黒い狼と雷男と怪獣その四
「ぎゃおおおおおおおおっ!!!」
突如として現れた、怪獣に黒い狼とただの不良が立ち向かう。
その姿を校舎の中で教師と生徒達は固唾を飲んで見守る。
誰かが言った、ヒーローはまだ到着しないのかと。
誰かが言った、誰かあの二人を助けてやれと。
誰かが言った、逃げた方が良いと。
こんな無責任で自分勝手な言葉を口にする人間がどんな世界でも存在する。
だが、そんな暗くでじめじめした世の中でも誰かを思い信じる綺麗な人間がいる。
「信じても良いんじゃないでかね?あの二人も本校の生徒だ、我々教師が生徒を信じなくてどうする?
わしが加勢して来るぞ」
「校長っ!何を言ってるんですか!お止め下さいっ!」
「わしも若い時にミスターに憧れてヒーローを目指しとったっ!離せっ!」
そんな状況を知らずに二人の半人前のヒーローは強大な怪獣と交戦する。
「ぎゃおおおおおおおおおおおおっ!!!」
10メートルある巨体から振り下ろされる巨大な爪は一回受けただけで命を落としかねない。
二人はその命を死がはっきりと見える緊迫した状態で戦っている。
「次はどこを狙えば良いっ!」
「次は右目だっ!まずは視界を奪うっ!巨大な生物と真正面から戦おうとするなっ!」
「気にいらねぇが、解ったっ!」
掌に電気を溜めて、目標に向けて発射する。
「ぎゃゃゃゃゃゃゃゃゃゃゃゃゃゃゃゃゃゃゃゃゃゃゃゃっ!」
両目が潰れ、足掻き苦しみさらに凶暴性が増して行く。
「良しゃっ!」
「避けろっ!」
「ぐふっ…」
成功が油断を生み、巨大な手が直撃する。
その瞬間、視界は暗黒に包まれ身体が鉄のように重くなる。
人間は死を覚悟した時、過去の記憶が見えると言うがあれは嘘らしい。
視界に映るのは群青色の空と黒い狼だ。
「おい、大丈夫かっ!」
「うっ!何とか生きてるぜ…」
こんな感覚は人生で初めてだ、今までなんとなく生きていた人生が不思議と楽しいと思っている。
致命傷を受けたはずが、立ち上がる。
「本当に大丈夫か!?」
「何言ってんだ転校生?あの化け物をやっつけるだろ?ヒーローは悪者に背を向けないだろ?」
「あぁ…、そうだな。次で決めるぞ」
「どうすれば良い?」
「お前はありたっけの雷をあいつに落としてくれ、最後は俺はがやる」
「解った」
「ぎゃおおおおおおおおおおおおおおおっ!」
金髪が淡く輝き始め、粒子がその身体の周りを浮遊する。
その輝きは今までの人生で感じた事が無い感触だ。
これは彼の内面が変わる前兆なのだろうか。
それとも何かを守りたいと言う純粋で真っ直ぐな心がこんな現象を起こすのだろう。
間違いなく佐々木雷矢は嫌われ者の不良ではなく、誰もが憧れるヒーローに一歩前進した。
ただ惰性で生活を過ごしていた自分を変えたくて。ただ腐っていた自分を変えたくて。
「今だっ!」
その一言で青空から、一筋の閃光が怒号と共に落ちた。
「ぎゃゃゃゃゃゃゃゃゃゃゃゃゃゃゃゃゃゃっ!」
それと同時に黒い拳がその巨大な身体を貫き、煙のように消滅した。
「はっ…、はっ…」
怪獣が消滅したと同時に膝を土に付けた。
「大丈夫っ?!黒牙君っ?!それと誰か倒れているッ!誰か手を貸してくださいっ!」
怪獣が消えた直後にレッドウルフが到着する。
「加藤さん…、俺は大丈夫です。それより、佐々木を」
「え、え?!佐々木ってあの子?ちょっと、動いたら駄目だよっ!」
倒れている佐々木の元に近づき、声をかける。
「大丈夫か?」
「お、お前…。これが無事に見えるか?」
なぜか笑っていた、これだけの傷を負っているはずなのにどこか満足した表情をしていた。
「今すぐに救急車を呼ぶから二人はそこかに動かないでっ!相川さん、直ぐに手配をっ!
それと君は黒牙君の友達かな?」
「はい、そうです」
「それなら話が早い、会社の医療施設に運ぼう」
その言葉を聞いて、自然と目頭が熱くなる。
今まで生きていて「友達」と言う存在しなかった。
正しくは避けていたのだ。迫害され、白い目でみられ、後ろ指を指され来た。
自然と自分で他人との間に大きな壁を作っていた。
そんな捻くれた自分を頼りにしてくれて、信頼してくれたこの黒い狼は本当に自分にとってのヒーローだ。
「なぁ、黒牙」
「何だ?」
「俺もヒーローになれるかな?」
「当たり前だろ?」




