黒い狼と雷男と怪獣その三
一人で行動するなと幾度となく注意された。
だが今は自分だけしかこの学校の生徒達を守る事ができない。
無茶のは解っている。その無理な状況を打破するのもヒーローの仕事。
自分はヒーローを目指している、正確には憧れた。
あの人に、自分を暗い道から日の当たる道に導いてくれた。
誰もが馬鹿馬鹿しいと、お人よしと笑うかもしれない。
だがこの世界はお人よし、人助けが当たり前の世界。
「変身…」
その身体が漆黒に包まれ、ヒーローブラッククロウになる。
「「ぎゃおおおおおおおおおおっ!!」」
二つの巨大で鋭い咆哮が小さな身体に重く降り注ぐ。
その恐怖にも臆せず、一匹目の足を粉砕する。
「ぎゃおおおおおおおおおおおおおっ!」
視界が悪くなる程、土煙を起こしその巨体が倒れる。
これで一匹目は無力化したと、確認した瞬間だった。
「ぎゃおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!」
「くっ!」
赤子ほどもある爪が背中を掠める。
間一髪の所で交わしてが、背中に一筋の赤い雫が走る。
「一撃食らっただけで、これか…」
正直、立っているだけで激痛が走る。
この敵はそれだけ強敵だと言う証拠だ。
だが強敵だがら、不利な状況だから、勝てないからと決して逃げない。
歯を食いしばり、敵を見上げる。
その姿を校舎の中から、だるそうに眺めていた。
その姿を見ていると昔を思い出して、胸が熱くなると同時に苛立ちを覚える。
その姿後ろ姿は昔憧れたヒーローにそっくりだ、絶対に諦めなず敵に背を向けない姿。
「おい、佐々木っ!ちゃんと歩けっ!」
「ちっ…」
「珍しく大人しいな」
「黒牙君大丈夫かな?」
「ちっ」
その言葉が耳に入ると、段々と外が気になっていく。
「危ないっ!!!」
外では必死に黒い狼が自分為に戦っている、何も報酬が無いのに。
だが自分もそれに憧れた。
困っている人の助けになりたくて、助けを求めている人を助けたくて。
再び、ヒーローが窮地に立たされている。
その姿を見て、あの言葉を思い出した。
『手を貸してくれないか?お前なら手を貸してくれると思ったんだな』
だが、こんな自分に何ができると自問自答を始める。
いや、もう一度夢を見ても良いのか。
一回、少女と猫を助けた。
その時と同じく、身体が勝手に動いていて。
「佐々木っ!どこに行くんだっ!こら、窓から出るなっ!」
そんな言葉を無視して、怪獣目掛けて全力で走り出す。
「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおっ!」
雷を敵目掛けて、叩き落す。
その光景を見て、一瞬何が起きたか理解出来なかった。
「おいっ!転校生っ!戦い方を教えろっ!」
「来てくれたのか…。ありがとう」
久しぶりに他人から感謝の言葉を聞いて、少し照れる。
「礼何て良いから、ささっと教えろ」
嫌われ者の不良がヒーローに生まれ変わった瞬間だ。




