灰色の狼と新世代そ四
冷たい鉄の感触と変声機の機械的なで脳から全身に理解させる。
これは一体、何を意味しているかは明白。
それに冷静な判断を鈍らせ、焦りと恐怖を増長する。
「お、お前っ!?自分が何をやってるか、わかってるのかっ?!」
「何を?」
「それに私が一体、何をしたって言うんだ?!」
「お前、自分が何をしてるか忘れたのか?ぼけるには早いな…」
「私はお前に狙われる事は何もしていないぞっ!?金が目当てかっ?!」
脅えている初老の男の目の前に書類の束が投げられる。
「これでどうだ?」
男は慌てて、その床に落ちた書類に目を通す。
「お前…、これを一体どこで手に入れた…」
「どこで?面白い事を聞くな、自分で調べたんだよ」
「一体、何が目的だっ!私に手を出すとどうなるか解ってるのかっ!
ヤクザも警察も手が出せない私をっ!私の後ろには怪人クラブが付いてるんだっ!」
この手の人間の言う事は何時も一緒だ。
最初は威勢が良いが、強気の訳は虎の威を借りる狐だ。
それに何時も最後に口にする言葉は。
「私に手を出せば、怪人クラブが黙っていないぞっ!」
「だから?」
「そ、それにお前は正義の味方だろっ?私は…」
「お前、勘違いしてないか?俺は正義の味方じゃない、弱い者の見方だ…」
冷たい声と共に銃声が響く。
「ぐぅ…」
引き金を引くと同時に男は眠りに付いた。
これは人を殺める為の銃では無い、改造された麻酔銃だ。
今日の仕事は終わった。
警備員が駆けつける前に退散しなくてはいけない。
『終わったか?』
「あぁ、今戻る」
ビル50階の窓から隣のビルへと飛び移る。
そこから見える、夜景は宝石と呼べる程の美しさ。
それを眺めながら、飛び移る。
この活動を始めて四ヶ月が経つ。
目的は怪人クラブの解体だ、現れる怪人を捕まえていてはきりがない。
そこで思いついたのが、内部を攻める事だ。
怪人クラブとの取引をしている企業の代表を警察に引き渡す。
だが、怪人クラブとの取引をしてる会社がどれだけあるかは正確には解っていない。
まずは自分が住んでいる、A市から洗い出す事にした。
今回の相手は表向きは貿易会社だが裏で怪人クラブに密入した銃器、火薬、麻薬などを提供。
この企業は怪人クラブの大口の取引先。
なぜ今まで検挙や逮捕されなかったか、答えは簡単だ。
荷物の中に仕入れた、物を混ぜるからだ。
しかも、名義は架空の下請け会社。万が一、警察の手が入っても証拠不十分で終わるだけだ。
それと必ず誰か身代わりが用意される為、常に逃げ道がある。
悪い奴程、良く眠ると言うがあの男は悪党としては二流だ。
事前にビルの裏に用意してあるバイクに跨り、エンジンをかける。
「これから戻る」
『了解。今回も順調だったなっ!』
「馬鹿言うな、何時怪人が来るかひやひやしたぜ」
冗談を言い合いながら、帰路に向う。
今、世間で騒がれている「灰色の狼」は怪人クラブと違法取引をしている企業の社長や役員を断罪して回っている。
彼の目的は怪人クラブの解体とその代表をしている「ボス」の打倒。
なぜ、彼が悪党を成敗しているのはずなのにヒーローにならない。
その理由は二つある。
「戻ったか」
「あぁ、今回はは上手く行ったな…」
「なぁ、斉藤。今度はどこを狙う?」
「そうだな…、リストがあるだろ?」
「ここはどうだ?あの貿易会社が管理している、港」
「そうだな~、確かな情報がないとな。調べてみる」
「それとたまには顔出したらどうだ?また、電話があったぞ。
胸を張ったらどうだ?俺達はもう怪人クラブをぬけたんだ」
「ん~。また、今度な」
「園長さん、喜ぶと思うけどな」
一つはA市が経営している、孤児院に怪人クラブの手を伸びない為。
「は~」
古いソファーで横になり、テレビをつけるとニュースが流れる。
『また、灰色の狼の目撃情報が送られてきましたっ!今度の被害者はA市でも大手企業です』
最近は頻繁に自分の事がニュースに流れる。
優越感に浸らないと言えば嘘になるが、やっている事は犯罪だ。
いずれ、自分は捕まるだろう。
罪状は不法侵入、暴行罪、強迫罪。
この両手で数え切れない。
だが、これで良い。ヒーローになっても汚職をしている政治家、役員、警察。
それにヤクザは捕まえられない。
法律では限界があるのだ、犯罪組織にいたから言える事もある。
ヒーローになろうとも考えたが、一番良いのは内側を攻める事だ。
二つ目は自分の身元が割れない為だ。
結局は孤児院に悪党の手が伸びない為、奴らは表面上は一般企業を装っているが裏側は反社会組織。
ヤクザよりたちが悪い、それに裏切り者は特に許さない。
ただ、会社を辞める分には問題無いが離反者が何かの危害を加えると制裁が加えられる。
『何とその社長は、怪人クラブとの裏取引を行っているとの事ですっ!
証拠が警察に提供されているとの事ですっ!今月に入って、灰色の狼の被害は12件。
彼を一部で英雄視している声がありますが、これは立派な犯罪ですっ!それでは現場からお伝えしましたっ!』
そうだ、自分がしている事はどうやっても犯罪だ。
怪人クラブを解体したら、自首する。
罪は償う、懺悔はする、ボスを倒したら。




