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株式会社ヒーロー  作者: ボサボサ
王と優しさと力
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黒い狼と雷男と怪獣

「ねぇ、ねぇっ!黒牙君ってヒーローなんでしょっ!もしかして、あの会社で働いてるのっ!」

「ん?すまない、それは秘匿義務で教える事は出来ない」

「え~、いいんじゃんっ!私達、昨日黒牙君が黒いなんかに変身したの見たよっ!」

「そうそうっ!それにあの怪獣と戦ってるのもちゃんと見たんだからっ!」

「それでもバイトの身で正規の所属じゃないんだ」

「それって、自分がヒーローで働いてます~って言ってるよっ!」


転校二日目。昨日と変わらず、女生徒二人に質問攻めに合う。

これが日常と言う奴なのだろが、自分にはまだ慣れないが悪くはない。

それに他愛無い視線もこちらに向いている、それも学生生活の一部なのだろう。

はっきり言って、自分が想像していた学生生活とはかけ離れている。


てっきり学生と言うのは同じ服装をしているから、軍隊か何かと思っていたが全く違った。

その中で鬼軍曹や意地が悪い先輩兵士がいると思っていた。


「ちっ…」

「やめましょうよ、助け貰ったんすから」

「うるせぇなっ!解ってるよっ!大体な、昨日だって本気出せば…」

「席に付け、授業を始めるぞ。おい佐々木、机から足を下ろせ」

「あぁんっ!うるせぇっ!指図すんなっ!」


教師に向かって悪態を付き、中指を立てる。


「態度悪いと、欠席にするぞ」

「うるせぇって、言ってるだろうがっ!勝手にしろっ!」


机を蹴り上げ、教科書が散らばる。そんな事は全く気に止めずに勢いで教室から飛び出す。


「はぁ~、しょうがない奴だな…」


この苛立ちの理由は解っている。昨日、怪獣に襲われ、転校生に命を救われた。

しかも、あいつはあの「怪人殺人事件」の犯人だった奴だ。

そんな事はどうでも良い事だ、一番気に入らない事はあいつが「ヒーロー」と言う所だ。

クラスの人気者になって行く様も気に入らない、自分を弱いと言った事も気に入らない。

それ以上にあの時、何も出来なかった自分が気に入らない。


苛立ちの原因が自分にあるのはとっくに解っている。

だが、どうやってこの行き場の無い衝動を発散すれば良い。

何時も自問自答しても答えは無い。


気づいたら、学校から抜けて商店街の中をふらついていた。

この光景の見慣れて、新鮮味が全く無い。


「にゃ~」


足元に視線を送ると野良猫が一匹。


「何だ、野良か?」

「にゃ~」


野良猫を持ち上げた瞬間。


「ぎゃぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!」


目の前に巨大怪獣が突然、出現した。


「はっ!またかよっ!」

「にゃ~」


自分の手の中で暢気に鳴いているこの猫を見ていると苛立っていた自分が馬鹿馬鹿しく思えて来た。

逃げると言う選択肢もある。


「ママーっ!」


道のど真ん中に少女が立ち尽くして泣いていた。


「ちっ!おいがきっ!こっちに来い、逃げるぞっ!」


少女と猫一匹を抱え走るが、どう考えても追いつかれる。


「ギャオオオオオ!」


その巨体が後ろから恐怖して襲って来る、恐らく逃げてもこっちが体力が切れるのが先だ。


「ちっ!」


立ち止まり、少女を下ろす。


「おい、がき。この猫連れて、避難所まで逃げろ」

「出来ないよ…」

「いや、やれ。この道を真っ直ぐ進めば直ぐに避難所だ!俺はお前を連れて逃げ回るのは無理だ」

「お兄ちゃんはどうするの?」

「俺はあの怪獣をどうにかする」

「お兄ちゃんって、ヒーロー?」

「さぁな…、自分でも自分が何者かなんてわかんねぇよ。良いから、もう行けっ!俺も後で行くっ!」

「うんっ!」

「あ~あ、何してんのかな俺。もう、こうなれば自棄だっ!」


完全にガラでもない事をしている。人助けと言う奴だ、あのまま逃げれば誰も攻めないだろう。

だが、あの少女と猫がほっとけなかった。

ただ、それだけだった。


「ぎぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!」

「ふぅー」


呼吸を整え、全身にバチバチと何かが弾ける音が響く。

右手にありたっけの電気を充電する。


「ぎゃぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!」


巨大な腕が襲って来る来た瞬間に電撃を放つ。


「ぎゃゃゃゃゃゃゃゃゃゃゃゃゃゃゃゃゃゃゃゃゃっ!」


その一点に集中した電撃で巨体の一部が穴が空く。

だがその痛みでさらに凶暴になり、完全に狙いが自分になったのが感覚で理解出来た。


「これでも駄目かよっ!」

「ぎゃおおおおおおおおっ!」


今の自分の全力をぶつけても、倒れない相手が目の前にいる。

これが絶望なのだと、改めて理解出来た。


「今回は対処できたな、佐々木」


聞き覚えがある声が耳に入って来るが、その姿は完全に黒いヒーロー。

二日前に転校して来た、黒牙剣だ。

そのかっこよすぎる登場に悔しさを覚えるが安心感もあった。


疾走と現れた黒いヒーローは電光石火のように悪者を打破。

そして、その場を後にする。


「くそっ!」


感謝をするべきなのだろうか。

いや、俺はそんな事はしたくない。気に入らない奴に頭を下げるなんてプライドがボロボロになる。


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