんだもん…。


そんなウサギさんの行動で、私の恐怖心も薄らぎ、少なくても信用出来る気遣い上手な人という印象が私の中に出来上がったのだった。恋愛としてはよくわからないが、好意を持てる人であると植えつけられたのだった。



「へ?」

 なんて回想に浸っていたが、どうして、私はこんな格好をしているのだろう?


 今日は、ウサギさんと出会って丁度一ヶ月経つ、大安吉日の土曜日である。

いつもより早い朝七時に迎えに来たウサギさんに連れ出され、気付いたら大きなホテルの前である。

「あの、ウサギさん?」

「結婚前提のお付き合いは一ヶ月の約束だよね?で、今日で一ヶ月。その間に断られていないのだから、結婚は了承されたんだよね。なので、さっさと身内だけの結婚式をしてしまおうと予約しておいたんだ。」

「へ?」

「改めて、友人や会社関係の人を呼んで披露宴をするから、そのヘンの心配はいらないよ。だって、仕方がないじゃないか。俺が少しでも早く和亀と結婚したかったんだから。」

「えぇっと?」

 あまりの事に思考がストップ状態だ。が、暢気にしている暇はないはずだ。頼む、私の頭よ、動け。

「あっ、もちろん。ウェディングドレスは和亀に似合いそうな物を俺が選んでおいたから、間違いはないよ。披露宴の時には和亀の意見も聞くけど、今回は我慢してね。」

「そ、そうではなく…。」

「あっ、もう準備をしないと間に合わない時間だ。ほら、急いで。」

 私の思考が動き出す前に、ウサギさんに手を引っ張られ、連れてこられたのは、花嫁さん控室と書かれた扉の前。

「じゃあ、お願いします。」

 そこから出てきたスーツを着た美女に、私を押し付け、ウサギさんは隣の花婿さん控室らしい扉に消えて行った。

「じゃあ、和亀様。こちらにお願いします。」

 今度はその美女に急かされ、ふわふわのウェディングドレスを着せられ、顔にこれでもかと言うほど化粧という鎧を身に着けさせられていた。

そして、私は今の状態を受け入れられずに、回想に潜り込んでしまったのだ。


「まぁ、いっか。 ウサギさんは、優しいし、煩く云わないし、それなりに上手くやっていけるだろう。うん、結婚してもどうにかなるはずだ。」

思考回路は考える事を拒否しているのだろうか?そんな結論に辿り着いてしまった私は、何か大切なモノが抜け落ちているのだろうか?


うん?これも黒いウサギさんの手の平で踊っているからだろうか?

いや、素直にウサギさんの作戦勝ちで、私は恋に堕ち、彼と一緒に歩もうと決めた、という事にしておこう。

その方が、私の精神衛生上もいいだろう。

でも、きっとウサギさんと一緒なら振り回されながらも楽しい人生を送れそうだ。

幸せになれるはずだよね?


最後まで読んでいただき、ありがとうございます。

気力があったら、ウサギさん視点の番外編を書こうかなと思っているけど…。

今のところ、いつになるか、実現できるかわかりません。

もし、続きがあったなら、また読んでください。

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