黒い狼と雷男と怪獣その二
夢を見ている、幼い頃の夢だ。
街で母親と買い物をしていると警報が鳴り響き、怪人が街を襲う。
運悪くその近くに居合わせてしまった母親はまだ幼い自分を強く抱きしめ涙を必死に堪え。
震えた声で。
「大丈夫…、大丈夫…」
幼い自分でも理解でぎる、何時死んでもおかしくない状況。
「へへへ、食べ応えがある女だなっ!」
その悪意に満ちた毒牙が伸びたその瞬間だった。
「おい…」
「なんだっ?こっちは今良い所なん…、げっ!ヒーローっ!もう来たのかよ」
「そこのお二人さん大丈夫かい?俺が来たからもう、安心だ」
その静かで力強く優しい声に二人が安心したのをはっきりと覚えている。
「すぐに怪人を捕まえてくるからね、じっとしててくれ」
「う、うん…」
頭をなでたその大きくて暖かい手の感触も今でも覚えている。
その勇敢で覆面を付けた身体が大きいヒーローの後ろ姿は今の自分の目に焼きついている。
「また、あの夢か…」
目を覚まし、時計に目をやると7時30分。
今直ぐに準備をすれば、間に合うが今日はそんな気分ではない。
「さっさと起きて学校行けっ!」
「うるせぇなっ!解ってるよっ!」
仕方なく支度をして、家を出る事にする。
最寄駅まで歩くその足は思い、何時もあの夢を見た後は気分が重くなる。
「ちっ…」
もう癖になってしまった舌打ちをして、道を進むと駅に到着するが周りの同じ制服を着た学生からは白い目の熱い歓迎だ。
これも何時もの事だが、良い気分ではない。
「見てよ、あの人でしょ?」
「そうそう…」
あのこちららの様子を伺い、ひそひそ話しをする。
その姿がはっきり言って気に入らない。
目を鋭きさせ、その気に入らない連中へと視線を送る。
「ちょっと、こっち見てるわよ。行きましょ」
「や~ね、感じ悪い」
当たり前だが、睨み付けると逃げて行った。
何時からこんな事に変わってしまったか、それは自分でも解っている。
原因はこの自分の超能力だ。
小学校まではクラスの人気者で友人が沢山いたが、中学校に進級すると競争心が生まれてくる。
それが悪いわけではない、むしろそれは人の成長を促す。
だが、佐々木の場合はそれが悪い方向に向ってしまったのだ。
人より優れた能力が原因で周りが嫉み、僻み、羨みが悪意に変わり佐々木に刃を立てた。
するとどうなるかは明白だ。クラスでの居場所が無くなり、中学二年生になる頃には学校一の不良のレッテルを貼られていた。
担任にも説得された事もあるが、悪いのは佐々木ではない。
僻み根性を丸出しにした周りだが、さらにその有り余る力で恐怖を与えた本人も原因がある。
佐々木も歩み寄りはしたが、周りは拒否したのだ。
それは佐々木が持つ力に恐怖したからだ。
「おはよう~」
生徒達の声が校門前に爽やかに響く。
その中を目を細め、気だるそうに歩く。
「おいっ!佐々木っ!制服が乱れているぞっ!いつも言ってるだろっ!」
「うるせぇよっ!筋肉だるまっ!かっこつけてんじゃねぇぞっ!」
「貴様っ!教師に向って、何て口の聞き方だっ!後で生徒指導室に来いっ!」
「はぁっ?行けわけなぇだろっ?」
そのまま教室へと足を運ぶ。
「佐々木君、おはようっす」
「…」
日課である、挨拶も返す事もしたくない。
自分の席に腰を下ろし、黒牙剣へと視線を送る。
「ねぇねぇ、今日は一緒にデートでしょ?」
「すまない、業務があるから無理だ」
「良いじゃ~ん、たまには私に付き合ってよっ!」
「ちょっと、黒牙君が困ってるでしょ」
「だって~」
今ではすっかり、慣れてしまったがやっぱり気分が悪るい。
「ちっ…」
「お前ら席に付け~。出席を取るぞ~」
担任教師が教室に入って来る。
「「ぎゃおおおおおおおおおおおおっ!」」
教師がホームルームを始めるようと瞬間、校舎中に叫び声が響き渡る。
「怪獣っ!見て見てっ!」
「おいっ!お前らっ!非難するぞっ!」
『緊急放送っ!緊急放送っ!教員達は速やかに生徒達を連れて非難して下さいっ!』
校内放送で非難が指示される。
「おい、佐々木って言ったか?」
「あぁ、なんだよっ?」
「緊急事態だ、手を貸して欲しい。無理とは言わない」
「は?何で、俺がてめぇの手伝いなんかしなくちゃなんねぇんだ?」
「そうか、すまない。お前なら、手伝ってくれると思ったんだけだ」
その真っ直ぐで澄んだ瞳に胸が痛む。
だが素直になれずに突っぱねると颯爽と窓から飛び降り、怪獣達に立ち向かって行く。
「こら、黒牙っ!窓から出るんじゃないっ!」
そんな言葉を無視して、敵達に向って走る。
「こちら、黒牙。学校に怪獣が二体出現しました。対処に向います」




