人間対怪獣その四
A市に怪獣の群れが出現して数時間後。
多重装甲を装備した、レッドウルフとシルバーファングの登場により撃破。
誰も犠牲を出さずに済んだが、ヒーロー達の疲労は限界が見えている。
それも当然である、連日連夜の戦闘でA市所属のヒーロー達は心身共に限界だ。
それにいくら超能力者と言っても、所詮は人間。
いずれは限界を迎える。
これが現実なのだ、いくら現実離れした強さを誇る英雄でも居たとしても周りはただの人。
今の状況では雑務課の二人がその英雄だ。
状況は良くなったが、周りが付いてこない。
敵も統率を取りながら動いている、こちらもばらばらで動いているといずれ死ぬ。
「おいっ!てめぇらっ!何ぼけっとしてんだっ!さっさと、移動して休めっ!」
暗い空気が漂う中、ミスターマッスルが声をあげる。
もちろん、彼も先ほどの戦闘でふらふらだ。
それでも無い力を振り絞り、指揮を執る。
「おい、マッスル。お前は休め、後は俺達がやる」
「白、お前達とおやっさんは大事な戦力だ。負傷者達は俺達でやるから、お前達はミスターの所に行け」
「でも…。マッスルさん、ボロボロじゃないですか」
「部長、俺の事を心配してくれるのか?こんな事は何時もの事じゃないか。俺は平気だぜっ!」
爽やかな笑顔を見せるが、二人は直ぐに強がりだと理解する。
だが、このヒーローの心使いを無駄に出来ずに言う通りにする。
「それにサイ子もいるからよ、大丈夫だっ!なっ!」
「うるさいわねっ!さっさと、怪我人を運ぶわよっ!」
二人を尻目にビルへ向う。
「あんた、本当に大丈夫?」
「何だ、珍しく俺の心配か?可愛い所があるんだな」
「な、何よっ!みっともないから、聞いてあげたんでしょっ!ふんっ!」
「相変わらず、お二人は仲が良いんでいね」
「良い所に来た、お前も手伝え」
A市支部所属のヒーロー達の殆どが怪獣達との戦闘で負傷。
状況は決して良くはない。最近は特に怪獣が強くなっている為、順位が低いヒーローは単体では相手にならない。
特にA市に出現する怪獣は他の地域より、はるかに強い。
はっきりとした事は解っていないが、恐らく10強のヒーロー達が待機しているのとやはりミスターがいる事が関係していと周りの関係者は考えている。
「それでどうだった、二人共?」
「薬の副作用は今の所は無い」
「そうか。加藤君の方は試験運用も無しで良くやってくれた」
「は、はいっ!相川の事は信じてますからっ!」
「そうか、二人には深い信頼関係を築いているのだね。それは良かった」
「深い信頼って、照れますね」
「おい部長、惚気てんじゃねぇよ」
「はっはは。こんな状況で惚気られるのは大した度量の持ち主だ。
話は変わるが、君達とサムライに日本政府からの緊急召集が掛かっている」
この言葉を聞いた時、二人は一瞬固まった。正確にはレッドウルフこと加藤努がその言葉を理解していない。
「はっ?日本政府っ?日本政府っ!?」
「そんなに驚くなよ…、別に珍しくない」
「そうだぞ。男たるもの、いつなんどき冷静に構えてなければ」
「それはあなた方だけじゃ」
同席していた、サムライは至って冷静だ。
「実はな、超大型怪獣が東京に迫っている。その撃退を自衛隊と、10強と合同作戦が決定した。
それに伴い、雑務課のシルバーファング、レッドウルフも参加して欲しいと連絡が入った。
それと、各社の四強達にも召集がかけられている」
この壮大な話に頭がついていかない。
当たり前だ、半年前はただのサラリーマンでただの人だったのがいきなり超能力者になり世間が注目するヒーローになる。
これだけでも誰でもすごいと口揃えて言うだろう。
話がぶっ飛んでいて、口が開かない。
「それで、そのばかでかい怪獣ってどの位なんだ?」
「推測では身長100メートルはあるそうだ」
「今までにない、スケールのでかさだな」
「対策会議は明日だ、それまで三人は休んでくれ」
この話を聞いて、ただ怖くなった。
膝が笑っている、今までに相手にして来た敵は人間と同じ大きさだ。
それが日に日に大きくなり、今度は合体ロボットだと同じ大きさ。
今までは気を張ってどうにか、やって来たが今回ばかりは逃げたいと言う気持ちが働く。
他の二人は何時もの事だと平気な顔しているが、自分はまだ半年しか経っていない新人。
この人達について行ける気がしないと今回ばかりは思ってしまう。
「大丈夫か部長?」
「えっ?」
「怖いのは皆同じだ」
「だがな、一番大事なのは恐怖心だ。死を恐れるのは悪い事じゃない」
「は、はい」
「それに部長は今は立派なヒーローだ、自信を持て」
この言葉で目はが覚める、自分はヒーローだと。
「白牙さん、絶対やりとげましょうね」
「そうだな」
決戦の日は近い。




