人間対怪獣その十六
その様子はまるで、映画の様だ。
娯楽用の映像を見ている様だ、きっとその映画の宣伝はきっとこんな感じだろう。
全米1位を取った話題作、あの記録を抜いたあの映画がついに上陸、これが本物の映画。
きっと誰もがテレビCMで耳にして事があるたろう。
その映画の内容は人類が化け物と生き残りを賭けて、戦うと言う物だ。
誰もが展開を予測できる物になっていて、結末も人類が戦いに勝利してハッピーエンド。
これが安心安全で誰もが望む結果だ。
誰もがハッピーエンドを望む、それが人間と言う生き物だ。
これははっきりと断言できる。
「進めっ!勝利は我らが掴むっ!」
「「「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!」」」
完全に戦争をしている、この日本がなくならない為に。
「「「「「ぎゃおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!!!」」」」」
誰もこの光景を目にしたら口を揃えて言う言葉はこれだろう。
現実的じゃない。
正にその通りであり、非現実的な事が今起きている。
「見て下さいっ!ヒーローと怪人達が勇敢に怪獣達と戦っていますっ!!!
これを見ている視聴者の皆様、絶対に諦めないで下さいっ!!
絶対に彼らが怪獣をやっけてくれますっ!!」
この放送を聴いている二人の男がいた。
「おい斉藤、どうするんだっ?!俺達であの化け物どうにかなるのかよっ?!」
壊れた瓦礫の物陰に身を潜めている。
「うねせぇよっ!今、考えてるんから待ってろよっ!」
「ぎゃおおおおおおおおおおおおっ!!」
一つの避難所近くに一匹の怪獣が出現。
それを怪人クラブの戦闘員が対応している、真っ最中だ。
「だってよっ?!爆弾も効かねぇしっ!銃も殆ど効かねぇっ!どうしろってんだッ?!」
二人は焦っていた、こんな場所に怪獣が出現しないと初めは暢気に非難誘導をしていた。
だが、その予想を見事に覆えしてくれた。
「俺に考えがある」
「はぁっ?!逃げる以外にあんのかよっ?!」
「俺らが逃げたら、あの避難所の連中は死んじまうぞっ!解ってのかっ!」
「そんなの知るかよっ!だいたい俺達は悪者だぜっ!
人助けなんて、ヒーローか警察にでも任せれば良いだろっ!そりに俺達は大した能力もないだろっ!」
小林は完全に臆病風に吹かれてしまった。だが、この状況は彼を誰も責めはしないだろう。
誰もが自分自身に危機が迫れば、逃げるだろう。
でもこの斉藤と言う、男は妙な感情を抱いていた。
この状況を何とかしなくては。
まるでヒーローの思考だ、でも彼は怪人クラブの戦闘員。
しかも、自身の超能力は5分間だけ身体能力を超人並みにすると言う物だ。
この超能力社会で制限や条件がある能力者は珍しい事ではない。
それに彼は過去にヒーローをしていた。
だが挫折によりヒーロー業を離れ、ずっとそれが彼の後悔だった。
「俺に考えがある。後、弾と手榴弾はどれだけある?」
「はぁっ?」
「良いから、答えろっ!死にたいのかっ!」
「マガジンが後二つで手榴弾が一つ」
「目を狙ってくれ、それで時間を稼ぐ」
「いやいやいやっ?!それ俺がやるのかよっ!嫌だよっ!」
「お前は射撃は得意な方だろっ!頼むっ!」
この必死な姿になぜが胸を打たれた、社会の底辺は物凄く嫌な表情を浮かべながら
「解ったよっ!やってやるよっ!」
「合図を出したら、あのトラックまで俺が走る」
「ちょっと待て、お前だけ逃げる気じゃだろうなっ!」
「違う、こう言う時の為に切り札を用意して来た」
「ぎゃおおおおおおおおおおおおおおっ!」
「今だっ!」
「もう、自棄だッ!うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!」
小型マシンガンの引き金を引く。
それと同時に走り出す。
この二人の無謀とも言える行動が予想外の結果を生む事になる。
「はぁ…、はぁ…」
トラックの荷台を開けるとそこには怪人クラブが開発をしたパワードスーツがあった。
灰色をしているその鎧は狼の顔をしている。
その鎧を身に着ける。
「ぎゃおおおおおおおおおおおおおおおっ!」
「助けてくれっ!斉藤っ!」
いったい自分は何をしているのか、思わず鼻で笑ってしまう。
自分はついさっきまで悪者だった。
それが人助けをしようしている。
『スーツを起動します』
そんな言葉を一切聞かずに走り出した、ただ仲間の危機を救いたかった。
「ぎゃおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!」
「斉藤?」
「お前は安全な場所で支援してくれっ!」
「わ、解った…」
「どうした?」
「何か、安心したら腰が抜けた…」
「お前っ?!何言ってんだ、良いから掴まれっ!」
久しぶりに自分の超能力を使い、人助けをする。
「お前はここにいろ」
「お前はどうすんだよっ?!まさか、一人で…」
「何とかしてみる、かっこつけるわけじゃないけどな」
颯爽と怪獣と対峙する。
本当に昔憧れた正義の味方見たいだ。
巨大な悪に立ち向かう勇敢なヒーロー、一時期も自分もそうだった。
だが挫折をしてしまい、そのまま腐って怪人クラブに入る。
でもどこかでやり直す事とずっと燻っていた。
今まで失敗が怖くて挑戦をしていなかった。
「ぎゃおおおおおおおおおおおお」
「行くぞ、化け物」
目の前の敵と過去の自分を越える為に己を武器に変える。




