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株式会社ヒーロー  作者: ボサボサ
脱走計画と女医
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ドラゴンと女医その四

『見てくださいっ!この事件の首謀者と思われる怪人強力が正体不明のヒーロー?

否、ヒーローではありませんっ!あれは怪人クラブの元大幹部のドラゴンですっ!!!

何とこの事件を解決に導いたのは囚人であるドラゴンですっ!!!

上空から中継をお送りしましたっ!引き続き中継を行いますっ!』


遠くから空を切る音が聞こえるが、微かに響くだけ。

今は戦闘が終わり、気を張っていたがそれが抜ける。

すると全身の力が抜け、倒れそうになるが何かが支える。


「だ、大丈夫っ?!」


この暖かい温もりと覚えのある癒される匂い。


「百合さん…。なぜ、ここに…」

「あなたが心配だからに決まってるでしょっ!!!」


空から、響く音は遠く感じるのにこの人の声は全身に響く。


「俺の心配をしてくれるんですか?」

「ちょっと、何笑ってるのよっ!こんな大怪我してっ!立ってるのだってやっとでしょっ!

今直ぐにでも、治療しないとっ!本当に死んじゃうわよっ!」

「俺は死にませんよ、百合さんとの約束を果たすまで…」

「まさかあの話、本気にしてたのっ?!」

「当たり前でしょ、俺は百合さんの事を…」


言葉を最後まで音にするまでに気を失う。


「大丈夫か、ドラゴンっ!ん?あんたは誰だ?」

「助かったっ!早くドラゴン君を治療できる場所へっ!」

「あれ、女医さんじゃないっすか?ドラゴンさんっ?!大丈夫っすか!」


怪人強力が起こした前代未聞の大事件。

「A市更生施設立て篭もり事件」は同じ囚人である、怪人クラブの元幹部ドラゴン、ミスタースパイ、他の囚人、ヒーロー達によって解決した。

だがその事件で発生した被害で建物は大きな修復を余儀なくされたが、更生施設の警備員と囚人達が協力して復旧作業が行われている。


もちろん事件に加担した超能力者達もその作業に加わっている。


「ここは…」

「病院よ」


目が覚めると腕に点滴が打たれ、消毒の匂いが鼻を刺激する。


「ゆ、百合さんっ?!なぜ、ここに?!」

「あ、あなたが心配だからに決まってるでしょっ!三日間も目を覚まさないで…」

「ゆ、百合さん…。あの…」

「でも本当に良かった、あなたが無事で…」

「すいません、あの時は必死で…」


いきなり力一杯抱きつかれ、一瞬動揺するが暖かい感触が伝わる。


「お熱い所、お邪魔するよ」

「局長っ!」


突然、初老の男が病室に足を踏み入れる。


「座って良いかな?」

「ど、どうぞ」

「突然の訪問を許して欲しい。ドラゴン君、君に話があってね。まず今回の事件が起こったのは我々の管理の甘さだ。

それと本当にありがとう、君がいなかったら強力は脱走を成功させたかもしれない」

「止めてください。自分がした事が事件解決に繋がっただけです。それに自分だけの功績じゃない、ミスタースパイやクマ、それに警備員の協力があって…」

「それでも解決したのは紛れもない事実だ、お礼をさせて欲しい」

「そうですか。それで、強力の奴は?」

「主犯格とその協力者達は今、その待遇の見直しと身柄を完全に拘束している。

それと君の釈放が決定した。それとささやかだがしばらくの間、釈放後の君の生活の支援をする事に決定した」

「え…」


あまりにも突然すぎる、通告で言葉を失う。


「受けてくれるね?君の意思次第で直ぐに手続きをしよう」

「ありがとうございます…」


そして、一週間後。


「入りたまえ」


こんな緊張は生まれて初めてだ、今まで自分が裕福な生活をしていた証拠だ。

こんな高いビルを見上げ、緊張がさらに高まる。

多くの人に紛れ足を踏み入れる。

すると、一人の清掃員にぶつかる。


「失礼っ!大丈夫ですかっ?!」

「わしは大丈夫だよ、あんたは?見ない顔だな?ひょっとして、面接かな?」

「は、はいっ!」

「はっはは。そう緊張しなさんな若いの、あんたならきっと大丈夫だ」


そして面接室にたどり着く


「し、失礼しますっ!」

「そう、緊張しないで。今日、面接のドラゴン君で間違いないね?」

「はいっ!今日は貴重な時間を私の為に使って頂いてありがとうござますっ!」

「座って…。それで我が社を選んでくれた、志望動機は?」

「はい。更生施設での資料とテレビで放送された御社所属のヒーロー達の活躍に非常に感銘を受け、私もその一員になりたいと思い志望させて頂きました」

「君だったら、どこのヒーロー事務所でも即戦力で通用すると思うけどね?」

「あまり彼をいじめるなよ、人事部長」

「し、社長っ?!なぜ、ここにっ!」

「彼は大丈夫だ、それにもう立派なヒーローじゃないか。いったい、何をそんなに心配する必要かせある?」

「彼は怪人クラブの元幹部ですよ?」

「ドラゴン君がスパイとでも言うつもりかね?いつも、頭を柔らかくしろと」

「うっ、すいません」

「彼もそう思われるのも覚悟の上だろうが、彼の目をちゃんと見たかね?こんな真っ直ぐな目を?

面接はする必要するは無い、採用だ」

「えっ?えっ?あなたは清掃員じゃ?」

「はっはは。頭が切れる君でも、緊張で思考が鈍るんだね。自己紹介が遅れた」


被っていた帽子を取ると堂々とした面構え、優しくもあり鋭い目。

耳に響く優しい渋い声。


「株式会社ヒーローA市支部取締役のミスターだ。これからよろしくドラゴン君」

「は、はいっ!こちらこそよろしくお願いしますっ!」


熱い握手を交わし、ここに新人ヒーロードラゴンが誕生した。


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