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株式会社ヒーロー  作者: ボサボサ
黒い狼と決別
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トレーニングは辛い

トカゲ怪人を保護して、日が明ける。


「はっ…、はっ…」


この歳でランニングマシーンは辛い。

息が上がり、心拍数が上がるのが感覚で解る。

身体を限界まで動かす何て学生時代以来で体力不足が明白。


「どうした、部長!それくらいで根を上げるのか!気合が足らんぞ!」


暑苦しい声が聞こえて来るが耳に入って来ない。


「マ、マッスルさんは…、三時間走りぱなっしで平気なんですか!?」

「俺はこれ位が普通だぜ!隣を見てみろ!あいつは気合が入ってるぞ!」


さらに左隣に視線を向けると、イケメンが息を荒げながらランニングマシーンを爽やかに使用している。

その姿に周りの女性が熱い視線を送っている、それを見て若干苛立つ。


彼はミスターアタック。二年前に大学を卒業して、この会社に就職した。

年齢は二十四歳でまだ若いがヒーローとしての実力は一目置かれている。

ヒーローランキング二十位のランカーでもあり、その爽やかさと紳士的な振る舞いから子供からお年寄りに幅広い人気を誇る。


「彼はスゴイですね…」

「はっはは、そうだな。俺も近いうちに越されるかもな!でも負けてられんよ!」


二人で雑談をしていると、一人の女性が現れる。


「加藤さん、お疲れさまです」

「あ、相川さん。どうしたんですか?」


突然の美人の登場に心臓が一瞬鼓動が早くなる。


「これどうぞ」

「え?ありがとうございます!」

「部長も隅に置けないな!」

「ち、違いますよ!」

「何の話ですか?」

「相川さんは知らなくて良いんだよ!」


慌てて差し入れの飲料水を喉に流し込み、緊張を誤魔化す。


「加藤さん、プロトタイプの実験日が決まりました」

「本当ですか!」

「はい、後で私の所に来てください」

「解ったよ」

「それでは失礼します、トレーニング頑張って下さい!」


言葉を口にする彼女の表情は子供のように嬉しそうな感じだった。

他人である、自分にもはっきりと理解できる。

見ているだけで絵になる彼女と話しているだけで、夢心地なのに一緒に仕事をしているのは幻だと感じてしまう。

立ち去るその後ろ姿も美しい。


「相川さん!ちょっと、良いかな?」

「アタックさん?どうかしましたか?」

「今日の夜空いてる?良かったら、食事でもどうかな?」

「すいません、仕事が忙しいので無理です」

「そうですか…。引き止めて、すいません」

「いえいえ、それでは」


その光景を見た時は内心、なんだよあのいけ好かないイケメン野郎はと思ってしまう。

だが振られたらしいので、心の中でガッツポーズを決める。


「部長、さっき言ってたプロトタイプって何だ?」

「あぁ、相川さんが開発した新型のスーツですよ。その試作が出来たんで、その実験を私の所に話が来たんですよ」

「え?!それってすごくね?」

「はい、聞いた時はびっくりしましたよ」

「やっぱ、ドラゴンの時の功績が評価されたんじゃないのか?」

「そうなんですかね…。でも、ただ飛び出しただけですけど」

「それだけでも大したもんだと思うけどね、人一人の命を守ったんだ。もっと胸を張れよ」

「そうですね」

「というか、何で部長は急にトレーニングを始めたんだ?」

「スーツを着るために身体を鍛えておけって、社長命令です」

「はっはは、大変だな」

「思ったよりきついです。それに自分も歳を取った見たいです」

「何言ってんだ、人間努力をすれば結果出るぞ」


この言葉が身に染みる。今まで努力しても全て上司に取られ、失敗は部下であるこちら側に回って来る。

そのくせもっと努力しろと言うのが前の会社の体制で上の連中は自分達が「努力」何てものはしない。

結果は出ないのは部下の責任、結果が出たのは自分の成果と勘違いしている連中ばかりだった。

だから今まで、努力とか立ち向かう事から逃げて来た。

この会社に入ったのは助けられたのが嬉しかったと言う単純な理由だ。

それに自分にも人助けが出来ると思ったからで、何か変わると思ったからだ。

否、変えるんだ。この決意は変わらない。


「マッスルさん、戦い方を教えて下さい」

「お、やる気が出て来たか!」


ただ、ちょっと腰が痛い。


「それであんたはあそこで何をしていた?」

「逃げてたんですよ!信じてくださいよ…」

「別に俺は警察じゃないから、これは取り調べじゃない。安心しろ」

「仕事が終わって帰ろうとしたら突然あいつが現れて…」

「それだけか?何か襲われる理由があったとか?」

「いや…、特に心当たりは無いんですよねぇ…」

「あんたの仕事と言うのは?」

「それ完全に疑ってるでしょ!近くの自動車工場ですよ!」

「確かに油の臭いがするな…」

「でも、なんか言ってたよな…」

「何でも良い、教えてくれ!」

「確か、怪人の臭いがするって…」

「それだけで襲われたのか?」

「はい」


昨晩、保護したトカゲ男を雑務課で質問しているがこれと言った情報を得る事が出来なかった。

だが、一つだけヒントを得る事が出来た。

恐らく、黒いあいつは怪人への復習だろう。


「あんたの身柄はしばらく内で保護する。会社はこっちから連絡しておく、事件が落ち着くまで大人しくしてろ」

「解りました」


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