人間対怪獣その六
怪獣対策会議の後日。
空は群青色で鳥が群れを成して、翼を広げる。
いつもの日常風景だが、その視点を地上に向けると空からも視認できる程の巨大物体が蠢いている。
「こちら、鳥。対策本部応答されたし…」
『こちら、怪獣対策本部』
「空から偵察をしているが、怪獣と思われる群れが東京湾に向って移動中」
『数は?』
「多すぎて数え切れないが、目測で100以上はいるな」
『了解。報告ありがとうございます』
「俺はこれから、本部に戻る」
空を偵察をしていたのは怪人クラブの空戦担当、最上位戦闘員鳥。
彼は鳥に変身できる、超能力を持っていてかなりの実力者だ。
その能力の高さを評価され、単体での偵察任務を任された。
「それで、敵の正確な数と何時上陸するか解るか?」
「はい。衛星写真と鳥の報告を照り合わせると、数は100です」
「多いな…、それで敵がこちらに上陸する時間は?」
「予測では二日後。つまり48時間後に東京湾に上陸します」
「そんな、近くまで来てるのか?」
「はい。それと、気になる熱源反応も探知されました」
「元々だろ、それは」
「違うんです、もっと広い範囲なんです」
「どういう事だ」
「これを見て下さい」
ディスプレイに映し出された、とてつもなく巨大な赤い色の円形は何か禍々しい異常性を感じられずにはいられなかった。
『この放送をご覧なっている、国民の皆様は直ぐに近くの避難所に移動してください。
これは訓練ではありません。繰り返します、怪獣の大群が48時間後に上陸します…』
各地のラジオ局、テレビ局が緊急避難放送を一斉に放送した。
これが何を引き起こすは明白である。
大勢の人間が同じ行動を起こすとどうなるか、集団パニックだ。
誰が不安を一言、口にするとそれが個人の感情を刺激して正常な判断を鈍らせる。
「落ち着いて下さいっ!一列になって、ゆっくり進んで下さいっ!」
非難誘導をしている各地の自衛隊、警察、消防。
彼らは焦っていた。この誰かの悪意とも取れる、不満と恐怖が人々の感情を支配する。
「早く行けよっ!おらっ!邪魔なんだよっ!」
「んだとぉっ!やんのかぁっ!」
ついに始まってしまった。
こう言う事態が起こるのは解り切っていた。
人間は何時の時代も追い詰められたり、自分が危機に陥ると嫌な部分が表になる。
これは古代から人間が持っている、凶暴性。
「いってなーっ!放せよっ!」
男が殴りかかろうとした瞬間だ。
銃声が空に向けて鳴り響く。
「おいっ!お前らっ!ささっと非難しろっ!周りの人が迷惑考えろっ!
お前だよ、そこの男っ!」
「誰だよっ!うるせぇ…」
「怪人クラブの下っ端だよっ!文句あっかっ!あぁんっ!」
「「すいませんっ!!」」
以外にもその場を収めたのは怪人クラブの戦闘員の一人だった。
その一言で人々が足並みを揃えて、避難所に向っていた。
「助かったよ。ありがとう」
「気にすんな、こっちも仕事でやってんだ」
「君、名前は?」
「俺は斉藤。こっちは小林だ」
誘導をしていた、一人の警官が敵であった怪人クラブの構成員にお礼を言っている。
この光景は異質だが、人助けには変わりはない。
「うぇーんっ!」
「ん?君、お母さんとはぐれたのかい?」
一人の女の子と出会う。
その瞬間。
「ぎゃおおおおおおおっ!!」
最悪の状況で怪獣が現れる。




