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株式会社ヒーロー  作者: ボサボサ
おじさんヒーロー誕生
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龍と狼

怪人クラブ。この組織が何時頃、創設されたかは現在も解っていない。

何故組織されたかその目的は全てが謎に包まれ、正体不明。

判明しているのは、日本の全国に組織が広がっていると言う事だ。

このA市も例外では無い、現在A市統括である幹部が取引をしようとしている。


その取引相手と言うのは地元ヤクザである。

何故、全国区の組織が地方の反社会的組織と取引を行おうとしているのかはこれは恐らく何らかのパイプを作り、基盤を作ろうとしているからなのだろう。

A市は東京の近くにある為、何か行動する時には都合が良くなるのだろう。

それにA市は犯罪組織の出入りが多い、これは何か関係があるのではないかと警察関係者はヒーロー関係者は考えている。


「なぁ~、ぶんさん」

「どうした、白?」

「あのさ、ドラゴンってどんな奴なんだ?」

「え?お前、社長から何も聞いてないのか?」

「そう言えば、何も聞いてないな…」

「相変わらずの社長だな…、これがドラゴンだ」


現在、二人は取引現場である倉庫の二階で張り込みをしている。

何時敵に見つかるか解らない状況でかなり緊迫している。


「何か、ガタイの良いにぃちゃんだな」

「あぁ、その辺で歩いてたら誰も犯罪者だとは思わないだろうな」


差し出された一枚の写真にはどこにでも居そうな、青年が映し出されていた。

特徴を挙げるなら、スーツ姿で筋肉質である事だ。

後一つに付け加えているなら、目付きが怖いくらいに鋭い。


「何か、眠くなって来たな…」

「お前、こんな時に居眠りなんてするなよ」

「ぐー」

「おい!寝るな!不味い…」

「誰かいるぞ!」


大声出して二人は捕まってしまい、両手を後ろに回した状態で手錠を掛けられてしまう。

周りにいる人間は黒いタイツ姿で顔も隠れている、つまり下っ端の悪人。


「それで、お前達は何者だ?ここで何をしていた?」

「ぐー」

「おい!白!」

「おい!お前ら!自分達の立場が解ってるのか!」

「あ~?どうした?あれ?なんか、手が動かない?」

「やっと起きたか!俺達は捕まったんだよ!」

「やっと自分達の立場を理解したか。それでお前達はここで何をしていた?」

「え?普通答えるか?」

「貴様!もう良い殺す!」

「主任!ドラゴンさんが到着しました!」

「何?!お前達、少し命拾いしたな」


黒タイツの悪人達は倉庫の入り口の前に道を空ける様に二列に並ぶ。

すると、一人のスーツ姿の男が数人の取り巻きに囲まれ足を踏み入れる。


「「ご苦労様です!!!」」


全員が一人の為に礼儀正しく並び頭を下げる。この光景はまるで軍隊だ。


「出迎えご苦労、頭を上げてくれ」


実物を見てみると白牙と変わらない年齢に見えるが、すっかり貫禄がありその場に居るだけで緊張感が生まれる。


「わっけぇな、俺と変わらない歳で大組織の幹部かよ…」

「あぁ、あの男は若干二十五歳と言う若さで怪人クラブの統括補佐に座に付いている。

俺も聞いた時は耳を疑ったね、だがなちゃんと理由がある。奴は代表の義理の息子だ」

「簡単に言えば、お坊ちゃんかよ。羨ましいね」


二人は捕まっているが随分余裕だ、敵の幹部が現れても世間話をしている。

こんな状況は慣れていると言った感じだ。


「ドラゴンさん、報告しておきたい事があるんですが」

「何があった?」

「侵入者を捕らえたのですがどうしましょう?」

「別に何も見られた訳じゃないんだろ?逃がしてやれ」

「良いのですか!幾ら何も見られて無いからって、相手は警察かもしれないんですよ!?」

「そうか…」


ドラゴンは二人の下に足を向ける。


「お前達が侵入者か?」

「そうだが?」

「この事を内密にしてくれると約束してくれるならあなた達を逃がしても良い」

「若造が生意気な口を効くじゃねぇか」


ぷんさんとドラゴンが睨み合いを続けていると倉庫の入り口が再び開いた。


「楽しい事してんじゃないですか、俺達も混ぜて下さいよ」


嫌味な声が建物の静寂しきった中に響き渡り一歩、また一歩づつこちらに近づいて来る。

はっきりしている事は助けが来た訳ではないと言う事だ。


「時間通りですね、山田さん」

「へっへへ、内の組は精確さが売り何でね。ドラゴンさん、依頼の物を持って来ましたよ」

「そうですかありがとうございます、山田組とはこれからも良い関係を気づいていけたらと思っています」

「内の親父も同じ事を言ってましたよ。おい、早く持って来い!」


倉庫の中に数え切れない程のケースが運び来れて行く。


「さすがですね、中々この量を揃えられる大口はあなた達しかいない」


驚嘆していると外が騒がしくなり、足音が聞こえて来る。


「警察だ!怪人クラブA市統括補佐ドラゴン、山田組若頭!銃刀法違反お呼び違法取引により現行犯逮捕する!」


絶望の淵に立たされていた二人に一筋の明かりが差し込んむ。


「全員手を挙げて、一列に並べ!これは警告では無い命令だ!従わないなら発砲する!繰り返す!」


警官の威勢の良い声が沈黙したコンクリートに反響して、良く耳に響く。

だが、それに反論するかの様に一人が口を開く。


「サツが何の用だぁ!こっちはまだ何もしてねぇぞ!」

「その大量のケースの中を調べさせてもらう!」

「ちっ…。お前ら…、ドラゴンさん?」


ドラゴンが怒り出した若頭の前に立ち、一言呟いた。


「やれ」


その声に反応するかの様に黒タイツの男達が走り出す。

さらにそれに立ち向かう機動隊。

だが、機動隊と黒タイツの勝負は均衡する。


「不味いですよ加藤さん!どうしましょう…」


隣から情けない声が聞こえるが自分にはどうする事も出来ない。

警察と機動隊を待機させるまでは良かったが、こうなるとは予測していなかった。

初めてのヒーローぽっい仕事だと、浮かれていた自分をこの時怨む。


「おいおい、そんな暗い顔すんなよ?新人ヒーロー。あんたは自分の仕事をしたんだ、胸を張れよ!」


突然肩を掴まれ驚き、後ろを振り向くと巨漢がそこにいた。


「紹介が遅れたな、俺はあんたと同じ株式会社ヒーロー所属のミスターマッスルだ。よろしくな!」


その笑顔で歯が光る。

株式会社ヒーロー所属ミスターマッスル、ヒーローランキング12位。元プロレスラー、株式会社ヒーロー四強の一人だ。

その容姿は身長190センチと恵まれた体格をしており、マスクを被りプロレスラーのようだ。

ついでに全国の子供達に大人気だ。


「ここは俺に任せて、あんた達はここで待ってろ」


そう言うと物凄い速さで倉庫の方へ向かう。

その姿はまるで本物のヒーローだ。子供の頃憧れた、本当のヒーローだ。


その光景はまるで希望が空から降って来たと錯覚すら覚える。

この緊迫した状況で、誰もが諦めかけた状況で、誰もが考えるのは救いの手だ。


「あんた達は下がってな、ここは俺が片付ける」

「ミスターマッスルだ!」

「ヒーローが来てくれたぞ!」

「子供がファン何だ!後でサインしてくれ!」


多種多様な声が聞こえて来るが、それはヒーローが登場した事により安心感が広がったと言う証拠だ。


「マジかよ…、聞いてねぇよ」

「弱音言ってないで行くぞ!」

「これって労災でるんですかね…」


完全に敵側はミスターマッスルの登場により、萎縮している。


「そっちがこないなら、こっちから行くぞ!」


腰を落とし、光速で動き出した。その姿はリング上のレスラーだ。


「こんなのかわせなぇよ!」

「無理だって!


次々と倒れて行くが、まだ終わっていない。


「これで終わりじゃないぞ!マッスルドロップキック!」

「ぐぁっ!」


殆どの黒タイツが倒れ残るは、ドラゴンとヤクザの数人だけとなるが全くドラゴンは顔色すら変えない。


「ド、ドラゴンさん!どうしましょう?!あんな奴が来るなんて聞いてませんよ!」

「ここは任せて下さい…」


倒れた黒タイツの中心に聳え立つヒーローに若い龍が足を向ける。

首筋には鱗が微かに浮き出ている、ここれは彼の怒りの表れだ。


「白…、おい。これって、逃げるチャンスなんじゃないのか?」

「そうだな…」


一人だけ立ち上がり、歩き出す。


「ぶんさんだけで逃げてくれ、俺はあいつを止める」

「ま、待て!どんな能力を持ってるか解らないに…」

「俺は逃げる為にここに来たんじゃねぇよ」


その姿は真っ直ぐで真剣でがむしゃらだ、まるで若い頃の自分を見ている様だ。

慎重になるのは歳を取ってしまったからだろう。


「無理はするなよ、相手は敵の幹部だ。いくらお前でも無事で済むかどうか解らないぞ」

「病院のベットで合おうぜ…」


睨み合うミスターマッスルとドラゴン、これは互いの出方を伺っているのだ。

武術の達人同士の対峙は一瞬で決着が付くと言われている。

それは何故か、頭の中で動きを何通りか想像して自分が勝利をする所まで想像する。


「随分派手にやってくれたな、ヒーロー…。行くぞ!」

「こっちも仕事と平和の為なんでね!」


ドラゴンは動き出すと同時に身体中が輝き、全身が変化する。

その姿は洗礼された、ドラゴンのスーツを纏っている様だ。

彼がドラゴンと呼ばれているのは変身した姿が龍に良く似ているからだ。


怪人クラブA市統括補佐ドラゴン、レベル特大。

能力、変身。


この日本に出現する怪人達の強さに段階がある。小、中、大、特、特大、超。

小は人間で対処可能。

中は武器があれば対処可能。

大は軍隊出動が必要。

特は人間では対処不可能。

特大は核兵器を用意しなければならない。

超は大災害レベル。


この状況に誰もが息を?む、常人には肌でこの二人の力が伝わって来る。

この場には訓練された人間しかいないが、二人の気迫に当てられ気分が悪くなる者達が現れる。


「はっ!」

「くっ!」

「どうしたヒーロー!さっきの威勢はどうした!」


ミスターマッスルは防戦一方に追い込まれていた。

歯を食いしばり、反撃のチャンスを伺っているが中々隙が生まれない。

相手はさすが敵組織の幹部だけの事はある、はっきり言ってこのままだと負けるかもしれない。

そんな弱音を頭の中で一瞬思ってしまったが、目は死んでいない。


「マッスルハイパーパンチ!」

「くっ!」

「まだだ!マッスルハイパーコンボ!」


光速で正拳突きを放ち、続いて上段蹴りを頭に直撃させる。

さらに水平チョップに続きラリアットを直撃させ、最後にドロップキックで占める。


吹き飛ばされたドラゴンは土煙に隠れ、姿が見えない。


「はっ…、はっ…。おいお前ら、早く非難しろ!」

「どうしてですか?あいつはもう…」

「この程度か、マスクヒーロー?」

「何?!あれだけやって無傷だ…」


気配を感じ非難を呼びかけるが、龍の一撃により巨漢が機動隊の元に吹き飛ばされる。


「うぁっ!大丈夫ですか?!マッスルさん!」

「お、俺は大丈夫た…。良いから早く逃げろ!」

「その台詞はヒーローぽっいな…。だが、これで終わりだ」

「マッスルを守れ!」

「「うぉーーーーー!」」


傷ついたヒーローを守ろうと機動隊が立ち向かう。


「調子に乗るな人間風情がっ!」



右手を軽く払っただけで、殆どの機動隊が倒れている。

これが、幹部の力か。


「まだ、残っていたか…」


一人の刑事が身体を震わせ、銃を構えている。


「そ、それ以上動くとう、撃つぞ…」

「震えてるのまる解りだぞ、警官」


その光景を物陰から眺めている人間が一人いた。


「ど、どうしよう…」


あんな化け物相手に何をすれば良いか思考が止まる、常人なら当たり前の話だ。

自分の命が第一に決まっている、それに振るえが止まらない。

初めて見る現実の戦闘と怪物。自分はあんな怪物を相手にする会社に就職してのだと今になって自覚した。

今までは怪人が自分の前に現れずに平和に業務をこなして来たが、いざ現れたら何も出来ずに震えているだけ。

これでは会社に時と一緒だ、揉め事が苦手で上司と取引相手にとにかく波風立てないようにひたすら頭を下げて来た。

都合良く言えば、争い事が嫌い。だが今の状況に置き換えれば、逃げているだけ。

もう、そんな自分からは卒業だ。


「田中さん危ない!」


気づいたら、身体が勝手に動いていた。恐怖に襲われている人がいる、それを助けるのがヒーローだ。

自分が子供の頃に憧れたヒーローだ、誰も憧れたヒーロー。


「何…」

「ごふっ…」


化け物の拳が腹部に直撃して、口の中に血の味が広がる。


「か、加藤さん?!」

「良いから、に、逃げて下さい…」

「まだ警官が残ってたのか」


ここから意識が真っ黒に染まる。


「おい、楽しい事してんな」

「誰だ?!」

「ただの正義の味方だ」

「私の背後を取るとはな貴様、只者ではないな!」

「おいおい、そんな厳つい格好して動揺しすぎだろ。さっき言っただろ?正義の味方だ」

「古臭いやり取りをしている場合では無い。さっさと、貴様を片付けるとしよう」


この会話を古臭いと自ら自覚しているこの男は頭が切れる。


「俺もあんたを片付ける用が出来た。俺の部下が大分世話になった見たいだしな…」

「部下?誰の事だ?貴様も刑事だったのか?」

「あんたが鳩尾みぞおちを決めてくれた奴の上司だよ」

「あの冴えない男か…」


二人は月明かりの下、睨み合う。

この空間に流れる空気はビリビリと流れ、お互いが感じている。


「条件は揃った…。変身」


満月が淡く反射する程に真っ白な身体に狼を思わせる姿。

その姿は白狼。


「白狼だと?!噂だけだと思っていた…」

「この姿がそんなに珍しいか?俺は月が出ていないと変身できない」

「白銀に輝く狼…。その姿を見た者はその爪で狩られると言う」


株式会社ヒーロー雑務課所属白牙一狼。

能力、変身。

全国ヒーローランキングランク外。

超突起戦力ホワイトファング。


朧に輝くその姿に思わず、見とれてしまう。

まるで絶景にでも圧倒されているかの様に立ち尽くす。

その姿は白銀と言っても差し控えない。


「時間がないんでね、速攻で終わらせる」


言葉を発すると同時に姿が消える。


「何?!ぐっ!」


構える前に腹部に打撃を受け、よろける。


「さすが、幹部の一人だ。一撃じゃ無理か」

「貴様…」

「悪いがお前に反撃する隙は与えない」


背後から聞こえる声は怒りの感情が強く、その声だけで身が竦む。


「これでとどめだ」


そして背後から気配が消え、頭の上から隕石が降って来たかのような衝撃が広がる。


「私が…、やられ…」


A市統括補佐ドラゴンは雑務課に手によって捕まり。

その後協力関係にあった反社会的組織の幹部も逮捕され、ドラゴンも厚生施設に送られる。


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