10会議
日本ヒーロー委員会の本部がある。この国の中心、東京。
この場所にこの国が誇る最高で最強な10人の英雄達が集結している。
その理由は最近問題になっている、怪獣出現の事である。
日に日に怪獣の対処にプロヒーロー達では手が足りなくなって、警察、自衛隊に支援を要請ている事態である。
その出現頻度に楽観視できなくなったヒーロー委員会はヒーローランキングトップ10のヒーロー達に召集をかけた。
彼らはその高い能力と一人で戦略級の戦闘能力を持った人材である。
その為に政府との繋がりが強くあり、時には外交の席に付く場合が多々ある。
それはこの国にそれだけの戦闘能力があると言う、無言の圧力である。
だが、今まで世界中のヒーローを使った戦争は一度も無い。
それは当たり前の話だ、ヒーロー達は無駄な戦闘行為を嫌う。
誰もが願う、平和と言う合言葉をヒーロー達は誰もが口を揃えるからだ。
「皆、集まってくれて感謝する」
「おいおい、ミスターさんが頭を下げる事じゃないぜ?あんたの頼みなら、地球の裏だって駆けつけるぜっ!
なんたってあんたは全世界ヒーロー達の憧れだからな、それにここにいる全員の先生でもある」
「相変わらずに暑苦しい奴だなぁっ!今日の議題は怪獣だろ?さっさと、終わらせて奴らを始末しに行こうぜ」
「ブラックホール。貴様、それでも三強の一人かっ!お前はいつも品が無いっ!」
「あぁっ?うるせぇよ、名家出のナイト様は黙ってろよ。吸い込むぞお前?」
「くっ!貴様、今日と今日は決着をつけてやるっ!表に出ろっ!」
「止めないかっ!お前達っ!ミスターの前で恥ずかしいと思わないのかっ!」
「はっははっ!いつもの事じゃないかっ!」
このテーブルを囲うのは日本のヒーローの中でも十本の指に入るトップランカーである。
人気と実力を兼ね備えた、英雄達である。
まず、7位のミスターエクスプロージョン。彼は名前の通りの爆発を起こすヒーローであり。
赤い髪が目印、それに性格は熱血であり、全国の子供達に大人気。
その熱血漢に悪態を付いた三強の一人であり、怪人達から名前を聞いただけで震えだすミスターブラックホール。
ランキングは2位と言う、非常に高い順位に席を置いていてる。
だが、彼は人格に問題が少しあり、中々頂点になれない。
実力だけなら、世界水準より遥かに高い。
その理由で委員会側は彼をその地位に置いている。
さらにブラックホールに突っかかる形になってしまったのはミスターナイト。
彼は剣術を教える名家出身で、その腕前は日本一と言っても過言でない。
6位と言う順位に席を置いている。
ヒーローの実力の他に彼の容姿はモデルのようで女性からも支持が熱い。
雑誌のモデルも依頼があれば受けているがその芸能活動を批判している者もいる。
だが、彼が持つ剣術はミスターサムライと同格である。
「せっかくうちが来たのにいつも通りの展開やね…」
「そう言うな、たまにしか集まれないんだ。多めに見てやれ、だからお前は氷の女って言われるんだ」
「せやな~、器がでかいのは男としては良いかもしれんな~。でも、身体がでかすぎるのはどうかな?」
「はっはは!その嫌味は相変わらずだなっ!ぶりっ!」
「うるさいわねっ!この狼親父っ!」
「お前の欠点は直ぐにヒステリーを起こす事だ、京都美人が台無しだ」
「全くその通りだ…」
「うねさいわねっ!親父二人でうちの性格分析しないでっ!」
この光景を見て、中心にいる男は笑っていた。
まるで、学校の教室の様な光景だ。
「ちち…、会長。そろそろ会議を始めませんか?」
一人の男が静かに口を開く。
「そうだな。皆、そろそろ会議を始める」
この一言で日本で10本の指に入るヒーロー達が静まり返る。
「もう解っていると思うが、今日集まってもらったのは連日報道されている怪獣に付いてだ。
まだ、この東京には出現したと言う報告は受けていないがいつなんどき現れるか解らない。
それに各社のヒーロー達が総出で対処しているが手が足りない状態だ」
「先生。質問がある」
「急にどうした?エクスプロージョン」
「その怪獣は突然現れるんだろ?何か予兆は無いのか?」
「それが全く解らないんだ。何か予兆があればこっちで先手を打っているのだが…」
「あん?なんだそれ?煙見たいに現れるって言うのかよ?」
「そうだ、誰も気づかない間に現れる」
「じじい、それって元からそこにいたんじゃね?」
「ん?!」
ブラックホールの発言に過剰に反応を示し始める。
「怪獣映画だとさ、派手に登場するじゃん?海からどぱーんって」
「確かにブラックホールの言う通りだ、あれだけの巨体が道を歩けば多少なりも地響きが起きるはずだ」
「いつも難しく考えすぎんだよ、もっと簡単に考えたらどうだ?俺はじじいから教わったけどな」
「確かにブラックホール君の言う通りだ、元からこの地球にいたとすれば納得がいく。
それに報告書を読んでいると不可解な点が多い、日に日に怪獣の大きさが変化すると言うのも気になる。
まるで我々を試しているようだ…」
冷静に書類に目を通してるこの男はヒーローランキング第1位シルバーナイト。
ミスターの息子にして、現在のミスターヒーローの称号を持つ英雄。
誰もが憧れ、世界が注目するヒーローの一人だ。
「それと同じ事をマッスルとニンジャが言っていたが、お前も同じ事を言うなら間違いないだろ」
「彼らも私と同じ意見でしたか…。だとすると、今以上に怪獣達が強くなって行く可能性が高い。
今は10メートルで止まってる見たいですが、今後はもっと大きくて手強い怪獣が現れる。
これは可能性ではなく、必然だと私は思います。至急に対策をしなければ!」
「で、どうする?その対策って言うのは?」
「落ち着けビックウルフ。私が考えたのは君達を委員会本部に待機させ、ここを拠点に怪獣対処をする」
「ちょっと待て、それじゃ間に合わないじゃ?」
「それと、怪人クラブとの連携を取りながら対処をすると言う事も考え中だ」
「会長っ!?それは正気の沙汰ですかっ!?彼らと手を結ぶと言うのはっ!?」
「そうだぜっ!俺もそれだけは絶対にお断りだっ!俺達と奴らは水と油以上だっ!」
「落ち着け若いの。社長、それは流石に拙者も賛成しかねるが何か訳があるのであろう?」
「サムライの言う通りだ。今回の案件は正直、我々だけでは対処しきれないかもしれない…」
「先生が弱気になるって珍しいわね」
「あぁ。世間には公表していないが、この間の更生施設立て篭もり事件の時に逸早く対処できたのもドラゴンの執事からの情報だ」
その言葉に全員が口を閉じる。
「でもそれは前回の話でしょ、会長?今回も助力をしてくれるかどうか…。それにあの怪人クラブですよ?
こちらから助けを求めれば、何を要求を要求してくるか…」
「それは後で検討する。今は君達にも怪獣達の対処にあたってほしい、これで会議は終わる」
『怪獣が現れて一週間が経ちましたが、町の様子を見て見ましょう…』
テレビのニュースを垂れ流しにしながら、今日の仕込みを始める。
最近怪獣とか言う化け物の所為で客足が少し減って、溜息を付く。
「全く、迷惑な話だ」
大鍋でスープを煮込む。
「お邪魔しますよ…」
「すいませんね、今準備中で…」
「ボス、緊急召集です。今回は出て下さい」
「何だ、常務か。解った、解った直ぐに行く」
頭に巻いているタオルを解き、前掛けを取り、スーツに着替える。
サラリーマンの味方。安くて美味いラーメン屋「ほいほい軒」の亭主から反社会的組織怪人クラブ代表ボスになる。
普段は街角の寂れたラーメン屋だが、正体は日本の大組織のリーダー。
「本部だけじゃなく各社の統括を全て集めろと副社長と専務にも伝えろ」
「了解。ふふふ」
「何、笑ってる?」
「ボスらしくなって来たなと思ってつい嬉しくて」
「行くぞ」
その低く鋭く冷たい声が静かに街角に響く。




