人間対怪獣その二
世間が怪獣の話題で持ちきりになっている中、照りつける日差しの中で害虫駆除の真っ最中だ。
「今日も暑いね~」
「おい、ばばあ。あぶねぇから日陰で休んでろよ」
「おやおや、いつも悪いね~。ありがとうね、鴉ちゃん」
「いちいち、礼何て良いから。休んでろっ!」
現在、A市の片隅で農作業をしているのは数ヶ月前に株式会社ヒーローA市支社が総力を挙げて壊滅に追い込んだ。
怪人クラブA市支部が保有する人体実験場、通称「研究所」。
これに関連した事件の首謀者、「鴉」。
彼はブラッククロウ。黒牙剣を仲間に加え、怪人殺人を指示をしていた。
その罪で更生施設に収容されたが、株式会社ヒーロー代表取締役ミスターの計らいと本人の改心を認めた釈放された。
その身元引受人になったのが、良く更生施設のカリキュラムに協力をしている近所の農婦が引き受けてくれた。
「こんちわ~」
「あら?お客さんかい?」
その方向に目を向けると良く知っている人物が気だるく、手を振っているの姿が映る。
「初めまして~。俺、こう言う者です。これ、つまらない物ですが」
「あらっ!株式会社ヒーローの人っ!そんなすごい人が家に何の用ですかっ!」
「ばばあ、そいつから離れろ」
その気だるい奴は良く自分が知っている人物で、昔生死を共にした旧友だ。
「何しに来た、一狼?」
いきなり、険悪な空気に包まれる。
「ごめんね~、鴉ちゃん。無愛想でね誤解されやすいのよ、とりあえず家に入りましょうかね?外は暑いからね」
お婆さんが気を使ってくれて、この場は収まりそうだ。
さすがは年の功である、超能力者が二人いても全く動じない。
白牙一狼は広い屋敷の畳が敷き詰められた、客間に通された。
「ひとまず、麦茶でも飲んでて下さいな」
「ありがとうごいます」
お婆さんが襖が閉めると、二人の口が開く。
「それで俺に何の用だ?」
「今、日本中で騒がれてる怪獣の事だ」
「断る」
「まだ、何も言ってないだろ…」
「どうせ、手を貸してくれって言うんだろ?お断りだね、そんなの。
だいたい俺はヒーロー何かじゃないし、それに人助け何て興味が無い」
その目は以前と変わらない、冷たく鋭い目付きだ。
それ以上に気迫みたいなものを見につけたらしい。
この男の視界に入ってると少し息苦しい。
「頼むっ!今回ばかりは俺一人でどうにかなる問題じゃないっ!
それにトップランカー達も全員、今回の作戦に参加してるっ!
一人でも手が欲しいんだっ!」
本当に必死だった。人に頭を深々と下げるのは本当に久しぶりだ。
今回はどうなるか誰にも解らない。死人が出るかもしれない。
だが、これはこっちの都合だ。
この鴉には全く関係ない話だ。
それに一度致命傷に繋がる傷を負わせてしまったのだ、怨まれても仕方がない。
「帰ってくれ、いくら頭を下げられても手を貸す気は毛頭ない」
「解った…」
その口から零れる言葉には力が無く、完全に心が折れている。
微かな希望に縋ったのだろう。かつての友と言っても、所詮は他人と納得するしかない。
「もう、帰るかい?」
「は、はい。お邪魔しました」
老婆の瞳にはその姿が元気がないと確信していた。
平常心を装っているが、相手は人間だ。
何かあれば、身体のどこかに出るのは当たり前だ。
「ねぇ、鴉ちゃん」
「何だ、ばばあ?」
「お友達は何か頼みに来たんだろ?」
「ちっ。そうだよ…」
「あんたの事だから、断ったんだろうけね…。私は昔のあんたを知らんけど、今のあんたは知ってるよ。
いつも、畑仕事してくれるしね。こんな婆さんと婆さんの面倒も見てくれるしね」
この言葉が胸に刺さるがこの言葉の先はとっくに予想が付くが何故か胸が熱くなる。
「それにあんたは元々は優しい子だろ?お友達の頼み、聞いてやっても良いんじゃなかい?
私達を地上げ屋から助けてくれたみたいにさ」
気づいたらその言葉を黙って聞いていた。
その家路は思い足取りとなった。
頭の中では解ってはいたが、現実になるとやはり精神的にまいる。
都合が良いと解っていたが、どこかで甘えがあった。
かつての友人、苦楽を共にした同士。
そんな甘えで訴えて頭を下げれば、首を立てに振ると確信していた。
自分の甘さが悔しくて奥歯を噛む。
会社に付く頃、A市は怪人警報が鳴り響いていた。
その足取りは何時もの用に地下にある雑務課に向おうとしていたがポケットの携帯電話のベルが鳴る。
「もしもし?」
『私だ。鴉の件はどうだった?』
「駄目だった」
『そうか。それより、外の様子は解るな?』
「あぁ…」
その言葉の意味は今直ぐに作戦に参加しろと言う事だ。
だが、今は自分が戦える条件が揃っていない。
『直ぐに技術部に向え、薬がある』
「えっ?!また、あれ飲むのかよ…」
『今回は改良して、身体を負担を減らしたそうだが注意を良く聞いておくように』
「了解」
電話の通話をボタンを押し、携帯をポケットの中に再びしまう。
「ぎゃおおおおおおおおおおおおおっ!!!」
油を売っている場合でない、危機がそこまで迫っている。
覚悟を決めて、技術部へと走る。




